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用語集(建築計画)

この用語集は製図試験初学者が覚えておくべき記述関係の用語を説明します。「建築計画」「構造」「設備」「環境負荷低減」の4分野を分割して用意します。初めて製図試験を受ける方が覚えておくべき用語を選びましたが、基礎から再確認される方にとっても役立つように詳しく書いています。

この記事は「建築計画」です。課題発表後、テーマに応じて必要となる用語を追加する予定です。

施設使用者

施設を使う人々は、大きく分けて利用者管理者に分かれます。それぞれについて説明します。

・利用者

その施設を利用する「お客さん」です。設計製図の試験では利用者が快適に利用できるようにすることが第一目標となります。

・管理者

利用者をもてなしたり、施設の維持管理をする人達が「管理者」で、いわゆる裏方さんです。文字通り、お客さんからは見えない裏の部分によくいます。施設の従業員やスタッフ、設備を維持・点検する業者、食材や各種資材などを搬入する業者などが管理者側にあたります。

動線計画

動線計画とは、動線を考慮して建物内の各部屋を配置し廊下や通路を計画することです。動線計画は施設利用者の利便性に大きくかかわるため、施設設計の際に気を付けなければならないものです。

・動線

建物の中を人が移動する経路を線で表したものを動線といいます。また、動線はその動線を使う人の種別によって分類されます。設計製図試験では、施設利用者の動きを示す利用者動線と、管理者や業者の動きを示す管理動線(サービス動線)があります。

・動線の短縮

目的とする部屋までの動線が短くなるほど利用しやすい建物となります。関連する居室同士は、すぐに移動できるような明快な動線が必要となります。

施設利用する中で、一日に何度も利用する動線は極力、短くすることで利便性を考慮します。

・動線の明快さ

多くの人が利用する施設では、初めて利用した人でもわかりやすい計画とするため、単純なものとし、わかりやすいものとする明快さが求められます。

・動線分離

製図試験で計画する建物では、利用者(お客さん)、管理者(従業員、スタッフ等)、業者(設備点検、食材搬入)等、様々な人が建物を利用します。各動線が交わることがあると、利便性が低下したり、事故が発生する可能性が高まります。

例えば、利用者が玄関から目的の居室に到達するまでに、裏方である管理ゾーンを通るような計画はあってはいけません。

下図では、主出入口から入りレストランに向かう利用者と、通用口から入り厨房へ向かう管理者、業者の動線が交わってしまいます。

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管理者と利用者の動線は下図のように交わることなく分かれている必要があります。

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履き替えを考慮する

下履きで利用する部屋と上履きで利用する部屋がある場合、何度も靴を履き替えることがないように計画します。

下図の計画では、一階を下履き、二階を上履きで利用する部屋でまとめています。受付前で履き替えをします。履き替えが必要な場合には、なるべくシンプルになるように履き替え位置を設定します。利用者が移動するにしたがって、何度も履き替えることが無いようにします。

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ゾーニング

ゾーニングとは用途別におおまかに空間を分け、効率的に配置することで使いやすい建物とすることです。ゾーニングのポイントは以下のとおりです。

・利用者部門と管理者部門を分ける

利用者が利用する部屋と管理者が利用する部屋を分けて配置することで、それぞれが利用しやすいようにします。

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・階別に分ける(階別ゾーニング)

初めて建物を利用する利用者でも、目的とする部屋をすぐに見つけられるように階別にゾーニングします。(研修部門2階宿泊部門3階など)

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・利用時間帯で分ける

営業時間の限られた部屋がある場合、24時間利用の部屋と分けて計画することで、管理者が管理しやすいようにします。営業時間外は管理用ドアシャッターで区分します。

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・靴の履き替えの有無で分ける

上履きで利用する部屋と下履きで利用する部屋を、それぞれまとめて配置することで、靴の履き替え回数を少なくし、利用しやすいようにします。

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図の例では一階は下履きで利用する部屋を、二階には上履きで利用する部屋をまとめています。一階受付前で靴の履き替えをし、階段またはエレベーターにて2階に上がります。


アプローチ

アプローチとは、道路から敷地内を通り建物の出入口に到達するまでの経路のことです。アプローチのポイントは以下のとおりです。

・歩行者と車の経路を分ける

歩行者と車両の経路を分けることを歩車分離といいます。歩車分離することで、歩行者が安全に建物に入ることができます。また、前面道路に歩道がある場合には、車両進入のため歩道に切り開きを設けます。さらに、横断歩道、交差点、バス停と車両出入口は適切な距離を取る必要があります。

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・建物の主出入口を分かりやすい位置に設ける

初めて建物を利用する利用者でも建物に入りやすいように、分かりやすい位置に建物の主出入口を設けます。複数の道路に接する敷地の場合は、人通りの多い道路からアプローチを計画すると利用者がわかりやすい計画となります。

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・利用者と管理者の経路を分ける

利用者と管理者の経路を分けることで、それぞれが利用しやすい建物となります。出入口については、利用者用に主出入口管理者用に通用口をそれぞれ設けます。

敷地が複数道路に接する場合には、利用者と管理者を異なる道路からアプローチさせることで、利用者の利便性や安全を向上させることができます。また、管理者側の管理しやすさも向上します。

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・車寄せ、車回し

建築物の主出入口に近接して車寄せを設けます。車寄せは雨天時にも安全に利用できるように屋根を計画することが望ましいです。

車寄せまでの車路を車回しと呼びます。敷地内の安全性を考慮すると、通り抜け方式のものが優れています。

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・周辺環境

周辺環境とは敷地外の周辺道路や公園、建築物等のことをいいます。建築士試験では、施設と周辺環境を一体的に利用することが求められます。例えば、敷地の南側に公園がある場合、カフェやカフェテラスから公園の景観が見えるようにすることで、利用者が公園の景色を楽しむことができます。

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・屋外施設

屋外施設とは、敷地内に計画する施設のことをいいます。屋外施設には、駐車場、駐輪場、車回し、広場等があります。屋外施設は、利用者の利便性を考慮して計画するようにします。

・オープンスペース

オープンスペースとは建物内にある空きスペースや広場等のことをいいます。人通りの多い交差点に近接してオープンスペース(屋外庭園)を近接させることで、通行人が立ち寄りやすくなります。施設への集客性を高めることができます。

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また、日当たりのいい南側にオープンスペース(屋外庭園)を設けることで、利用者が快適な空間を楽しめます。公園に隣接させることで一体的な利用をすることができます。公園の景色を見ながらゆったり過ごせる空間となります。

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避難計画

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・二方向避難

火災が発生した際、居室から建物の外に避難するため、二方向の避難経路がなくてはならないということです。居室から避難するにあたって避難階または地上に通ずる直通階段、または避難上有効なバルコニーなどに向かう避難経路を二系統確保しておかなければなりません。

2階以上から避難する場合、利用者用階段と管理用階段のそれぞれの階段を利用して避難することが一般的です。

・重複距離

居室の最も奥まった箇所から直通階段までの二系統の避難経路において、各経路が同一である区間の長さを重複距離といいます。重複距離の長さは、直通階段に至る歩行距離の二分の一以下でなければなりません。

具体的には、耐火建築物で内装を不燃材料とした時は、重なる区間の距離が30m以下でなければなりません。

・歩行距離

歩行距離とは、 居室の最も奥まった箇所から直通階段までの二系統の避難経路 への距離のことをいいます。

具体的には、耐火建築物で内装を不燃材料とした時は、歩行距離が60m以下でなければなりません。

・無窓居室

無窓居室には、採光、換気、排煙、非難の4種類がありますが、避難計画を検討するうえでは採光が問題となります。各居室について、 採光上有効な部分の開口部面積居室床面積の1/20 となる場合、前述の重複距離と歩行距離が短くなるので、注意が必要です。

耐火建築物で内装を不燃材料とした時、無窓居室がある場合には重複距離が20m以下かつ 歩行距離が40m以下 としなければなりません。

・二直階段

二直階段とは、二方向避難の際に利用する二つの避難階段のことです。避難階段は耐火構造としたうえで、避難階までの直通階段とする必要があります。避難階とは、直接地上へ通ずる出入口のある階のことです。

・敷地内通路

敷地内には、屋外への出入口から道路や防火上有効な公園等に通じる有効幅員1.5m以上の通路を設ける必要があります。有効幅員であるため、柱芯からの距離ではないので注意が必要です。


防火区画

防火区画とは、火災発生時に火災が急速に燃え広がらないように、建物を区画することです。防火区画には面積区画と建物区画が含まれます。

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・面積区画

面積区画とは、耐火建築物または準耐火建築物で、延べ面積が1,500㎡を超えるものについて、1,500㎡以内に、床・壁を耐火構造(もしくは1時間以上の準耐火構造)で区画することです。

開口部には特定防火設備を設ける必要があります。鉄筋コンクリート造の場合、耐火建築物に該当しますので、1,500㎡以内に面積区画をしなければなりません。

・竪穴区画

竪穴区画とは、耐火建築物または準耐火建築物で、地階又は3階以上の階に居室がある建築物については、階段および吹抜けの部分とその他の部分を防火設備で区画することです。また、竪穴区画と面積区画を兼用する場合には、防火設備ではなく特定防火設備で区画します。

・延焼のおそれのある部分

延焼のおそれのある部分とは、隣接する建物等が火災になった場合、延焼する可能性の高い部分のことです。防火地域・準防火地域では、道路中心線もしくは隣地境界線からの距離が、1階で3m以内、2階以上で5m以内となる場合には、外壁の開口部に防火設備を設ける必要があります。

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・防火設備

防火設備とは、防火戸やドレンチャー(外壁のスプリンクラー)などの火炎を遮る設備のことをいいます。開口部に設ける網入りガラスや、開口部を遮るために設ける外壁、そで壁、塀なども防火設備に該当します。

・特定防火設備

特定防火設備とは、防火設備の防火性能を強化したもののことです。特定防火設備は1時間以上、防火設備は20分以上の遮炎性能が求めれらます。


セキュリティ

・セキュリティ

セキュリティの目的は、不審者の建物への侵入防止や盗難の防止です。また、利用者の安全を守るために監視することもあります。

セキュリティを高める方法としては、セキュリティゲートや監視カメラを設置する機械的な方法や、受付カウンターや事務室から入場者の出入りを管理する人的な方法等があります。監視カメラは不審者侵入防止だけではなく、施設利用者の異変を検知するためにも設置されます。

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・視認性

視認性とは、物や人を見たときの見やすさのことをいいます。階段の段差が分かりやすいように目立つ色にする、受付カウンターから利用者の出入を確認できるようにする等、視認性を考慮して計画することが重要です。

・BDS(ブックディテクションシステム)

BDS(ブックディテクションシステム)とは盗難防止システムのことです。図書館で貸し出し処理をしていない本を持ち出そうとゲートをくぐると、警報が鳴って、管理者が盗難に気づくことができます。製図試験では、図書室が要求された場合に、セキュリティを高めるためにBDSを採用することがあります。

バリアフリー

・バリアフリーとは

「バリアフリー」とは、「バリア/障壁」がないことを示します。この障壁を取り除く具体的な手法を「バリアフリー」としています。

・障壁の例と対策方法

段差、幅員不足
建物内の出入口、敷地内の通路は車いすで円滑に利用できるようにしなくてはなりません。出入口の幅を確保するとともに、前後のスペースも必要です。段差はなくすようにし、水勾配やスロープを用いて解消します。長いスロープには踊り場を設けます。

廊下幅員、手すり
車いす使用者の通行が容易なように、十分な有効幅を持たせます。手すりを連続させることで、利用者の安全にも配慮します。
また、高齢者が視認しやすいように、床と壁、踏面と蹴込の色を変え転倒を防止します。

エレベーター
出入口の幅、かごの大きさ、乗降ロビーは十分な大きさとし、車いす使用者の利便性に配慮します。また、操作スイッチ類については、車いすを使用する方だけでなく、目の不自由な方も利用しやすいように、位置の検討や点字による案内を確保します。

かごの中には鏡を設置し、車いす使用者の乗降に配慮します。エレベーターホールには車いすが転回できるスペースを確保します。

客室や住居の居室
出入口や室内の扉は十分な幅員を確保します。水周りに段差が生じないように、スラブ下げをします。部屋の中で車いすが転回できるスペースを確保します。ふろやトイレには手すりを用意し、利用者の安全に配慮するようにします。

また、スイッチ類については車いすを使用する方でも使いやすい高さに設置します。洗面台の下部にも車いす使用者に配慮したスペースを用意します。

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駐車場
車いすを使用する方や体が不自由な方のために、建物入口に近く、安全なルートを通れる位置に駐車場を確保します。また、車いすを使用する方が使いやすいよう、幅3500㎜以上を確保するようにします。


コンセプトルーム

コンセプトルームとは、設計条件を踏まえて自分で使い方を想定して提案する形の室です。使用方法設えについて問われます。

平成29年[小規模なリゾートホテル]、平成30年[健康づくりのためのスポーツ施設]で出題されました。また、令和元年[美術館の分館]では「室の設え」について出題されました。

設えしつら

「設え」とは過去の課題文にて「H30:インテリア、什器、設備機器等 H29:内装、什器、設備機器等」と注釈が書かれています。

内装や什器、設備などを示す言葉ですが、いきなり問われると戸惑ってしまうことがあります。令和元年の試験では注釈なく出題されていますので、当たり前の用語とされています。しっかり意味をつかんでおきましょう。


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