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Untitled Fantasy(仮題)破3

登場人物

マーティ・ハガード(18) 便利屋、元孤児
セレナ・ウィリアムズ(18) ウィリアムズ王国現第二王女
ジョニー・ダグラス(18) 薬剤師、元孤児
エマ・クラーク(17) 機織り、元孤児

タルウィ(?) 魔族、ウィリアムズ王国宰相ドウェイン・ウォーカーとして政界を掌握、国王フレデリックを間接的に殺害

ラリー(20) 王都の城門を守る門番、元孤児
ダンカン(58) 金持ちの材木屋


初回

前回


〇城下町、大通り、南門の手前

マーティ、セレナ、引き続き馬に乗り、市民の先頭を進む。
先にある南門がすでに開かれている

マーティ(南門が見えてきたな。あそこにはラリーがいるはずだ。あいつとはあれから会ったか?)
セレナ(ううん。私は騎士団と繋がりがないから、あれっきり)
マーティ(そっか。あいつ、入団したてのころ言ってたぜ。自分を育ててくれた国にも、友達として接してくれたお前にも恩返しがしたいって)
セレナ(私はただ普通に接してただけ)
マーティ(それがお前の凄いところだよ。孤児だった俺たちと同じ目線で遊ぶなんて、普通できないぜ)
セレナ(……それは、あなたが私を特別扱いしないでくれたから)
マーティ(え? ごめん、ちょっと聞き取れなかった)
セレナ(なんでもない)
マーティ(……まあいいや。そろそろお仕事の時間だ。辛いだろうけど、気張って行こうぜ)
セレナ(わかった……)

 *   *   *

マーティたち、南門の前まで来る。

部隊長B「全体止まれ!」

市民の集団、段階的に止まる。
部隊長B 、セレナとマーティに近付く。

部隊長B「殿下、すでに南東の砦で市民を受け入れる準備が整っております」
セレナ「わかりました。号令は私がかけます。マ……あなた、南東の砦までの道はわかりますか?」
マーティ「はい、承知しております」
セレナ「よろしい。では参りましょう」

セレナ、振り向いて手を挙げる。

セレナ「みなさん! あと少しの辛抱です! このまま全員で逃げ切りましょう!」

市民、歓声を上げる。
セレナ、歓声が収まってから前に向き直る。

セレナ「行きましょう」
マーティ「はっ!」

マーティ、セレナ、前に進む。
右手にラリーが立っている。

ラリー「マーティ! それにセレナ……殿下」
マーティ「ラリー、事情は後で話す。あとは頼んだぜ」
ラリー「ああ、それはいいんだが……」

セレナ、馬上から体勢を低くしてラリーの耳元で囁く。

セレナ(ごめんなさい、久しぶりの再会なのに、ゆっくり話せなくて)
ラリー(そんな、覚えていてくれただけで、俺は……)
セレナ(市民を城外に逃がしたら、あなたも逃げて)
ラリー(……)

セレナ、体勢を戻す。
マーティ、城門を出る。

兵士「みなさん、前の者を押さないよう、注意して逃げてください!」

市民たち、セレナの後について順繰りに城門から出る。

 *   *   *


◯街道

市民たち、疲れの色が見え始める。

マーティ(みんな少し疲れてきてるな。城を出てから約半刻。南東の砦まで小一時間ってところか)
セレナ(ねぇ、休憩した方がいいかな?)
マーティ(いや、安易に休めば遅れている人たちに怒りの矛先が向きかねない。慎重にやらないと)
セレナ(じゃあ、どうしよう……)
マーティ(疲れてる人たちは殿の兵たちに任せる、くらいしかないか)

周辺の偵察に出ていた騎兵たちが戻って来る。

騎兵A「敵襲! 敵襲! 左前方から魔物の集団が迫って来ます! 大型の魔物が二十前後! その他、合計で五十はいます!」
セレナ「なんですって!?」
マーティ「よりによってこんなときに……」
セレナ「どうしてそんなところから魔物が……」
マーティ「そうだ! 向こうにはダンカンの旦那の林があった!」
セレナ「何? どういうこと?」
マーティ「あの向こうに俺の知り合いの所有する林があるんだ。最近強い魔物がよく出てた。タルウィの野郎、逃げるときこの街道を通ると見越して、あそこに魔物を……」

マーティ、馬を止める。

マーティ「セレナ、いったん降りろ! 俺が先に行ってなんとかする!」
セレナ「だめよ! あなたにもしものことがあったら……!」
マーティ「お前が死んだら意味がないだろ!」
セレナ「私だって戦える! 連れてって!」
マーティ「……しょうがねぇ。行くぞ!」
セレナ「うん!」

マーティ、ダンカンの林の方角へ馬を走らせる。

部隊長B「あ! 殿下!」

セレナ、振り返る。

セレナ「敵は私たちが蹴散らします! 今戻ってきた騎兵隊は援護に回って! 残りの兵は引き続き南東の砦を目指しなさい!」
部隊長B「殿下、しかし!」

マーティ、セレナ、走り去る。
騎兵隊、その後を追う。

部隊長B「なんてことだ! 行ってしまわれた!」


〇市民の集団、ジョニーとエマの周辺

エマ「あれ? 騎兵の人たちがこっちに」
ジョニー「さっき向こうに走って行った兵じゃないか? 辺りの様子を探って来た帰りか」
エマ「ねぇ、ちょっと速いよ。急いでるみたい」
ジョニー「たしかにな。あっちはたしかダンカンさんの林がある方だ。最近強い魔物が出るようになったって話で、少し前にマーティが討伐の依頼を受けてたんだ」
エマ「もしかして、その魔物が攻めて来たんじゃ……」

周囲の人々、ざわつく。

市民D「おい、兄ちゃん、そりゃ本当か?」
ジョニー「え、はい。でもその魔物がこちらに来るとは限りませんし、来たとしても軍の人たちが時間を稼いでくれるはずです。それに今は逃げることに集中しないと」
市民D「冷静に言うけどよー、そんな強い魔物がこっち来たらどうすんだよ。お仕舞じゃねぇか」
市民E「そうよ! 逃げるったって、もう脚も疲れてきたし、無理よ!」

市民の集団、ざわつきだす。

エマ「ジョニー、どうしよう。みんなピリピリしてる」
ジョニー「僕だってどうしていいかわからないよ」
市民F「おい! あれを見ろ!」

マーティとセレナが林の方へ走り出す。
騎兵たちがその後を追いかける。

エマ「マーティ!」
ジョニー、モノローグ(あいつ、なんで二人で……。いや、セレナが食い下がったと考えた方が自然か。でも大丈夫なのか? セレナに何かあったら……)
誰かの声「セレナ殿下が自ら武器を手に戦おうとしてるんだぞ! お前ら勝手こいて文句たれてんじゃねぇ! 黙って歩け!」

市民たち、静かになり再び歩きはじめる。

ジョニー、モノローグ(誰か知らないけど、いいタイミングで言ってくれた。あとは二人が無事に戻って来ることを祈ろう)
エマ「ジョニー! マーティが! マーティが!」
ジョニー「落ち着くんだ、エマ。さっきだって、あいつはセレナ殿下を救出して帰って来たじゃないか。あいつを信じるんだ。信じること以外、僕たちにできることはない」
エマ「でも、でも……」
ジョニー「今は前に進もう。僕たちは、僕たちがすべきことをするんだ」
ジョニー、モノローグ(マーティ、頼む。セレナに何かあったら国が持たないように、お前が死んだらエマが持たないんだよ。それに、僕だって……)


次回


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