見出し画像

B2Bフィンテックの砂漠での3年間 - #1 転職編

Linkedinに気づかされた。気づいたら今の仕事に移ってきてもう3年。あっという間だった。

よく僕はB2Bのフィンテックのスペースをスタートアップにはとても厳しい「砂漠」なんて表現をするが、大手外資金融機関の超高層ビルからB2Bフィンテックの砂漠に移ってきての激動の3年間何を思って活動してきたかなど振り返ることによって

・大企業での働き方
・スタートアップでの働き方
・B2Bフィンテックの「砂漠」での生存の仕方

など、似た道を歩いている人・歩こうとしている人に少しでもお役に立てればと。ちょっと書いてみたら長くなったので

#1 転職編 - 大企業からの転職とスタートアップでの働き方
#2 砂漠にて - B2Bのフィンテックの砂漠とはなんなのか、その砂漠での効率良い活動の仕方

などのテーマで話していければと思う。

自分の大企業での働き方

現職であるSymphonyに移ってくる前はゴールドマン・サックスという外資金融で20年ほど仕事をしてきた。大企業で仕事をしていた時に気にしていたのは

・実務以外にも学ぶことはたくさんある
・会社の外にも大きな世界がある
・最高の仕事をしていれば、さらに良い仕事が舞い込んでくる

なので社内ハッカソンやカンファレンスを主催して色々な「学びの場」を作ったり、社内ブログを書いたり他の人に書かせたりしたり、さらには会社を日本のフィンテック協会に引き込んで外の世界との接点を増やしたりとちょっと異色なことをしていたと思う。社内でデータサイエンスのオンラインのコースをCourseraで世界中の拠点みんなで受講して仕事時間中にチャットルームで宿題について色々話していたりしたこともあった。全力で学んで全力で仕事はしていたので、そのおかげで楽しい仕事には20年のうち常に恵まれていた。その楽しい仕事の一つが現職で扱っている金融コラボレーションプラットフォーム Symphony のずーーーーと最初のゴールドマン・サックス版のプロトタイプの開発や展開の仕事でもある。

外資大手金融から無名フィンテックへの転職

さて、とても悩みはしたが3年前に Symphony へと転職をしてきた。快適だった20年務めている外資大手金融から一気に

・日本での金融機関導入実績ほぼなし
・知名度ゼロ
・日本社員ゼロ

のフィンテックへの転職である。回りの人たちには狂った決断であると思われていたことも多かった。

スタートアップでの働き方:組織のミッション

確かに狂った決断だったかもしれないが、当然全く勝算がなかった訳でではない。前職から関わっていたSymphony、「コラボレーションのプラットフォームにより金融業界の業務の自動化・効率化することにより企業や業界の業務を加速、収益に向上をサポートすること」をミッションにしていたプラットフォームであるし業界がそのようなプラットフォームを必要にしているという薄い確信はあった。

そのような「業界の効率化」というある意味の正義的ミッション、そしてプラットフォームの実力には自信があるので、どこにいっても自信を持って話すことができた。ニーズがある人たちにはとても自信を持って紹介するし、ニーズがありそうでなければ無理矢理は進めなかった。そのためにあちこちから「これだよ、これを探していたよ」と言われることも多かったし、逆に「なんでこんなことしているの?」と言われたことは基本的全くない。

なので組織やプラットフォームのミッションが理解できて完全に自分の物になっているか、というのは仕事を楽しむための「すべて」といっていい程の大事なことである。新しい環境で

・営業経験ゼロ
・日本の金融機関と仕事をした経験もゼロ
・小さな会社で働いた経験ゼロ

とあり得ない程のゼロ尽くしであったがミッションが腹落ちしていれば「できない」と思うことはなかった。ひたすら本を読み(本棚以下に公開しています)、カンファレンスなどに行って勉強し、人と会いひたすら勉強に勉強を重ねた。

理系の自分にとっては営業も科学、顧客のビジネスや組織を理解するのもある程度科学的な分析であった。

社内でも色々な知識を持った人、色々なことが得意な人がいるがその色々な人たちをつないでるのは組織のミッション「何を目指しているのか」である。優秀な組織には多様性があって仕事の仕方やプライベートの事など信じているものは全く自分とは違くこともよくある。そんな多様性を持った組織で全く違い文化の人たちが一緒に効率良く仕事をするためには組織のミッションは共有されていて完全に理解されていないといけない。

スタートアップでの働き方:決めたらやる、自分でやる

Symphonyでの対外的に見える物での最初の大きな仕事は日本語版を作ることの決断であった。当時のプラットフォームは英語版しかなく、さらに日本のユーザーなどとても限られた数であった。CEOのサポートもあり2か国語目として異例の日本語という決断をしたが、社内ではかなり「なぜ?」「作ったら数か月でどれくらい収益が伸びるか?」などかなり叩かれた。ただ

・日本はオープンな経済の中ではGDP世界2位
・ツイッターの世界2位の大きさのユーザーコミュニティは日本
・外資金融でも本国の次の収益国は日本であることが

などの可能性があるという理論でひたすら押し切った。今でも「なぜ世界のマーケットでアジアが大事なのか?」「なぜ日本が大事なのか?」などの分析結果はいつでも準備できるように持っている。海外に開発の部署が分散しているせいで開発は何度も止まったりずれたりしたし、「なんで大事なの?」論がしょっちゅう復活した。組織的には開発部署は自分の責任ではないが、プラットフォームの成功のために日本語版の重要性を一番わかっている人間として組織の壁などは全く気にせず、完成までひたすらあちこち調整や追いかけることを続けた。

日本語版発表の時のイベントが以下。とても感慨深かった。

そしてその投資の結果というのは意外と早く見ることができ、日本でのSymphony導入は明らかな加速が見られた。大手金融機関など多数に導入をしていただくことができ、そして今年はJPXとの実証実験も実施し、Symphonyが日本でも金融の共通のプラットフォームであるという実感を得ることができた。

日本語版の件でだけではなく人数が少ないスタートアップでは良くあることで、その件に「一番興味がある人」「一番得意な人」などが自律的に動き組織がちゃんと良いものを作れるように最後までしっかり注意する。この「自律的」さこそがスタートアップの強さである。どんどん組織が大きくなりルールに頼り自律的さがなくなってくるとスピード感はすぐに失われる。

スタートアップでの働き方:やらないことをはっきりさせる

そしてちゃんと「やること」と同じくらいに大事なのが「やらないことをはっきりさせる」こと。壮大なミッションを持ち、物凄い変化を世の中に起こしたいと思っていてもそれをすべて並行して起こすリソースに恵まれている場合はとても少ない。僕もマーケット分析などでは常に「どこにフォーカスするのか」とともに「どこにフォーカスしないのか」というのは強調するようにしている。戦略会議などでも少々「なぜ?」と思われるフォーカスしないエリアでもはっきり話し、必要であれば何度も繰り返し経営陣及びチームがその戦略と理由をなるべく完全に理解できるようにしている。

スタートアップでの働き方:当たり前のこと?

さて、「スタートアップでの働き方」なんていうタイトルでいくつか並べたが結構「当たり前」のことに見えるかもしれない。そうだと思う。実はスタートアップで仕事をしていようが大企業で仕事をしていようが

・ミッションをハッキリさせ、それに向かってがむしゃらに仕事をすること
・決めたらやる、自分でやる
・やらないことをハッキリさせる

なんていうことが大事なことは同じである。スタートアップではそれをちゃんとやらないとビジネスがなくなってしまうので生き延びるために大事。大企業だとついつい忘れがちだが、これを考えないで毎日仕事を淡々とこないしていてもなんのインパクトも残せないし楽しく仕事をできないので大企業で仕事をする時にも、これをよく考えて仕事をすることがとても大事。

当たり前のことを集中してしっかりやる、その積み重ね。一つさらに気にしていることがあるとすれば、仕事を楽しくすることができるか。せっかく自分が好きなことをやっているのであれば楽しくしたい。またそんなことに対する努力も別の機会にでもまとめることができれば。

スタートアップでの働き方:何か悪いこと?

スタートアップでの仕事は激務なのでは?なんて質問も受けるが確かに当然楽ではない。ただ僕に関しては以前の大企業の時から仕事について考えるのは好きだったし、得意だったのが仕事とプライベートがブレンドした働き方。これが良いか悪いかはとても意見が割れるけれども僕の中ではこれ以上ないと思える働き方。

9時から5時がきっちり仕事という時間割ではなく、組織やプラットフォームのミッションそして自分がやると決めたことに向かってちゃんと仕事ができている自信があるのであれば働いている時間は関係ない。業務時間中にまわりの人にちゃんと言ってジムやジョギングに行くこともあるし、スイッチを切って休んでいるときもある。反対にプライベートで新聞を読んでいてちょっとやりたい仕事を思いついてちょっとしてしまうこともあるし、夜の静かな時間に片付けてしまう仕事はとても多い。なので僕の中でスマホで仕事をできるということはとても大事。最近はコロナのせいでPCの前にいることが結構多いがそれ以前はスマホで仕事80%、PCで20%ぐらいだったと思う。

プラットフォームのミッションのため、業界や社会の効率化のためには金融での仕事、世界での仕事、日本での仕事、東京都での仕事、金融業界以外での仕事やりたいことは星の数ほどたくさんある。僕の中で仕事とプライベートが両立されていると思っているのであれば、それは周りの人からどう見えるかは全くどうでも良い。

フィードバックお待ちしています。

とりとめのない3年間の振り返りになったけど、参考に少しにもなればうれしいです。#2も1週間ほどで公開予定です。皆さんの意見も教えて下さい。働き方について取材された記事などもあるのでまた参考になれば。

ツイッターでもこんな働き方その他について話しています。ご興味があれば!またこの記事へのフィードバックもコメントでもツイッター経由でも楽しみにしております。

ツイッター@gen0707(フォローしていただいたら感激です)
LinkedinGen Uehara(是非コメントつきでコネクションリクエストお送りください)
Eight上原 玄之(コメント付きで名刺交換大歓迎です)

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?