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Untitled Fantasy(仮題)破4

登場人物

マーティ・ハガード(18) 便利屋、元孤児
セレナ・ウィリアムズ(18) ウィリアムズ王国現第二王女

テイラー(62) 王国の老兵、マーティとセレナの剣術の師
ダンカン(58) 金持ちの材木屋

初回

前回


〇ダンカンの林へ続く荒野

マーティ、セレナを乗せて馬を走らせる。
その後方を味方の騎兵が数騎、追従している。

マーティ「セレナ! さっきの空気の刃を飛ばす技、どのくらいの威力まで出せる!?」
セレナ「わかんないわよ! 実戦で使ったのはあれが初めてなんだから!」
マーティ「じゃあ、あれと同じ威力なら何発撃てる!?」
セレナ「間隔を空ければ、たぶん二十回くらい!」
マーティ「それだけ撃てりゃ十分だ! お前は雑魚をできるだけまとめて捌いてくれ!」
セレナ「わかったわ!」

マーティ、振り向いて後方の騎兵に向かって叫ぶ。

マーティ「おーい! あんたらは俺たちが討ち損じた雑魚をその槍で仕留めてくれ! あとは俺がなんとかする!」
騎兵A「それは殿下のご命令か!?」
マーティ「ああ! そうだよ! 頼むぜ!」
騎兵A「……あいわかった! みんないくぞ! 雑魚を確実に仕留めて敵の数を減らすんだ!」
騎兵たち「「おう!!」」

マーティ、前に向き直る。

セレナ「嘘ばっかり」
マーティ「嘘も方便さ。……さあ、見えてきたぜ。腹決めて行くぞ!」

 *   *   *

魔物の集団、50~60。
うち大型の魔物、10前後。

マーティ「今から馬を右に切ってそのまま外周を走る! その間に雑魚を斬れるだけ斬ってくれ!」
セレナ「わかった! やってみる!」

セレナ、左手で剣を抜く。
マーティ、馬を右に振って魔物の集団の左外周を走りだす。
セレナ、詠唱後、剣を振って空気の刃を飛ばす。
雑魚4匹に命中する。

斬られた魔物たち「「ピギィィッ!!」」
マーティ「よし! いいぞ! その調子だ!」

セレナ、一呼吸おき、再び詠唱を始める。
また空気の刃を敵の集団に向けて飛ばす。
雑魚2匹に命中する。

セレナ「ごめんなさい! 少し討ち漏らしたわ!」
マーティ「大丈夫だ! 後ろの奴らがなんとかする!」

討ち漏らした魔物が後ろから追いかける。
その背後から騎兵たちが走ってくる。

騎兵A「殿下には指一本触れさせん!」

騎兵A、槍で魔物の背中を貫く。

追いかける魔物「ピギャッ!!」

魔物、大量の血を吹き出して倒れる。

マーティ「いい感じだ! このまま雑魚を片付けてくれ!」

セレナと騎兵たち、雑魚を討っていく。

 *   *   *

大型の魔物を残し、雑魚を粗方倒し終える。

マーティ「さあ、それじゃあ仕上げといくか!」

マーティ、剣を抜く。

騎兵A「お前! 大丈夫なのか!?」
マーティ「ああ! 任せときな!」
マーティ、モノローグ(このあいだ見たオークに、大型のウェアウルフ、それにあれはオウガか? 初めて見るのが多いな)
マーティ「セレナ! 俺にしっかり捕まって、身を小さくしてろ!」
セレナ「うん!」
マーティ、モノローグ(馬上からならちょうどいい高さだ。いくぜ!)

マーティ、左端にいたオウガに向かって馬を走らせる。
オウガ、マーティめがけて爪を振り下ろす。
マーティ、馬を左に切ってよけ、その勢いでオウガの首を斬りつける。
オウガの首の三分の一が斬られ、血が吹き出る。

オウガ「ギエエエエッ!!」

マーティ、モノローグ(さすがテイラー先生の剣、いい切れ味だ。それに深く斬りつけても血糊が残らない)

マーティ、踵を返して反対の端にいるウェアウルフに向かって馬を走らせる。
ウェアウルフ、馬に向かって腕を大きく横に振って攻撃する。
マーティ、馬を大きく左に切りながら、ウェアウルフの手を横一線に斬り裂く。

ウェアウルフ「ギイイィィエエエッ!!」
マーティ「よし、もう一撃だ!」

マーティ、一度離れてから振り返る。
マーティが近づくより先に、騎兵3騎がウェアウルフに接近し、連続で突き刺す。

ウェアウルフ「ギイイィゴアアァ!!」
騎兵A「援護は我々に任せろ! お前は活きのいい奴を狙え!」
マーティ「わかった! 恩に着るぜ!」

マーティ、次の敵を狙う。

 *   *   *

一行、魔物の群れを殲滅する。

マーティ「これで片付いたな。セレナ、大丈夫か?」
セレナ「うん、なんともない」
マーティ「そうか。ならよかった」

騎兵たちが近づいてくる。

騎兵A「馬上にて失礼いたします! 殿下! ご無事でしょうか!?」
セレナ「ええ、私は大丈夫です」
マーティ「あんたらはどこもやられてないか?」
騎兵A「少々もらったが命に別状は無い。お前のおかげだ。強いな」
マーティ「まあな。テイラー先生のお陰ってところだ」
騎兵A「テイラー殿に? いったいどこで習ったのだ?」

マーティ、セレナの方を見る。

マーティ「この人たちなら言っても大丈夫なんじゃないか?」
セレナ「そうね」
マーティ「戻りながら話そうぜ。早くみんなを安心させないと」
騎兵A「そうだな」

マーティ、セレナ、騎兵たち、元来た道を戻る。

 *   *   *

騎兵A「なるほど、殿下の旧友でありましたか。どうりで親し気だったのですね」
セレナ「え……親し気に見えたの?」
騎兵A「え……まあ。なんと言いますか、初対面ではないような雰囲気がありましたので」
セレナ「民たちに見抜かれてないかしら」
騎兵A「それはわかりかねますが、見抜かれていたとして、民が殿下に対して良からぬ行動に出るとは考えにくいかと。そのようなことは平時でも厳罰の対象になりますし」
マーティ「矛先が向くとしても俺の方だろうな」
騎兵A「それに殿下が孤児院に遊びに行かれていたのは、王宮内では公然の秘密でしたので」
セレナ「そうだったの?」
騎士A「ええ。テイラー殿は何を聞かれてもしらを切っておりましたが」

 *   *   *

マーティ「そういうわけで、こんな状況だし、臨時でセレナ……殿下直属の護衛をさせてもらってるんだ」
騎士A「それはありがたい。お前のような腕の立つ男なら適任だろう。しかしなぜ、お前は騎士団に入団しなかったのだ? それだけの腕と統率力があればすぐに出世しただろうに」
マーティ「それはまあ、いろいろとな……」

マーティ、セレナ、複雑な表情をする。
騎士A、セレナの様子を横目で見る。

騎士A「余計なことを聞いた。すまない。殿下も、申し訳ございません」
セレナ「いいのよ。昔の話だから」

民の集団が視界に入る。

マーティ「見えてきたぜ」
騎兵A「ああ、急ごう」
セレナ「ねえ、その前に少しだけ二人にしてくれない?」
騎兵A「はあ。構いませんが」
セレナ「マーティ」
マーティ「ん? ああ、わかった」

マーティ、騎兵たちから離れる。

マーティ「セレナ……泣いてるのか?」
セレナ「さっきテイラーの話をされて、いろいろ思い出しちゃって……」
マーティ「なあ、セレナ。こう言うとまた気休めって言うかも知れねぇけど、俺たちまたテイラー先生に会える気がするんだ」
セレナ「どうして?」
マーティ「なんとなくな。先生は無謀な人じゃない。きっと俺たちが城外に出る時間を予測して、そのあと自分も逃げるはずさ」
セレナ「そんな都合のいいこと……」
マーティ「いいんだよ、都合よくて。俺たち人間は多かれ少なかれ都合のいい考えを持って生きてるんだから。それに、そうでもしないと前に進めないだろ?」
セレナ「そうね……」

次回


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