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読解訓練の2パターン【現代文】

現代文の読解力を鍛えるうえで、

①文章を理解する根本的な力を鍛える
②試験時間内に解き終える力を鍛える

のいずれを目的とするのかを意識するのは、とても大切なことです。例えば、

確かに彼は、成績が良い。しかし、性格は悪い。

という文章には、〈確かに〇〇、しかし△△〉という、いわゆる譲歩の構造が使われています。この例文について、

こうした構造では、「確かに」以下ではなく「しかし」以下に筆者の強調したい内容がくるから、「確かに」以下のところは軽めにサッと読んで、「しかし」以下をじっくり読む。

というのは、②試験時間内に解き終える力を鍛えるということを意識しての観点ですよね。確かに、こうした方法は、限りある試験時間内により迅速かつ正確に文章を読み解くうえで、必要なものです。けれども、①文章を理解する根本的な力を鍛えるという点を意識するなら、ここはむしろ、

主題=彼
(確かに)成績が良い。
      ⇅
(しかし)性格は悪い。

という対比をきちんと整理することが肝要となります。そのうえで、〈確かに〇〇、しかし△△〉の構造に鑑み、「彼」という主題について、「性格」が「悪い」ことを強調しているのだな…と整理する必要があるわけです。
もっともこの例は簡単ですから、こんな整理をせずともすぐに理解できるかもしれません。が、もっと複雑で、あるいは抽象度の高い文章ともなると、このような対比を把握することで初めて趣旨が理解できる、ということもままあるのですね。
となると、①文章を理解する根本的な力を鍛えるという点を意識した学習においては、文章を読んだり問題を解いたりする時間は、無制限に設けてよい…というかむしろ、

可能なかぎりの時間をかけて取り組むべき

ということになるはずです。
理解できるまで、とことんその文章に向き合う、その時間が何より大切になるわけですから。制限時間を意識して、じっくり考えるべきところを適当に流してしまうようでは、本末転倒ですよね。
逆に、②試験時間内に解き終える力を鍛えるという意味での読解力を鍛えたい場合には、当然、制限時間をきっちりと設けて、その時間内で合理的に情報を処理する訓練が大切になります。
ただ、ここで忘れてはならないのが、

①文章を理解する根本的な力を鍛えるという訓練をすることなしに、ひたすら②試験時間内に解き終える力を鍛えるということばかりを繰り返していても、いつまでたっても"読める→解ける"ようにはならない

ということです。
まずは①文章を理解する根本的な力を鍛えるという訓練、すなわち時間無制限で文章と向き合う学習を積み重ねていき、

時間をかければ、入試レベルの文章でも、その概略は理解できる

という状態を築いてください。スピードトレーニングとしての読解力養成訓練、すなわち②試験時間内に解き終える力を鍛えるという学習は、その後で初めて取り組むべきものだと言えるでしょう。この点を意識せず、ただひたすらに、制限時間を設けて問題演習をしてばかりの高校生、受験生が目立つゆえ、本稿をしたためた次第です。少しでも学習の参考になれば、幸いです。

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