大学教員の仕事「学務分掌」
今回は「学務分掌」についてお話ししたいと思います。
学務分掌
学校という組織では、授業などの本来の業務とは別に、学内全体に関わる仕事を割り振って担当します。
教員の方はわかるかと思いますが、学務分掌とは、いわゆる学内業務のことであり、小・中・高校でいうところの校務分掌に当たる仕事です。
この学務分掌は年度初めに学長や学部長から発表され、学部や学科の垣根を越えて業務が割り当てられます。
年度ごとに担当が変わる大学もありますが、多くの大学では2年周期で担当の改変が行われます。
この学務分掌は大学ごとに違うのですが、共通して存在する分掌もありますので、私の知る限りの分掌についてご紹介していきたいと思います。
学生委員会
まずは学生委員会です。
大学によっては学生生活委員会など、多少名前は変わるかもしれませんが、学生に大きく関わる委員会であり、どの大学にも必ずあると言える組織です。
学生委員会の業務としては、その名の通り、学生生活に関わる委員会であり、主に学内行事や奨学金の申請に関わる審議を行います。
学内行事については、新歓行事や学園祭など、学生が中心となる行事に予算をつけたり、運営スケジュールを確認したりといった業務があります。ただ、大学の規模が大きくなればなるほど、学生組織も大きくなり、学生課の職員もサポートしてくれるため、教員の役割としてはそれほど重くありません。
(逆に規模の小さな短大などでは、学友自治会の指導から学園祭の準備まで、全て教員が企画、運営を行います。)
奨学金の申請については、日本学生支援機構から借りている学生の成績を確認したり、学内奨学金の貸与が妥当であるかどうかの審議を行ったりします。
(奨学金というものは、基本的に学業に専念することを条件に貸与されますので、成績が落ちてきた、または一定基準に満たない場合は打ち切られてしまうのです。)
この辺は教員がフルに関わって審議を行いますが、年に数回あるかないかの審議ですので、こちらもそれほど重くはありません。
基本的に学生委員会という組織は若手教員が配置されることが多く、行事などにも駆り出されるため、どちらかというと「実働部隊」といった印象です。
学務のバランスにもよりますが、大学教員になったばかりの方は、この学生委員会に配置される可能性が高いということを知っておくと良いかもしれません。
教務委員会
教務委員会は全ての大学にある組織です。存在ない大学は私の知る限り聞いたことがありません。
教務委員会では、学内の授業やカリキュラムに関する業務に携わります。大学という場所は基本的に学業に専念する場所ですので、大学の根幹にかかわっている委員会といっても過言ではありません。
カリキュラム編成、時間割編成、クラス編成、シラバスチェック、ガイダンスの準備、授業方法、試験方法の検討など、授業に関わる全ての業務が降りかかってくるため、非常に大変な委員会であると私は認識しています。
学務分掌のなかでも1,2を争う業務量がある委員会ですので、基本的にベテラン教員が配置されることが多いです。
忙しいことで有名な組織ですが、最終的に決まるかどうかは別として、時間割やカリキュラムを編成する権限をもっているため、自分の考えを乗せて、学科や学部に提案することができるのは特権といえます。
入試委員会
大学には入試を経て入学しますので、入試委員会もすべての大学にある組織といえます。
入試委員会の説明はいらないかもしれませんが、その名の通り、入試全般に関わる業務を担います。
一般入試、推薦入試、総合型選抜、共通テスト利用型入試など、様々な入試において試験官を行ったり、試験を作ったり、採点をしたりします。
これは大学によるかもしれませんが、入試委員は基本的に各入試に参加する必要がありますので、土、日に出勤することもあります。
大学共通テストなどでは大掛かりな準備が必要となりますので、激務とは言えないものの、責任の重い委員会であることは間違いありません。
研究推進員会
研究推進委員会は、大学によってはないかもしれませんが、4年制大学であれば基本的に設置されているかと思います。
大学教員は研究者としての側面もありますので、研究成果を学内外に発表する責任を負っています。
そのため、学内紀要の編集や研究倫理に関する研修、学外助成金の獲得に関する研究会などを企画します。
学内紀要について触れておくと、紀要とは毎年発行される論文集のようなものであり、査読がない場合もあるため、学外の論文よりも気軽に投稿できる場となっています。そのため、毎年多くの先生方が投稿され、分厚い論文集が完成します。
現在はリポジトリといって、Web上にアップする形で統一している大学も多くなっています。
1年を通じて忙しいという組織ではありませんが、研究成果を学外に公表することは大学の名を高めることにもつながりますので、教員の研究意欲を高めるためにも、重要な委員会の一つと言えます。
自己点検委員会
自己点検評価委員会、という名前のほうが多いかもしれませんが、この組織もほとんどの大学にある組織といえます。
大学は「大学設置基準」に則って運営を行う必要があり、その運営が問題なく行われているのか学内でも点検する必要があります。
そのため、この委員会では法人、学内各所(学長から各種委員会)、学部、学科、など、それぞれの組織に昨年度の振り返りのようなもの(報告書)を提出してもらい、その報告書を基に各組織が健全に運営されているか確認、点検するというものです。
あくまで学内点検機関となりますが、大学には約7年おきに「認証評価」という学部評価が入ることとなっています。
認証評価の結果は公表しなければならないこととなっていますので、その際に問題が多数発生していれば、「この大学は問題ばかりだ」ということを公表しなければならないということになります。そうなると、言わずもがな学生募集などにも悪い印象を与えかねないため、日々、学内で点検を行う必要があるわけです。
各部署の報告書を丁寧にみる必要がありますので、個人的には結構重い業務だと思っています。少なくとも、点検業務には時間がかかるため、その他の委員会に比べても会議の時間が長くなりやすい委員会です。
以上が代表的な組織といえる委員会となります。
その他にもまだまだ組織はあるのですが、今回の記事はここで締めておきたいと思います。
続編をお待ちください。
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