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いまこそロシアを考える

 2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まりました。あれから1年が経ったいま、お手に取っていただきたい2冊をご紹介いたします。

新刊『俳句が伝える戦時下のロシア』

『俳句が伝える戦時下のロシア』書影
『俳句が伝える戦時下のロシア』
馬場朝子(ばば・ともこ) 編訳
2000円+税 現代書館

【内容紹介】
NHK ETV特集「戦禍の中のHAIKU」。ロシアとウクライナで俳句を詠んでいる人たちへのインタビューが紹介され、話題を呼びました。「ロシアに暮らすふつうの人の声が聞きたい」。本書では、番組内では紹介しきれなかった10時間超のインタビューとかれらの50を超える俳句を収録しました。軍事侵攻、言論統制、他国からの制裁、予備役の動員……、激化していく「戦争」の渦中で、ロシアに暮らす人たちは何を思い、どのように暮らしているのか、そしてこの「戦争」をどう見ているのか。ウクライナと同じく「戦争」の渦中に生きるロシアの市民が俳句にこめた思い、語る言葉。かれらの置かれている状況を想像しながら読んでいただければ、と思います。

 編訳者の馬場朝子さんはソ連・モスクワ大学に6年間留学し、帰国後はNHKのディレクターとしてソ連やロシアに関するドキュメンタリー番組を40本以上制作してきました。ロシアの友人から届いた俳句をきっかけに、馬場さんはロシアとウクライナ双方の俳人を取材し、NHK ETV特集「戦禍の中のHAIKU」にまとめました(2022年11月19日放映)。本書には、番組内で紹介しきれなかったロシアに暮らす人たちの俳句とインタビューが収録されています。

 俳句とロシアの組み合わせは意外に感じられますが、ソ連時代から「おくのほそ道」が翻訳されたり、ソ連崩壊後はインターネット上の交流を通じて俳句ブームが起こったりと、俳句はロシアの人びとに広く親しまれてきました。日に日に言論統制が厳しくなる中で、戦時下のロシアに生きる人びとは何を語り、俳句にどんな思いを託すのか。決して簡単には言いあらわせない気持ちを凝縮した俳句からは、文学の力を感じます。

 俳句とインタビューの一部をご紹介します。モスクワ北東部に位置する古都、コストロマ在住のオレクさんによる句です。

ロシアの春
 知人の服の
  血痕に気づく

Q――血痕は実際に見たものですか?
 (略)物理的にではなく、心に見えるものです。私たち全員が、このことに間接的に罪を負っているのだとすれば、この血は私たちの白いはずの、清潔そうな衣服についているのです。本当は清潔ではないのです。
 私たちがこのすべてに対して、……無関心だったり、直接支援していたり、知識がなかったり、あるいは意識的だったりしています。

『俳句が伝える戦時下のロシア』p.119-120

 日本で暮らす私たちにとって、ロシアとウクライナの戦争は遠く離れた場所の出来事であり、自分には関係がないと受け止めてしまうかもしれません。そんな私たちの服にも血痕がついているのではないでしょうか。たとえ離れた場所からでも、この戦争について関心を寄せ、周囲の人と話し、戦争反対の声をあげることが大切なのだと思います。戦況報道からはこぼれ落ちてしまう小さな声に、ぜひ耳を傾けていただきたいです。

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既刊『ロシアのなかのソ連』

『ロシアのなかのソ連』書影。
『ロシアのなかのソ連』
馬場朝子 著
1800円+税 現代書館

【内容紹介】
なぜ、ロシアは孤立してしまうのか。大陸のど真ん中にあって、周辺国とうまくやれないのはどうして?
2022年2月24日、ロシアのウクライナへの軍事侵攻により、「冷戦終結以後」の世界の終わりがはじまりました。ロシアはいったい何を考えているのか、さまざまな憶測も飛び交っています。
1991年にソ連は解体しましたが、そもそも、いったいソ連とはなんだったのか、社会主義体制から資本主義に舵を切ったロシアの30年間とはなんだったのか。
高校卒業後、ソ連・モスクワ大学に6年間留学し、NHKで40本以上のソ連・ロシア関係の番組を制作してきた、日本で指折りのソ連・ロシアウオッチャー馬場朝子さんに自身の体験や現地で暮らす人の言葉をとおして案内してもらいます。

 新刊『俳句が伝える戦時下のロシア』とあわせてお届けしたい既刊本です。著者は新刊の編訳者でもある馬場朝子さん。50年にわたってソ連・ロシアと関わり続けてきた馬場さんは、ご自身の経験や市民の目線にもとづいてロシアの暮らしや政治を解説しています。本書が「ロシアはわからない、怖い国」というぼんやりとしたイメージを解消する一助になれば幸いです。

 また、第4章ではソ連・ロシアの戦争と侵攻の歴史を振り返り、2022年2月21日におこなわれたプーチン大統領の演説を紐解きます。いまも続く戦争について考えるための手掛かりとなる1冊です。ぜひ新刊と一緒にお手に取ってみてください。

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