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Untitled Fantasy(仮題) 序4

登場人物

マーティ・ハガード(18) 便利屋、元孤児
セレナ・ウィリアムズ(18) ウィリアムズ王国現第二王女
エマ・クラーク(17) 機織り、元孤児

フレデリック・ウィリアムズ二世(55) ウィリアムズ王国現国王
ドウェイン・ウォーカー(52) ウィリアムズ王国現宰相

テイラー(62) 王国の老兵、マーティとセレナの剣術の師
セオドア・ウィリアムズ(28) ウィリアムズ王国現第二王子、現ウィリアムズ王国騎士団団長、側室の子
アーロン・ウィリアムズ(30) ウィリアムズ王国現王太子


初回

前回


◯城下町、パレード予定場所、沿道(正午)

パレードを見にやってきた大勢の人々。
待ち合わせ場所に立つマーティ。
そこにエマが現れる。

エマ「おまたせ。待った?」
マーティ「全然。俺も今来たとこ」
エマ「よかった」
マーティ「そろそろ来るぜ。少し前に出よう」
エマ「うん」

×   ×   ×

遠くから軍楽隊の演奏の音が聞こえてくる。
マーティ、エマ、音の鳴る方を見る。
パレードの一団が近づいてくる。

エマ「すごーい! 今までで一番賑やかだよ!」
マーティ「ああ、こりゃ気合入ってるな」
マーティ、モノローグ(奥のでかい馬車の上にいる人たち。あの中にセレナが……)
エマ「マーティ……」

エマ、マーティの顔を見て少し残念そうな顔をする。
軍楽隊がマーティの前を通り、ステージ付きの大型馬車がだんだん近づいてくる。

エマ「あ! あそこ! セレ……王女様がいる!」
マーティ「どこだ!? ……いた」

セレナの顔を視認できる位置まで馬車が来る。
セレナ、笑顔で民衆に手を振っている。

マーティ(セレナ……。あの笑っていてもどこか芯のある表情、昔と変わってない)

マーティ、セレナと目が合う。

マーティ(あ……)


◯城下町、大型馬車の上

大型馬車の上、フレデリックを先頭にアーロン、ドウェイン、セレナが並ぶ。
セレナ、マーティに気付く。

セレナ、モノローグ(マーティ!? 今のはマーティ! 絶対にそうだわ! 隣にいたのはエマ? まさか、二人はそういう関係なの!?)

セレナ、平静を装い笑顔で民衆に手を振る。

セレナ、モノローグ(いえ、何を考えてるの? 私のバカ。この式典が終わったらマーティにお別れの挨拶をするって決めたじゃない。彼がエマと付き合ってたって、別に私には……)

セレナ、マーティと目が合い、すぐに目を逸らす。

セレナ、モノローグ(いま、目が合った。マーティも反応した。もしかして気にかけてくれてたんじゃ……)
ドウェイン「セレナ殿下、いかがされましたか?」
セレナ「いえ、なんでもございませんわ」
ドウェイン「左様ですか、ならようございます」

セレナ、再び民衆に笑顔で手を振る。

セレナ、モノローグ(もう、水をささないでよね。それになんでこの男、私たちと一緒にここにいるのよ。お父様もこんな腰巾着みたいな奴を信用するなんて、どうかしてるわ)

大型馬車がマーティたちの前を通り過ぎる。

セレナ、モノローグ(ああ、通り過ぎちゃった。どうしよう。いま、すぐに目を逸らしちゃった。誤解されてないかしら)


〇城下町、パレード、沿道

マーティ「セレナと目が合った」
エマ「うん、今こっち見てた」

マーティ、エマ、少しの間黙っている。

エマ「綺麗だったね。五年前よりずっと大人っぽくなってた」
マーティ「ああ、そうだな」

×   ×   ×

マーティ「帰るか」
エマ「もう帰るの?」
マーティ「え? あ……そうだな。まだ式典があるんだったよな」
エマ「うん。パレードのあと」
マーティ「じゃあ、城の方に行くか」
エマ「うん」

マーティ・エマ、城の方に歩き出す。

エマ、モノローグ(マーティ、ほんとはセレナちゃんのことが気になって仕方がないの、見てわかる。私にも優しくしてくれるけど、気持ちはこっちを向いてない。待ってるのに……)

×   ×   ×


〇王宮前広場(午後)

王宮の前、前方に柵が張られ、衛兵たちが一定間隔で立っている。
マーティ、エマ、人だかりの後の方に立つ。

マーティ「エマ、見えるか?」
エマ「うん、なんとか」

×   ×   ×

脇にいた楽団が演奏を始める。

マーティ「そろそろか」
エマ「あ! 見て! 国王様が!」

フレデリック、ドウェイン、アーロン、セレナが上階のバルコニーに現れる。
その後方にセオドアと親衛隊、セレナの脇にテイラーと数名の近衛兵。

民衆から歓声が上がる。

マーティ「テイラー先生もいるぞ」
エマ「ほんとだ。懐かしい」

×   ×   ×

マーティ、何かに気付く。

マーティ・モノローグ(ドウェイン。さっきもだけど、国王のすぐ横にいる。やっぱりあいつが裏で何かしてるんじゃないか)
エマ「どうしたの、マーティ? なんか怖い顔して」
マーティ「え? あー、今顔に虫が当たったんだ。なんでもない」
エマ「そうなんだ」
マーティ・モノローグ(いや、考えすぎか……。ん?)

空が急速に曇りだす。


〇王宮内、バルコニー

セオドア、空を見上げる。

セオドア、モノローグ(空の様子がおかしい。これはどういうことだ? まさか……)

フレデリック、空を見上げる。

フレデリック「何だ? さっきまで晴れていたというのに。縁起が悪いな」
アーロン「父上、たまたまですよ。それにもしかすると吉報かもしれません」
フレデリック「吉報? この雲行きでか?」
アーロン「ええ、吉報です。ただし、我々にとっての」
フレデリック「は?」

アーロン、剣を抜いてフレデリックの|腹の中心を貫く。
貫かれた場所から血が吹き出る。

フレデリック「アー、ロン……なぜ……」
セオドア「ばかな!! なぜ兄上が!?」
テイラー「陛下!!」
セレナ「お父様!!」
セオドア「緊急事態だ!! 全軍、厳戒態勢に入れ!! 市民を城外まで誘導しろ!!」

セオドア、ドウェインを見る。

ドウェイン「ふ……。んっふっふ。騎士団長殿、ご明察ですよ。あなたとご想像の通りです」

ドウェイン、魔族の姿になる。

ドウェイン(タルウィ)「私の本当の名前はタルウィ。見ての通り魔族です。ちなみに彼は私の使い魔、クーンです」

アーロン、下級魔族の姿になる。

アーロン(クーン)「はは! つまりはそういうことだぜ! 理解したか、マヌケ!」
フレデリック「なんということ……」
セレナ「そんな!! お父様!! アーロン兄様!!」
セオドア「兄上は既に殺されていたというわけか!! 皆の者!! この狼藉者二名を叩け!! 生死は問わん!!」
親衛隊「「イエス、サー!!」」
セオドア「テイラー!! セレナを頼む!!」
テイラー「承知!!」

テイラー、セレナを担ぎ上げる。

セレナ「なっ!! テイラー!! 放して!! お父様が!! お父様が!!」
テイラー「姫様!! お許しください!!」

テイラー、近衛兵と共に城の中へ逃げる。

セオドア、モノローグ(父上はもう助からない。テイラー、あとは頼んだぞ)

次回


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