中世の本質(1) 中世とは何か

 中世とは何なのでしょう。中世はいつ始まり、そしていつ終わったのか。
中世の本質と中世の期間を巡る問題は興味深く、これまでいくつもの中世論が唱えられてきました。その中で良く知られているものとしては次の三つの中世論があります。一つは日本の中世が鎌倉時代から室町時代までの400年間、続いたという説、一つは荘園制の成立から崩壊までの800年間という説、そしてもう一つは院政の始まりから荘園制の崩壊までの500年間という説です。
 400年説、800年説、そして500年説です。三つの中では最初の中世論である中世400年説が最もよく知られたもので、ほぼ常識扱いされています。ですから今日の歴史年表の多くはこの説に沿って作られています。
 それでも三つの中世論は一つの共通点を持っています。それは<中世室町時代死亡説>です。三つの中世論は中世の始まり時期をそれぞれ異にしますが、その終わりの時期は皆同じです。中世の終わりは室町時代であると一致しています。荘園制の崩壊を境に歴史は変わった、と。それは中世と荘園制という土地制度がほとんど一体のものとして考えられていることです。そして桃山時代から近世が始まるという次第です。
 従って日本史は古代、中世、近世、現代の四つの歴史から構成されます。それは今日、日本史の常識として歴史教科書や多くの歴史書に記載されているものです。
 さて三つの中世論は正しいのでしょうか。問題は無いのでしょうか。果たして中世は室町時代で消滅したのでしょうか。土地制度の変化は歴史を画すものなのでしょうか。そして近世という歴史は本当に存在するのでしょうか。
 残念ながら中世室町時代死亡説は誤りです。すなわち中世室町時代死亡説を主張する三つの中世論は皆、誤りです。中世は室町時代で終焉を迎えてはいません。この過ちは致命的な過ちです。それは今日まで日本史を大きく歪めてきた原凶です。現在の歴史教科書や多くの歴史書はその過ちに気付くこともなく、それをそのまま記述しています。
 本論は中世の歴史を検証し、中世の本質を見極め、そして中世室町時代死亡説の誤りを指摘します。それは上記の三つの中世論の明確な否定です。そして本来の中世日本の精確な姿を提示します。
 
 
    
           目次
 
 
(1)   中世とは何か (2)古代国の国家支配(3)古代王朝の請負制
(4)二都時代(5)中世化革命
 
(6)中世王の王権(7)契約社会(8)中世王の王権、再び(9)分権制
 
(10)中央政府と主従政府(11)専制政治と主従政治(12)国替えと大名統制(13)分権統治の深化
 
(14)印象判断(15)強権と集権(16)石高制(17)兵農分離(18)狭い視野
 
(19)双務契約 (20)主従関係――服従と忠誠 (21)中世人の成り立ち  (22)荘園制と領地制 
 
(23)自律の始まり(24)現実主義(25)不完全な平等主義 (26)忠臣は二君に仕えず
 
(27)武士の成り立ち(28)農民の成り立ち(29)村自治(30)国自治
 
(31)近世不要(32)日本史―三つの歴史と二つの革命(33)まとめ
 
 
 

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