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Untitled Fantasy(仮題)破7

登場人物

マーティ・ハガード(18) 便利屋、元孤児
セレナ・ウィリアムズ(18) ウィリアムズ王国現第二王女
ジョニー・ダグラス(18) 薬剤師、元孤児
エマ・クラーク(17) 機織り、元孤児

フレデリック・ウィリアムズ二世(享年55) ウィリアムズ王国国王、タルウィの使い魔クーンに殺される
タルウィ(?) 魔族、ウィリアムズ王国宰相ドウェイン・ウォーカーとして政界を掌握、国王フレデリックを間接的に殺害

ドゥルジ(?) 魔族の将
グレアム(283) 天界の若手官僚
アコーマン(?) 魔族の将

初回

前回

〇砦の城壁の上

マーティ、セレナ、城壁の上に着地する。
監視の兵が驚いた顔で見ている。
北西の方角に敵部隊が見える。

マーティ「北西の方角……。王都は陥落したか」

セレナ、うつむく。

マーティ「セレナ、大丈夫か?」
セレナ「絶対、私の傍をはなれないで。一人じゃ耐えられないから」
マーティ「わかった。約束だ」

マーティ、セレナ、敵のいる方を見る。

マーティ「行くぞ!」
セレナ「うん!」

マーティ、セレナ、城壁から飛び降り、敵に向かって走り出す。


〇敵部隊周辺

とさかのような髪の生えた魔族の将と、それに付き従う同系の人型の魔物約二百人。
何らかの動力で動く二輪の乗り物に乗っている。

魔族の将「ヒャッハー! やっと人間どもを刈れるぜー! 城の兵はドゥルジたちに取られちまったからなー! 野郎ども! 準備はいいかー!」

魔物たち、甲高い声を上げる。

人型の魔物A「アコーマン様! 向こうから人間が来ますぜ!」
魔族の将(アコーマン)「ほう。数は?」
人型の魔物A「二人です!」
アコーマン「二人だと!? ヒャハハハハ! 頭のイカレた野郎がいたもんだぜー! ただでさえ弱ぇー人間がたった二人!?」

アコーマン、大きく息を吸う。

アコーマン「おい野郎ども! 二人だからって容赦するんじゃねぇぞ! 一瞬でひねりつぶして砦に突撃するぞ!」

魔物たち、いきり立つ。


〇南東の砦前、荒野

マーティ、セレナ、敵の集団に向かって走っている。

マーティ「大量の砂埃にここまで聞こえるバカでかい音。奴ら妙な乗り物に乗ってやがる」
セレナ「関係ないわ」
マーティ「そうだな。散々な目に合わされたんだ。きっちりお返ししなきゃな」

 *   *   *

敵の集団から五百メートルほどの地点。

マーティ「ったく、うるさくて仕方ねぇ! セレナ! 聞こえるか!?」
セレナ「聞こえるわ!」
マーティ「奴らが射程内に入ったら牽制で一発かましてくれ! あとは流れに任せて雑魚を蹴散らすぞ!」
セレナ「わかったわ!」
マーティ「よし! 行くぞ!」

 *   *   *

敵の集団が二十メートルの距離に達する。
セレナ、剣を抜き詠唱する。

セレナ「今よ! えいっ!」

セレナ、剣を振る。
空気の刃が竜巻のように重なり合って敵の方へ飛んでいく。

人型の魔物B「アコーマン様! 敵が妙な技を使って来ました!」
アコーマン「あん? 妙な技だぁ?」

空気の刃が前列の魔物に命中し、十人ほどが乗り物もろとも切り刻まれる。

人型の魔物たち「「ぴげっ!!」」
アコーマン「なにぃ!?」

マーティ、加速して敵の至近距離まで近付く。

マーティ「今度は俺の番だ」

マーティ、大剣を大きく振りかぶって横に振る。
一振りで魔物が五人、もう一振りでさらに五人砕け散る。

人型の魔物たち「「だべばっ!!」」
アコーマン「よけろ! 左右に散ってそいつらから離れろ!」

魔物たち、旋回して距離を取り、止まる。

アコーマン「どういうことだ!? 人間にあんな力はねぇはずだぞ!」

マーティ、セレナ、立ち止まる。

マーティ「二手に分かれたか。挟み撃ちの形になっちまったな」
セレナ「マーティ、あなたの背中は私が守る」
マーティ「ああ、頼む」

マーティ、セレナ、互いに背中合わせに立つ。

アコーマン「くそ! 人間なんぞに負けたとなりゃ、アエーシュマ様に合わす顔がねぇ! 野郎ども! 一斉にかかるぞ!」
人型の魔物たち「「うおおおおお!」」

魔物たち、全員でマーティとセレナの方へ突っ込む。

マーティ「だりゃああああ!」

マーティ、大剣を振り、次々に敵をなぎ倒していく。
セレナ、竜巻で反対側の敵を斬り刻んでいく。

アコーマン「ひるむんじゃねぇ! 所詮は人間だ! てめぇら魔族の意地を見せやがれ!」

魔物たちの数が減っていく。

 *   *   *

アコーマン、一人になる。

マーティ「ついにお前一人になったな」
アコーマン「ぐぬぅ……」
セレナ「観念しなさい! あなたに勝ち目はないわ!」
アコーマン「勝ち目はないだと? ヒヒ……ヒャハハハハハ!」
マーティ「何がおかしい?」

アコーマン、乗り物を南東の砦に向かって走らせる。

マーティ「何!」
アコーマン「おめぇらとの勝負はいったんお預けだ! はらいせに砦にいる人間どもをてきとーにぶち殺してから帰ってやるぜ!」
セレナ「待ちなさい!」

セレナ、空気の刃を飛ばすも届かない。

セレナ「だめ! 射程距離の外に出られたわ!」
マーティ「オーケー! じゃあ俺がやってやるぜ!」

マーティ、下から掬い上げるように大剣で地面を叩く。
複数の土の塊がアコーマンの方へ向かって飛んでいく。

アコーマン「ぎえっ!」

土の塊が当たり、アコーマンが乗り物ごと倒れる。

マーティ「よし! 当たったぞ!」

マーティ、セレナ、走り出す。
アコーマン、立ち上がろうとする。

アコーマン「ちくしょう! ふざけやがって! こうなりゃやけくそだ!」

アコーマンの両手から長いかぎ爪が出てくる。

アコーマン「切り刻んでやる!」
セレナ「それは私のセリフよ!」

セレナ、素早く剣を振り、バツ印の空気の刃を飛ばす。
刃が命中し、アコーマンの身体がバツ印に切断される。

アコーマン「この、俺が……にん、げん……なんぞに……」

アコーマンの肉片が血とともに地面にまき散らされる。

マーティ「よし! 勝ったぞ!」
セレナ「これで、一矢報いることができたかしら……」
マーティ「ああ。魔族に殺された人たちに少しは報いることができただろう」

マーティ、王都の方角を見る。

マーティ「ここからは反撃だ。奪われたものは取り返さなきゃな」
セレナ「うん。でも、お父様、死んでいった人たちは、もう取り返せない……」
マーティ「セレナ……」
セレナ「あなたは、あなただけは死なないでね」
マーティ「……ああ。絶対に死なないさ」

 *   *   *


〇南東の砦

市民たち、不安そうな様子で待っている。
分隊長B、そわそわしている。
城壁の上にいる兵士の一人、セレナがアコーマンを倒すのを目撃する。

城壁の上にいる兵士A「殿下が魔族の将を倒しました!」
分隊長B「なんだと!? 信じられん!」
城壁の上にいる兵士A「殿下が! 殿下が戻ってきました! 護衛の男も一緒です!」

城壁の上の兵士たち、歓声を上げる。
市民たちも歓声を上げる。

市民K「すげぇぞ! たった二人で魔族の軍団を倒すなんて! セレナ殿下万歳!」

市民たち、顔を合わせる。

市民たち「「セレナ殿下万歳! セレナ殿下万歳!」」
分隊長B「……せ、セレナ殿下万歳!」

ジョニー、エマ、立ち尽くしている。

ジョニー、モノローグ(魔族の部隊を撃退したのも、二人が無事だったのも、それはそれでいい。でも、二人のあの変化はなんだったんだ?)

グレアム、人間の姿に戻り物陰からジョニーの方を見ている。
ジョニー、振り返る。
グレアムがいなくなっている。

ジョニー、モノローグ(なんだ? 今強い視線を感じたような……)

 *   *   *

次回


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