記述研究所のテキスト 09
基礎編
一級建築士製図試験における「計画の要点等」について、当研究所では建築計画、構造、設備、環境負荷低減の4分野に分類しています。
記述試験が本格的に出題されるようになった平成21年度からの過去問傾向を分析し、効率的な学習方法を考えていきます。
今回は「設備」です。この分野の知識は図面にも影響する重要な分野です。
近年の設問では、テンプレートを暗記するだけでは対応できなくなってきています。基礎的な知識を十分に理解し、引き出しを多くすることで自分のプランをしっかり説明できるようにしましょう。
出題傾向
過去の出題傾向を確認します。全記述問題のうち設備計画に関する設問だけを抽出して、この出題傾向をつかみます。
設問に(図)とある場合には、補足図の要求があった場合です。
必ず記入することを求められる(図:必須)と補足してもよいとされる(図:任意)に分かれます。
令和5年 図書館
令和4年 事務所ビル
令和3年 集合住宅
令和2年 高齢者介護施設
令和元年 美術館の分館 10/13
令和元年 美術館の分館 12/8
平成30年 スポーツ施設
平成29年 小規模なリゾートホテル
平成28年 子供・子育て支援センター
平成27年 市街地に建つサ高住
平成26年 温浴施設のある道の駅
平成26年 温浴施設のある道の駅 沖縄
平成25年 大学のセミナーハウス
平成24年 地域図書館
平成23年 介護老人保健施設
平成22年 小都市に建つ美術館
平成21年 貸事務所ビル
傾向分析
近年、設備分野の出題は減少傾向にあります。
社会全体が省エネルギーへシフトしたため、設備分野から環境負荷低減分野に移行しています。環境負荷低減分野を理解するためには、設備分野の知識が必須です。
過去の出題では、空調設備、給水・給湯設備を主に問われてきました。
近年はイラストを必須として、深い知識を問われています。
令和4年の事務所ビルでは空調方式、排煙方式を問われましたが、同様の課題である平成21年の貸事務所ビルと似通っています。
過去問を中心に基礎的な知識から、しっかり理解しながら習得することで、どのような問われ方をしたとしも、自分の設計思想を、自分の言葉でしっかり伝えることができるようにしましょう。
空調計画
空調方式を問われた際の選択フローを示します。
製図試験の大原則ですが、設計条件で空調方式が指定された場合には、必ず従います。守らない場合には、大幅の減点または失格となります。
個別空調の必要性により、単一ダクト方式(定風量型)かその他の方式に分かれます。しかし、省エネルギーが叫ばれる近年では、単一ダクトの場合は、定風量型の採用は少なく、ほとんどが変風量型となっています。
大空間が存在するかにより、居住域までしっかり給気できる方法を考えますが、部屋の形状により空調方式を選択します。
大空間が存在しない場合には、空冷ヒートポンプパッケージ方式天井カセット型またはファンコイルユニット方式を採用します。これらの方法は換気機能がないため、別途、換気設備を併用します。
単一ダクト方式定風量型
中央熱源から空調機に熱を供給し、温湿度調整した空気をダクト経由で各室に供給します。
風量は一定とし、給気温度を変えることで室温を調整します。負荷変動の少ない室、天井の高い大空間に採用されます。
近年は単一ダクト方式を選択する場合、省エネルギー性から変風量型を採用されることが多いため、定風量型の採用は減っています。