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Untitled Fantasy(仮題) 序5

登場人物

マーティ・ハガード(18) 便利屋、元孤児
セレナ・ウィリアムズ(18) ウィリアムズ王国現第二王女
エマ・クラーク(17) 機織り、元孤児

フレデリック・ウィリアムズ二世(55) ウィリアムズ王国現国王
タルウィ(?) 魔族、ウィリアムズ王国宰相ドウェイン・ウォーカーとして政界を掌握、国王フレデリックを間接的に殺害

テイラー(62) 王国の老兵、マーティとセレナの剣術の師
セオドア・ウィリアムズ(28) ウィリアムズ王国現第二王子、現ウィリアムズ王国騎士団団長、側室の子
アーロン・ウィリアムズ(30) ウィリアムズ王国現王太子。消息不明。
クーン(?) タルウィの使い魔、王太子アーロンになりすまし国王フレデリックを殺害

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〇王宮前広場

マーティ「急に曇りだしたな」
エマ「うん。でも、何かおかしくない? あんなに雲が速く……」
マーティ「そうだな。もう太陽が隠れそうだ」
市民A「あれを見ろ! アーロン殿下が!」

マーティ、エマ、バルコニーの方を見る。

エマ「うそ……」
マーティ「どういうことだ!? なんで王子が国王を刺してるんだ!?」
セオドア「緊急事態だ!! 全軍、厳戒態勢に入れ!! 市民を城外まで誘導しろ!!」

広場の警備をしていた兵と楽団が動き出す。

大隊長A「総員、速やかに配置につけ! 市民を南門に誘導せよ!」
兵たち「「イエス!! サー!!」」

兵たち、予定されていた緊急配置に移る。
広場にいる市民、混乱しだす。

市民B「なんかヤバいぞ!」
市民C「ねぇ! 見て! あの人、姿が!」

ドウェイン、魔族の姿になる。
広場にいる市民、ますます混乱しだす。

兵士A「みなさん落ち着いて!! ここは我々が食い止めますから!! 指示に従って逃げてください!!」
兵士B「混雑しますから、三方に分かれて南門へ向かってください!!」

広場の後方にいた市民から王宮の反対方向へ逃げていく。

マーティ「あいつッ……! 人間じゃないだと!?」
エマ「マーティ、逃げよう!」
マーティ「エマ! お前は先に逃げててくれ!」

マーティ、王宮の方へ走り出す。

エマ「ちょっと、マーティ!! だめだよ!!」

×   ×   ×

マーティ、入口前の兵士たちの方へ走っていく。

兵士C「君! こっちに来ちゃだめだ! 早く逃げなさい!」
マーティ「すんません! そういうわけにはいかないんで!」

マーティ、兵士たちの隙間をかいくぐって入口に走る。

兵士C「あ! バカ! 中に入るな! 死にたいのか!?」
大隊長A「放っておけ! 市民の避難誘導とこの場の死守に集中しろ!」
兵士C「は、はい! 失礼いたしました!」


〇王宮内、バルコニー

セオドア、ドウェイン(タルウィ)に斬りかかる。

セオドア「チェストー!!」

クーン、間に入ってセオドアの攻撃を剣で受け止める。

クーン「おっと、そうはさせねぇぜ」
タルウィ「クーンよ。しばらく団長殿の相手をして差し上げなさい」
クーン「わかったぜ、ご主人様よー」

クーン、セオドアを押し返してタルウィから遠ざける。

タルウィ「それでは、私はアビスゲートを拡張しに行くとしましょうかねぇ」

タルウィ、王宮の中へ向かおうとする。
親衛隊、タルウィを止めに動く。

親衛隊A「逃がすか!」
タルウィ「威勢がいいことですねぇ。あなた方の相手は彼らがしてくれますよ。魔界からの先発部隊です」

空から有翼の魔物たちが現れ、親衛隊に襲いかかる。

親衛隊B「なんだこいつら!!」
親衛隊C「くっ! 強いぞ!」
タルウィ「これからもっと強い方たちを呼んで差し上げます。楽しみにしていてくださいねぇ」

バルコニーの奥にいた政治家2人が声を上げる。

政治家A「ドウェイン殿! 話が違うではないか!」
政治家B「貴様! 陛下になんてことを!」
タルウィ「おやおや、あなた方は……」
政治家A「我々はこんなことを望んではいない。どういうことか説明してもらおう」
タルウィ「説明? ほほう、説明ときましたか。なるほどなるほど……」

タルウィ、ニヤニヤしたあと急に険しい表情になる。

タルウィ「だまらっしゃい!」

政治家A、B、たじろぐ。

タルウィ「これ以上、何の説明がいると言うのでしょう? あなたがたは私にまんまと騙された。それだけの話ではないですか」

政治家A「ぐぬぅ……」
タルウィ「それに、陛下になんてことをですって? よくそんなことが言えたものですねぇ。この国の税を私利私欲のためにつまんでおきながら、今さら愛国者ヅラですか?」
政治家B「それは……」
タルウィ「私が利益誘導したら大いに喜んだじゃありませんか。あなた方も同罪なのですよ?」
政治家A、B「「……」」
タルウィ「とはいえ、私が宰相になった時点であなた方はとっくに用済みでしたがねぇ」
政治家B「おのれ! 言わせておけば!」
タルウィ「名残惜しいですが引導を渡して差し上げましょう。あなた方のような三下に構っている暇はありませんので」

タルウィの周りに黒い霧が立ち込め、政治家A、Bに向かって広がっていく。

政治家A「なんだこの霧は!?」

霧が政治家A、Bを包み込む。

政治家A「が……あッ……苦し……」
政治家B「息が……でき……なっ……」

政治家A、B、目玉が飛び出、血涙を流しながら紫色になって息絶える。

タルウィ「哀れですねぇ。民衆を利用しているつもりが、自分たちが我々魔族に利用されていたのですから」

タルウィ、王宮の中に姿を消す。


〇王宮内、広い廊下

セレナを担いだテイラーと近衛兵数名が走っている。

セレナ「テイラー!! 放して!! 私も戦うの!! このままじゃセオドア兄さまが!!」
テイラー「なりません! 姫様は逃げるのです!」
セレナ「嫌!! 嫌よ!! 私だけ逃げるなんて!!」
テイラー「お黙りなさい!!」

セレナ、驚いた顔をする。
近衛兵、立ち止まる。
テイラー、立ち止まってセレナを降ろす。

テイラー「君らは戻って魔物たちの侵攻を防ぎなさい」
近衛兵「「しょ、承知いたしました!!」」

近衛兵、来た道を戻る。
テイラー、セレナの目を見る。

テイラー「失礼を承知で申し上げます。姫様が今あの場に戻って戦ったところで無駄死にするだけです。そうなったら、いったい誰がウィリアムズ王家を再興させるのですか?」
セレナ「……」
テイラー「セオドア殿下はドウェインの叛意を見抜き、警戒を強めていました。そして私に申されたのです。いざというときは姫様を女王として立て、再起を図れと」
セレナ「兄さまが、そんなことを……」
テイラー「殿下は側室の子である自分より、姫様の方がそれに相応しいと仰っていました」
セレナ「そんな、私には国を背負うなんて、とても……」
テイラー「王族として国の平和と繁栄のために身を捧げるのは当然と仰ったではないですか。あれは嘘だったのですか?」
セレナ「それは……」
テイラー「殿下は自らの運命に従い、天命を全うされようとしています。お辛いのはわかります。しかし、セオドア殿下の御心に応えたいのなら、姫様も王族としての天命を全うするのが筋というものです」

テイラー、何かに反応し後を振り返る。

テイラー「どうやらアビスゲートが拡大しているようです。じきにここにも魔物の大群がやってきます」

進行方向から大勢の兵士が走ってくる。

中隊長A「セレナ殿下! よくぞご無事で! テイラー殿! 魔物は我々が食い止めます! 早く殿下を外へ!」
テイラー「あいわかった! 行きますよ、姫様!」

テイラー、セレナの手を引いて再び走り出す。

セレナ「え、ちょっと」

×   ×   ×

〇王宮内、別の廊下

数名の兵士が待機している。
そこにマーティが走ってくる。

兵士D「おい、お前! どうやって入ってきた! さっさと逃げろ!」
兵士E「俺たちは今忙しいんだ! 手をわずらわせるな!」
マーティ「すまねぇ! 止められるわけにはいかねぇんだ!」

マーティ、取り押さえようとする兵士たちを素早くかわして通り抜ける。

兵士F「なんだあの俊敏さは! 一般人の動きじゃないぞ!」
兵士D「おい、お前! 武器を盗られてるぞ!」
兵士F「え!?」

兵士Fの腰にあった長剣が抜かれ、鞘だけが残っている。

マーティ・モノローグ(セレナ。テイラー先生。無事でいてくれ)

次回


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