自分の中の「当たり前」を疑うことで見えるもの。Gender Based Violence(ジェンダーに基づく暴力)
文・編集:櫻井 彩乃(ジェンカレ事務局)
「ジェンダーに基づく暴力」は「自分には関係ない」「重い話題だからできれば避けたい」と思っている方もいるのではないでしょうか。しかし、「特別な人に起こる特別なこと」ではなく、誰でも被害者、さらには加害者になる可能性があります。
第5回目の講義では、2003年に「DVはおとなだけの問題ではなく、若い人たちの間でもおきている」ことを日本で初めて「デートDV」という言葉を使って紹介した、アウェア代表 山口のり子さんをジェンカレにお招きし、「Gender Based Violence(GBV:ジェンダーに基づく性暴力)」と題してお話ししていただきます。
「ジェンダーやGBVについて学んで考えることは、あなたのこれからの人生を左右することになるかもしれませんよ」と話す山口さんに、ジェンカレで講義していただく内容や、GBVを学ぶことで得られることをうかがいました。
▲ 『デートDV防止プログラム実施者向けワークブック 相手を尊重する関係をつくるために』山口のり子著 梨の木舎
‐講義概要を教えてください。
GBV(Gender Based Violence)「ジェンダーに基づく暴力」を、皆さんは自分には関係ないと思っているかもしれませんが、実は皆さんにとって身近な問題です。起きていても気づかない、気づいても隠すし、話せないから問題が見えないのです。GBVが家で起きたら「DV」で、デート中に起きたら「デートDV」で、職場でおきたら「セクハラ」です。
いずれも個人の身に起きることですが、社会構造が生み出している問題であり、性差別の一形態です。それを、私が20年実施しているDV加害者プログラムと、それに参加した人たちのことを通じてお話します。
そして、どうしたらGBVをなくし、ジェンダー平等社会をつくれるのか、皆さんといっしょに考える講座にしたいと思います。
▲ 2020年12月に開催された「DV・虐待防止のためにロサンゼルスとつなぐライブ・オンライン講座 入門編」の様子
‐講義を通して、ゼミ生や聴講生にどんなことを行ってほしいですか?
GBVを自分のこととして考えられるよう、いっしょに「紐解き」をしてください。そのためには、自分を振り返り、内面化された価値観を見直してください。世間の、そして自分の中の「当たり前」を疑ってください。さまざまなことが見えてくると思います。そうすることで、戸惑いや不安や怒りなどの感情を抱くようになるかもしれませんが、それはあなたが「ジェンダー規範」に縛られず、人を縛らず、「自分らしく生きる」出発点になります。
そして自分だけでなくまわりの人たちも同じだということに気づき、生活の中で感じるモヤモヤを吹き飛ばすために「いっしょに何かやろう!」という仲間をぜひ見つけてください。
▲ DV加害者プログラムグループの男性たち
‐最後に、参加を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
ジェンダーもGBV「ジェンダーに基づく暴力」も自分には関係ないし、気が重いから避けたいと思っていたら、ちょっと考え直してください。若いあなたが今ここで、ジェンダーやGBVについて学んで考えることは、あなたのこれからの人生を左右することになるかもしれませんよ。
私は、20代後半でフェミニズムに出遭い、ジェンダー規範に縛られない生き方を選びとったときが「自分の人生が始まったとき」だと振り返って思います。皆さんにとって「ジェンカレ」がそのような人生の分岐点になるよう願って、ご参加をお待ちしています。
▲ シンガポールのフェミニスト団体「aware」のパーティ
▲バングラデシュの友人とダッカに作った学校の生徒たちと
山口のり子さん プロフィール
アウェア代表。
女性差別のない社会を目指して45年、日本及び海外でフェミニストたちと共に活動し、女たちがつながり、エンパワーし合い、社会を変えられることを実感する。1980年コペンハーゲンで開催された第2回世界女性会議に参加する。1980年代には米国シカゴで、そのころ全盛だったNOW(National Organization for Women)の支部に入り、アメリカのフェミニストたちといっしょに活動する。1989年から10年暮らしたシンガポールでは、同国唯一のフェミニスト団体aware(Association of Women for Action and Research)に参加し、DVやセクシャル・ハラスメント被害者支援及び裁判支援などに関わる。シンガポールの日系企業56社でのセクハラ調査(1993年)を実施し、日本人上司がシンガポール人女性にセクハラするケースが多いことを日本経済新聞に寄稿することで警鐘を鳴らす。1995年の北京世界女性会議にシンガポール代表団の一員として参加する。その後暮らしたロサンゼルスでは、DV加害者プログラムを実施するためのトレーニングを受ける。帰国後、2002年に「アウェア」を東京で立ち上げ、DV加害者プログラムを始める。2003年に『デートDV』という言葉を日本で初めて使って本を出版し、若者向け防止教育を始める。2006年から各種プログラム(DV加害者プログラム、デートDV防止プログラム、被害女性支援プログラム)の実施者養成を続けている。2020年に、女性差別撤廃とジェンダー平等社会の実現のためにアウェア・オンライン・サロンなど新たな活動を始める。
・アウェア デートDV防止プログラム・ファシリテーター全国ネットワーク代表
・PREP-Japan(DV加害者更生教育プログラム全国ネットワーク)代表
・ABIP(米国カリフォルニア州DV加害者プログラム協議会)海外理事
・千葉県の加害者教育プログラム(2004~2008年)スーパーバイザー
著書
*『愛を言い訳にする人たち DV加害男性700人の告白』2016年(梨の木舎、以下同様)
*『愛する、愛される デートDVをなくす・若者のためのレッスン7』2004年
*『デートDV 相手を尊重する関係をつくるために』2003年
*『DV あなた自身を抱きしめて アメリカの被害者・加害者プログラム』2001年
*『海外でつくった!人の輪・仕事の環』2000年
*『元気のおすそわけ 暮らしの中のフェミニズム』1993年(太郎次郎社)
訳本(共訳)
*『DV・虐待 加害者の実体を知る』2008年(ランディ・バンクロフト著 明石書店)
*『恋するまえに デートDVしない・されない 10代のためのガイドブック』 2008年
(バリー・レビィ著 梨の木舎)
アウェア発行 冊子・ビデオ・パンフ
*『おうちジェンダー平等はじめよう 非暴力の子育ての手引き』2021年
*『デートDV 対応の手引き』2014年(主に教師向け)
*『DVってなんだろう? DVをしてしまった男性たちからのメッセージ』2008年
*『DV加害者プログラム資料集 Tool Box』2005年 アウェア翻訳
* 啓発動画『面前DV防止』2022年 東京都江戸川区児童相談所の依頼を受けて制作
* ビデオ『デートDV 相手を尊重する関係をつくる』2006年
* デートDV防止啓発パンフ制作請負(大分県、神奈川県、宮城県、堺市、千葉市、長岡市、鎌ケ谷市、香取市、千代田区、台東区、他)
アウェア(aware)ホームページ:https://aware-jp.com メール:info@aware-jp.com
ジェンカレ
生まれた時の性別に左右されずに自分らしく生きられる、ジェンダー平等社会の実現が必要です。
しかし、2021年発表の「ジェンダーギャップ指数」によると、日本のスコアは調査対象である156カ国中120位。日本にはいまだにジェンダー平等実現への課題が山積みです。
SDGsの影響もあり、様々な場で「ジェンダー」という言葉を目にする機会が増えていますが、日常で感じたジェンダーに基づく違和感について調べてみても、「難しそう」「私に解決は無理」と感じてしまっているのでは?
そこで、私たちは、ジェンダーについて包括的に学び、一歩踏み出せる場がいまこそ必要だと考え、ジェンダー平等な未来を拓く次世代のサードプレイス『ジェンカレ』を開校します。
一方通行な講演・イベントではない、各分野のフロントランナーによる講義やワークを通じて、受講生がジェンダー平等な未来を拓くことを目指しています。
お問い合わせ:gencouragequ@gmail.com
参加のお申し込みやプログラムの詳細は、ウェブサイトからご覧ください。
※ゼミ生募集:2022年3月31日まで
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