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設備計画

一級建築士製図試験における「計画の要点等」について、当研究所では建築計画、設備計画、環境負荷低減、構造計画の4分野に分類しています。

今回は設備計画です。この分野は製図をする際にも必要となりますが、なかなか理解が進まない方が多い分野です。とにかくシンプルに学ぶため、余計な部分を省き必要最低限な知識としています。

まずは全体像を把握し、知識が定着したら少しずつ広げていきましょう。


この記事は令和4年度版です。最新版は下記になります。



出題傾向分析

近年、設備分野の出題は減少傾向にあります。省エネルギーに関する知識が求められるようになり、環境負荷低減分野の出題が多くなったためです。

設備分野の知識は記述だけではなく、製図にも必要な知識なため、基礎をしっかりと押さえましょう。

空調計画

空調計画は空冷ヒートポンプパッケージ方式だけでなんとかなります。

しかし、過去には空調方式を指定されることがありました。試験本番までには押さえておきたい空調知識を追加します。

熱源方式

空調方式は、大きく分けて熱源の位置で分かれます。一つの熱源に集中した「中央熱源方式」と、数か所の熱源に分散させた「個別分散熱源方式」に分かれます。

熱源方式による空調方式は以下の通りです。

[中央熱源方式]
単一ダクト方式(定風量型)
単一ダクト方式(変風量型)
ファンコイルユニット方式
[個別分散方式]
空冷ヒートポンプパッケージ方式(天井カセット型)
空冷ヒートポンプパッケージ方式(床置きダクト接続型)
空冷ヒートポンプパッケージ方式(天井隠蔽ダクト接続型)


単一ダクト方式

単一ダクト方式は外気を導入した空調機にて、熱源からの熱を空気に伝えます。熱が加えられた空気をダクトにて居室まで届けます。居室の空気は一部を空調機へ戻し、熱を再利用します。風量調整の可否によって方式が分かれます。


単一ダクト方式定風量型

単一ダクト方式の定風量方式はC AV(Constant Air Volume)方式と表されます。

中央熱源から空調機に熱を供給し、温湿度調整した空気をダクト経由で各室に供給します。風量は一定とし、給気温度を変えることで室温を調整します。負荷変動の少ない室、天井の高い大空間に採用されます。外気を取り入れ供給するため、換気設備は必要ありません。

熱源/屋外設置(地上、屋上)
空調機/機械室内設置
シャフト/PS、DS要
換気設備/換気機能あり
特徴/全館一体空調


単一ダクト方式変風量型

単一ダクト方式の変風量方式はVAV(Variable Air Volume)方式と表されます。

中央熱源から空調機に熱を供給し、温湿度調整した空気をダクト経由で各室に供給します。変風量ユニットにて、ゾーン毎に風量を調節することができます。低負荷時には換気用最小風量を確保します。負荷変動がある大空間個別制御が必要な会議室や研修室などで採用されます。
変風量ユニットを使用し、ゾーンごとに必要な風量だけを届けるため、定風量よりも省エネルギー性に優れます。単一ダクト方式では変風量が主流です。また、換気設備は不要です。

熱源/屋外設置(地上、屋上)
空調機/機械室内設置
シャフト/PS、DS要
換気設備/換気機能あり
特徴/個別温度制御可能


ファンコイルユニット方式

ファンコイルユニット方式(FCU)は熱源(空冷ヒートポンプチラー)からファンコイルユニットに供給し、冷温水コイルで空気に熱を伝えます。送風機によって空気を吹き出します。

空冷ヒートポンプチラー】空調機の熱源として利用されます。周囲の熱を汲み上げ利用することから、効率がよく省エネルギー性に優れた熱源です。冷暖房で利用する冷温水を一台で作ることができ、取り扱いも比較的簡単です。

ユニットごとに制御可能で、個別制御性に優れます。室内空気を循環させながら空調するため、別途、換気設備が必要となります。個別制御が必要な個室(店舗、病室、客室など)に採用されます。

熱源/屋外設置(地上、屋上)
室内機/室内、天井懐などに設置
シャフト/PS要(DS不要)
換気設備/別途必要
特徴/個別制御良好


ファンコイルユニット方式+外調機

ファンコイルユニット方式を採用する場合は、換気設備と併用する必要があります。多くの換気量を必要とする場合、外調機にて換気をします。組み合わせ例を以下に示します。


給気口

空調した空気を居住域に届けるため、給気口を使い分けます。特徴をまとめましたので理由を記述する際に参考としてください。

[アネモスタット型]アネモ型と呼ばれる吹出口で、天井に取り付けられます。コーン状の羽根から気流が広がります。中コーンを上下させることで気流を調整でき、幅広い分野で採用されます。
[ライン型]天井に設置される吹出口です。ライン状に幅広い気流を吹出すことができるため、ペリメータゾーンに使われることが多いです。
[ノズル型]天井や壁に設置される吹出口です。吹出し能力が高いので、天井の高い室(ホール、劇場、体育館など)で多くの採用されます。ノズルを調整し、吹出方向を変えることができます。
[パンカールーバー型]天井や壁に設置するノズル型吹出口の一種です。吹出口全体の向きを変えることができ、必要な所へ気流を届けることができます。厨房や工場などで多く使われます。
[ユニバーサル型]天井や壁に設置されます。吹出口だけでなく、還気用の吸込口としても使用されます。縦、横、格子状などの羽根があり、羽根の向きを変えることで気流を調整できます。

天井が高く広い部屋では、吹出し口、還気口の計画において、ショートサーキットコールドドラフトを防止するように計画します。

ショートサーキット】吹き出した空気をすぐに吸込み、狭い範囲で空気が循環してしまう状態。冷暖房が全く効かなくなります。
コールドドラフト】ペリメーターゾーンで発生する冷たい下降気流を指します。暖房で温められた空気が窓ガラスで冷やされ床面に下降し、室の上下で温度差が生じます。


居室の換気計画

集合住宅での換気経路について説明します。各居室は空調負荷を抑えるために熱交換しながら換気します。全熱交換器を使用して1種換気します。
キッチンでは油、水蒸気、風呂では水蒸気が発生するため、別途、3種換気します。

換気経路


空調計画問題

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