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Untitled Fantasy(仮題)破5

登場人物

マーティ・ハガード(18) 便利屋、元孤児
セレナ・ウィリアムズ(18) ウィリアムズ王国現第二王女
ジョニー・ダグラス(18) 薬剤師、元孤児
エマ・クラーク(17) 機織り、元孤児

テイラー(62) 王国の老兵、マーティとセレナの剣術の師
セオドア・ウィリアムズ(28) ウィリアムズ王国現第二王子、現ウィリアムズ王国騎士団団長、側室の子

初回

前回

〇市民の集団、先頭付近

マーティ、セレナ、騎兵たちが向かってくる。

市民G「殿下だ! 殿下が戻ってきたぞ!」
分隊長B「何!?」
市民H「本当だ! 殿下が生きて帰ってきた!」

市民の集団、足を止める。

 *   *   *

マーティ、セレナ、戻ってくる。

分隊長B「殿下! ご無事で何よりです!」
セレナ「ありがとう。心配をかけましたね」
分隊長B「とんでもございません! 殿下自ら率先垂範される姿に、我々一同、感服いたしました!」
セレナ「それは何よりです」

セレナ、民の方を見て手を高く挙げる。

セレナ「みなさん! 魔物は私たちが退けました! だから安心して!」

市民たち、歓声を上げる。

セレナ「もう少しの辛抱です! このまま全員で南東の砦に逃げましょう!」

市民たち、再び歓声を上げる。

マーティ、モノローグ(どんなに弱音を吐いても、民の前では気丈に振る舞う。そういうところはやっぱり王族なんだよな)

マーティ、笑顔になる。

マーティ、モノローグ(セオドア殿下とテイラー先生がセレナに国を委ねた理由がわかったぜ。こいつには、本人も気付いていないカリスマがある。守り抜かなきゃな。国を取り戻すためにも)

マーティ、馬を反転させ、南東の砦に向けて歩きだす。

セレナ「さあ、行きましょう!」

市民の集団、歩きだす。

マーティ、モノローグ(あとはどうやって魔族の軍を退けるか。依然、ヘヴィな状況には変わりねぇな)


〇市民の集団、ジョニーとエマの周辺

エマ、落ち着かない様子のまま、ジョニーに促されて歩いている。
前から歓声が聞こえてくる。

市民G「殿下だ! 殿下が戻ってきたぞ!」
市民H「本当だ! 殿下が生きて帰ってきた!」

エマ、ジョニー、前方を見る。

エマ「マーティ! やった! ジョニー! マーティが帰ってきたよ!」
ジョニー「ああ! やったな! 大した奴だよ、あいつは!」
エマ「うん! よかった! 本当によかった……」

エマ、号泣する。

市民D「おい、兄ちゃん。あの騎手、兄ちゃんのダチか?」
ジョニー「ええ、まあ」
市民D「大したもんだな! 魔物を倒して殿下を守ったんだからな!」
エマ「マーティは強いんです!」
市民D「おう、嬢ちゃん。なんだ、あいつは嬢ちゃんの彼氏かい?」
エマ「彼……友だち、です」
市民D「そうかそうか。凄ぇ奴が友だちなんだな」
エマ「……はい」

 *   *   *

〇南東の砦の前

市民の集団、南東の砦に到着する。
マーティ、セレナ、後を振り返る。

マーティ(全員無事で済んだな。後続集団も視界の範囲まで来てる。大手柄だぜ、セレナ)
セレナ(そんな、私はただ、王女らしいことを言おうとしただけで……)
マーティ(ああ、どっからどう見ても立派な王女だったぜ)
セレナ(やめてよ。私なんて全然……)

分隊長B、二人に近付く。
セレナ、王女の顔になる。

分隊長B「殿下、ただいまより民を砦内に誘導します!」
セレナ「わかりました。手筈は整っているのですね?」
分隊長B「はい、もちろんです! すぐに準備いたします!」
セレナ「では、そのようにしなさい」
分隊長B「はい! 承知いたしました!」

マーティ、馬を翻らせ民の方を向く。
セレナ、手を上げる。

セレナ「みなさん! よく頑張りました! 砦に入ったらまずはゆっくり身体を休めなさい!」

市民たち、歓声を上げる。
砦内から小隊長と数名の兵士が現れ、セレナに近付く。

南東砦の小隊長「殿下、お待ちいたしておりました。非常事態ゆえ十分なおもてなしはできませんが、お部屋のご用意はできております」
セレナ「わかりました、案内しなさい。ただし、それ以上の気遣いは無用です。まずは民を休ませなさい」
南東砦の小隊長「は! 承知いたしました! ところで、お付きの方はどなたでしょうか? 騎士団の者ではないようですが」
セレナ「彼は私の逃走を手助けした勇気ある市民です」
南東砦の小隊長「そうでしたか。ならば他の民とともにゆっくり休んで……」
セレナ「いいえ。彼には私の護衛として同行を許可しています。私と同じ部屋に通しなさい」
南東砦の小隊長「しかし……」

騎兵A、近づいて下馬する。

騎兵A 「失礼いたします。彼は先ほど我々とともに魔物の群れを撃退しました。武芸に関しては申し分ありません。素性も把握しているので裏切る心配もないでしょう」
南東砦の小隊長「そうは言っても……」
騎兵A「殿下のご判断でも、ですか?」
南東砦の小隊長「それは……」
セレナ「もし彼が良からぬ行動を起こしたら、あなたたちが取り押さえればいいだけの話です。わかりますね?」
南東砦の小隊長「失礼いたしました! おっしゃる通りでございます! 殿下をご案内して差し上げろ」
案内役の兵士A「は! ご案内いたします!」

案内役の兵士2名、セレナを砦内に案内する。
マーティと騎兵A、顔を合わせて笑みを浮かべる。


〇砦内の部屋

セレナ、マーティ、椅子2脚とテーブル1卓のみの部屋に案内される。

案内役の兵士B「こちらへどうぞ」
セレナ「ありがとう」

セレナ、マーティ、中に入る。

案内役の兵士A「周囲は我々が監視しておりますので、何かありましたらお呼びください」
セレナ「わかったわ。ご苦労様」
案内役の兵士AB「「ありがたきお言葉にございます! 失礼いたします!」」

案内役の兵士AB、扉を閉めてその場から離れる。

マーティ「座るか」
セレナ「うん」

マーティ、セレナ、椅子に腰掛ける。

マーティ「なんとか逃げ切れたな」
セレナ「そうね」
マーティ「まだまだ苦しい状況だけどよ、なんとか巻き返さなきゃな」
セレナ「上手くいくかしら。相手は魔族の精鋭なのに」
マーティ「……」
セレナ「民の前では勇ましいことを言ったけど、本当は、あなたと一緒に逃げたい」
マーティ「それはだめだ。お前は国民の希望なんだ」
セレナ「でも……」

マーティ、セレナの手を取る。

セレナ「え……」
マーティ「俺は最後までお前と一緒に戦う。だから諦めないでくれ」
セレナ「マーティ……」

部屋の外から物音が聞こえる。

案内役の兵士A「なんだ貴様は! どこから侵入し……」

兵士二人が倒れる音がする。
一人の足音が近付いてくる。
マーティ、セレナ、立ち上がって身構える。

マーティ「どういうことだ? 砦内には民と騎士団以外いないはずじゃないのか?」
セレナ「まさか、敵が民の中に紛れ込んで……」
マーティ「もしそうならここでやるしかないか」

マーティ、剣に手をかける。

男の声「あー。ちょっと待て。武器を放してくれ。俺はお前らの敵じゃない」
マーティ「何!?」
男の声「なんて言ったらいいか。お前ら人間の味方で、魔族の敵。いわゆる天界人ってやつだ」
セレナ「天界人ですって!?」
マーティ「あの御伽噺に出てくる天界人だと? 何の冗談か知らねぇが、俺たちは今忙しいんだ。次に妙なことをしたら斬り捨てるぞ」
男の声「だから待てって。監視の兵を眠らせたのは悪かった。五分もすれば起きるから、いったん落ち着いて話を聞いてくれ」
マーティ「信用できるか」
男の声「信用してもらわなきゃ困るんだよ、マーティ・ハガードにセレナ・ウィリアムズ」
マーティ、セレナ「「!?」」
男の声「俺は魔族を撃退するため、潜在能力を引き出しに来たのさ。お前らと、お前らの友人、ジョニー・ダグラス、エマ・クラークのな」
マーティ「なんだって!?」

次回


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