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Untitled Fantasy(仮題) 序3

登場人物

マーティ・ハガード(18) 便利屋、元孤児
セレナ・ウィリアムズ(18) ウィリアムズ王国現第二王女
ジョニー・ダグラス(18) 薬剤師、元孤児
エマ・クラーク(17) 機織り、元孤児

フレデリック・ウィリアムズ二世(55) ウィリアムズ王国現国王
メアリー・ウィリアムズ(3年前に死亡、享年47) ウィリアムズ王国第一王妃、王太子と第一王女とセレナを生む
ドウェイン・ウォーカー(52) ウィリアムズ王国現宰相

テイラー(62) 王国の老兵、マーティとセレナの剣術の師
セオドア・ウィリアムズ(28) ウィリアムズ王国現第二王子、現ウィリアムズ王国騎士団団長、側室の子
アーロン・ウィリアムズ(30) ウィリアムズ王国現王太子


初回

前回


◯王宮内、セレナの居室(朝)

ナレーション「翌日」

純白のドレスをまとったセレナとメイド二名。
セレナ、鏡を見ながら。

セレナ「うん、いい感じね。ありがとう」
メイドA、B「「ありがたきお言葉にございます」」

メイド、深く礼をする。

セレナ「じゃあ、行ってくるわね」
メイドA、B「「行ってらっしゃいませ」」

メイド、再び深くお辞儀をする。
セレナ、居室を出る。


◯王宮内、セレナの居室前廊下

テイラー、セレナの近衛兵二名、侍従がいる。
テイラーと近衛兵は兵装。

セレナ「おまたせ」
テイラー「姫様、お美しゅうございます」
セレナ「そういうあなたも、鎧を着てると若く見えるわね」
テイラー「姫様にそう仰っていただけるとは光栄です。今日は命に変えてもお守りいたします」
セレナ「もう、大げさね。建国記念の式典で命の危険なんてあるわけないじゃない」

セレナ、にっこり笑ったあと、テイラーの腰にあるものに目を向ける。

セレナ「剣も二本装備するなんて、珍しいじゃない」
テイラー「あ……ええ、最近二刀流を習得しまして。実践で使えるよう、こうして二本携えておるのです」
セレナ「ふーん。熱心なのね。ねぇ、今度私にも教えてよ。二刀流、興味あるわ」
テイラー「ええ、いいですとも」
侍従「おほん! うおっほん!」

テイラー、セレナ、横目で侍従を見る。

侍従「殿下、重々ご承知のこととは思いますが、王女に必要なのは剣術の腕ではございませぬゆえ」
セレナ「わ、わかってるわよ。あくまで護身用よ、護身用」
侍従「では、本日はしっかりと王女の勤めを果たしてくださいますよう、お願い申し上げます」
セレナ「はいはい、わかったわよ。もう、いつもちゃんとしてるでしょ? 大丈夫よ。さ、行きましょ」

セレナ、先頭に立って歩き出す。


◯城下町、パレード予定場所(朝)

マーティ、町の人たちに混じってパレードの準備を見学している。
柵の設営をする作業員や兵士が大勢いる。

マーティ、モノローグ(ここをセレナが通るのか。毎年新年の行事で遠目には見てるけど、間近で見るとまた違うのかな)
マーティ「なんか緊張するな」

台車に木箱を積んだジョニーが現れる。

ジョニー「よっ、マーティ」
マーティ「え? ……なんだ、ジョニーか」
ジョニー「なんだじゃないよ。どうでもいいのが来たみたいな言い方して」
マーティ「わりぃわりぃ。ちょっと考え事してたんだよ」
ジョニー「考え事って、お姫様のことか?」
マーティ「ばっ……ばか! そんなんじゃねーよ!」
ジョニー「おっと、焦りだした」

ジョニー、にやにやしだす。
マーティ、顔を近づけて小声で喋る。

マーティ(人が大勢いるだろ、ばか)
ジョニー(だから「お姫様」って呼んだんだろ)
マーティ(そういう問題じゃねーよ。俺がセレナに執着してるみたいだろ)
ジョニー(間違ってないじゃん)
マーティ(なっ……。ば、ばか。そんなんじゃねーよ。ただ昔のよしみで、その……)
ジョニー(はいはい、そーですね)

ジョニー、マーティを少し押し返す。

ジョニー「じゃ、僕は近くで医療班の仕事をしてるから、けが人が出たら知らせに来るように。あ、ちなみに恋の病の治療はやってないから、そこのとこよろしく」
マーティ「うるせーばか。そんなんじゃねーよ。黙って仕事してろ」
ジョニー「はーい」

ジョニー、その場を去る。

マーティ「ったく。おちょくってやがる」

エマが現れる。

エマ「あ、マーティ。おはよう」
マーティ「おう、エマ。おはよう。お前もパレードの見物に来たのか?」
エマ「うん。久しぶりにセレナちゃんの顔が見れると思って」
マーティ「そっか。でもその呼び方はマズいぜ」
エマ「あっ! そ、そうだよね。人、いっぱいいるし。王女殿下のお顔を、えっと、拝謁したくて、でいいのかな?」
マーティ「なんか逆に堅苦しくなったな」
エマ「えー、そんなー」

柵の準備を終えた作業員の声が聞こえてくる。

作業員A「西の通りの柵、設置し終えました!」
現場監督「よし。じゃあ最終確認するぞ」

マーティ、エマ、通りの方を見る。

エマ「今思うと夢みたいだよね。これから立派な馬車に乗ってここを通るお姫様と、普通に友だちとして接してたなんて」
マーティ「そうだな」

 *   *   *

マーティ「じゃあ俺はパレードが始まるまで家に戻ってるわ」
エマ「あ、待って。あたしも一緒にパレード見物していい?」
マーティ「ああ、いいぜ。じゃあ昼飯食って一時にここで待ち合わせにするか」
エマ「うん、そうする」
マーティ「よし、じゃあまた後でな」


◯王宮内、大広間(朝)

国王フレデリック、宰相ドウェイン、皇太子アーロン、騎士団長セオドア、国王の親衛隊約五十名が集まっている。

セオドア「父上、兄上。何が起きようともお二人の身はこのセオドアがお守りします」
フレデリック「セオドアよ、頼もしい限りだが少々気を張りすぎではないか? 今日は建国二百年のめでたい日だ。警備もいつも以上に厳重にしておる。こんなときに我らを狙う愚か者もおるまい」
アーロン「そうさ、セオドア。ウィリアムズ王家一の武人である君と、我が国最強の親衛隊がいるんだ。狼藉を働こうなんて命知らずはいないさ」
セオドア「だといいのですが」

ドウェイン「陛下と皇太子殿下の仰るとおりでございます。騎士団長殿。貴殿とこの精鋭たちがいる限り、心配することなど何もないではございませんか」
セオドア、モノローグ(この狸め。お前が一番信用ならんのだ)
セオドア「ドウェイン殿、私と我が軍への賛辞、誠にありがたい限りです。なれば父上と兄上のことは我々にお任せいただき、貴公は元老院の皆とともに後方に従ってはいかがか?」
ドウェイン「そうもいきますまい。本日の式典は民衆にウィリアムズ王家の威光を改めて示す意味もあるのです。元老院の代表である私めが陛下のお側で忠誠の意を示してこそ、王家の格が引き立つというもの」
フレデリック「ドウェインよ、貴公の忠義には感謝しておる。今日も私の傍らに付いておるがよい」
ドウェイン「はっ! ありがたき幸せにございます!」
セオドア、モノローグ(この男に忠義などあるものか。本当に忠義があるのなら、国王を差し置いて己に権限を集めようとはせん。父上も兄上も、王妃陛下が崩御されてから心が弱ってしまわれた。かつてのお二人なら、こんないかがわしい男の甘言に耳を傾けることなどなかったろう)

セレナ、テイラーらが大広間に現れる。
テイラー、セレナの近衛兵、侍従が最敬礼する。

フレデリック「おお、セレナ。おはよう」
セレナ「お父様、おはようございます。アーロン兄様とセオドア兄様も、おはようございます」
アーロン「おはよう、セレナ」
セオドア「ああ、セレナ。おはよう」
フレデリック「皆の衆、頭をあげよ」

テイラーら、頭を上げる。

フレデリック「セオドア、セレナの護衛はテイラーが担当するのだな」
セオドア「はい、そのように配置しております」
テイラー「陛下。本日は誠心誠意、殿下の護衛を務めさせていただきます」

テイラー、再び最敬礼する。

フレデリック「うむ、よろしく頼むぞ」
テイラー「承知いたしました」
セオドア「父上、私は少しテイラーと打ち合わせをいたします」
フレデリック「うむ、よかろう」
セオドア「ありがとうございます」

セオドア、テイラーの肩を叩き、一緒にその場から少し離れる。

セオドア(たった今ドウェインを父上から引き離そうとしたのだが上手くかわされた。奴は今日一日ずっと父上のお側にいることになる)
テイラー(ますます怪しいですな)
セオドア(ああ。父上に対するただの媚ならいいが、アビスゲートが開きかけている可能性を考えると、裏の意図がないとは言い切れない)
テイラー(陛下を亡き者にし、混乱に乗じて魔物たちを呼び込み、集まった王族、政治家、軍人をまとめて一網打尽にする。そういった計画があるやもしれません)
セオドア(何が起こるかはわからない。何も起きないかもしれないが、最悪の事態は想定しておかねば。近隣の拠点にもすでに通達は送ってある)

セオドア、振り返ってセレナを見る。

セオドア(テイラー、今日はよろしく頼む。何事もなければ良いが、間違いが起きたときは、我々に構わず担いででもセレナを逃がせ。いいな)
テイラー(御意にございます)
セオドア(俺たちに万が一のことがあっても、セレナさえ生き残れば我が国は再興できる。あいつは責任感が強く、負けず嫌いで努力家だ。側室の子の俺と違い格もある。父上と兄上にもしものことがあったら、あの子を女王として立てろ)
テイラー(承知いたしました)


次回


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