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ドイツ電鉄のストライキが又あると言うから、月曜日は夜中の十二時に目を覚まして以降、一時間置きに目を覚ましては電車の運行状況を確認する為に立ち上がってパソコンの前へ行き、それで又ベッドに潜って眠るというのを三時まで繰り返した。スマートフォンがあれば立ち上がる手間も省けたのにとは思ったが、かと言ってスマートフォンの無い生活にもすっかり慣れ始めていた。電車はと言うとインターネットサイトに、随時確認して下さいと言う注意書きは表示されていたけれども、運休ですとは断言されていないまま遂
朝の六時前に出勤すると更衣室に直行し着替えを済ませ、そこから工房へ行くにはまず製菓の作業場を通過するのでそこでアンナと挨拶がてら少々話をする。今は専ら部屋探しの話が中心になるが、そう言えば今週も半ばに一人パイ生地を折り込んでいる私の元に近付いて来たかと思えば、先週に彼女が見付けてくれた二件の部屋の内、片方がどうも彼女の知人の管轄にあったようで、近い内に合同見学の予定があるから早めに連絡してみたらと助言をくれた。私は助言通りにその日中に連絡を入れ、翌日には内見に伺った。その結
先週から愈々(いよいよ)働き始めたとは云え、そう簡単に新しい仕事場や生活に慣れるものでもない。土日を家で休みさて明日からまた仕事だと思うや否や、忽ち又異国の地へ向かう前の不安に襲われた。たった一週間働いたくらいで既に我が物顔で過ごせると思う事自体が烏滸(おこ)がましいのであるが、兎に角私は自分の中に渦を作る陰気を払拭し景気を付ける為に月曜の朝には白飯と納豆と味噌汁を食う事にした。何の派手さも無い並びのようであるが事ドイツにおいては豪勢な食事である。納豆なんかは、先週の金曜日
さて今日から働かんとしていたその日、外は早朝四時から雨がしとしとと降っていた。旅行や何か大事な時には必ずと言っていい程雨を降らせてきた私にとって、これは至極当然かつ吉兆の如き出来事に思われた。かつて初めて日本へ一時帰国しようとしていた日、朝からあまりにも天気が良かったので嫌な予感がするなと思っていたら、空港で財布を置き忘れ飛行機を逃すという惨事があった。それを思えば安心する為の材料にもなりうる。何せ旅行を楽しみにしていたあまりスペインに雹を降らせる程の雨男である、きっとこれ
先週の内に山ほど応募した求人の内で有難い事に唯一面接の機会を設けてくれたドイツ郵便を目指して、この街に住んで五ヶ月が経とうとするもののまだ一度も通る機会を持たなかった道を歩いていた。私が急遽仕事を探さなければならなくなった先週の月曜日からちょうど一週間が経ち、また残された時間も一週間であった。 面接の機会が貰えたとは言え、郵便局を目指す私は決して安心感など持ち得ないどころか、その郵便配達の職務内容が果たして私がドイツに残る為に課せられた条件を満たしているのかどうかという