一人旅なんて、つまらない…?

「一人旅なんて、つまんないに決まってる!」

友人との飲み会で、私はこんな風に言った。

「だってさ、美味しいものを食べたら美味しいねって言いたいし、きれいなものを見たらきれいだねって言いたいじゃん!!」

一人旅派 vs 一人旅ありえない派 の戦い。

圧倒的に私は前者。

だった。あの頃は。

あの頃の私は、自分はなんでも知ってるようなつもりだったんだよね。一人旅なんてしたこともないのに、一人旅を否定したりして。でも、きっと心の奥底では、一人旅にあこがれていたり、でもちょっと寂しそうだったり。そんな気持ちがあったのかもしれない。

今までやったことのないことをやってみよう、という自分の中のキャンペーンが盛り上がっている時期があった。そんなある時、仕事を辞め、時間ができてしまった。時期的に、1週間も旅行に付き合ってくれる人もいない。それで、初めての一人旅に出ることになった。「はじめての一人旅なるものを、私もしてみむとてするなり」(紀貫之風)。否定していた一人旅に出ることになってしまった。

行先は、沖縄。でも、沖縄は何度か行ったことがあったから、メジャーな観光地は外した。一人だし、気楽に行ったことない場所に行ってみよう。そんな感じで、北部の国頭村と、南部を巡ることにした。車の運転は苦手なので、移動はバスとレンタルの原付。車もないし、本当に楽しく観光できるのか不安だったけれど、結論から言うと、めちゃくちゃ楽しい一人旅デビューだった!!

沖縄はご存じの通り、電車がほぼない。那覇市街のモノレールのみ。観光客はほとんどがレンタカーを借りて回ると思う。私は車を借りないと決めたので、まずはどうやって移動するか考えた。どうやら、那覇から国頭村までは、バスを乗り継げば行けるらしい。ふむふむ。そして、行きたいエリアで宿を探した。一人だし、民宿かゲストハウスか。すると、バスで行けそうな場所を発見。選べないので、ここに決定。この宿が、素晴らしい旅の始まりとなった。同じく、南部でも宿を探す。飛行機の関係で、最終日だけは那覇市内のホテルを予約した。

当日。飛行機、バス、バスと乗り継いで、夕方前には宿に着いた。その名も<やんばるくいな荘>という民宿。チェックインして、あたりをぶらぶら散歩。歩ける範囲には、小さな道の駅以外、何もない。その何もなさが、当時東京に住んでいた私には最高だった。

浜辺をぶらりと歩く。居心地のよさそうな場所を見つけ、座る。夕日を待った。カメラを構えて、写真を撮る。とても美しい夕日だった。一人でここまで来たな、となんとなく感傷に浸る。

と、「こんにちは。」とお散歩中のおじさまに声をかけられた。「こんにちは。」と返事し、おしゃべり。すると、「近くに住んでるから、飲みにおいでよ」と誘われた。宿の夕飯があるので、じゃあそのあとで、と連絡先を交換する。沖縄という文化もあるのだろうけれど、あぁ、一人旅って、人と出会えるんだな、と感じた。そして、そんな経験が、沖縄一人旅の間、毎日毎日続いた。

夕飯の時間。やんばるくいな荘では、夕飯用の小屋があり、そこですべての宿泊者が集まってご飯を食べた。私は3連泊。他の人たちは1泊ずつだったのっで、毎日、様々な宿泊者の人たちとお話をしながらご飯を食べた。バックパッカーだったというお兄さん。一番おすすめの国を聞くと、選べないけど、と言いつつタイがよかったと教えてくれた。ご夫婦で来ていた方は、当時話題となっていた辺野古を見てみようと思って来たことを話してくれた。普段はなかなか出会えないような人と、旅先では出会えると知った。毎晩、とても楽しかった。

もちろん、誘ってくれたおじさまのところへ飲みにも行った。おじさまの仲間が、泡盛や、鉄板で焼いたお肉をふるまってくれたり、カラオケに一緒に行ったりもした。たまに沖縄の言葉で何を言っているかわからない時もあったけれど、楽しかった。

さらに、この出会いは私の旅を広げてくれた。翌日、私は北端のあたりに行ってみたかった。バスを乗り継いで、必要なら歩くか、ヒッチハイクとやらを試みてみるか…なんて考えていた。本当はレンタルの原付を借りたかったけれど、この辺りにはそんなお店がない!そんな話をしたら、「ぼくの原付を使ったらいいよ。」原付を貸してくれた。バスで行けなくはないけれど、どうしてもバスだと行ける場所が限られてしまう。おじさま!救世主!ご縁に感謝。他のおじさまも、「休みだったら連れてってあげるんだけどねぇ。」と。ありがたや…!!

おかげさまで、自由に観光。素敵な場所を見つけては止まってみたり、かなり自由に楽しく観光できた。その上、返しに行くと、たんかんがたくさんあるから、と実家にたんかんを送ってくれた。このたんかんは、私が帰宅するより一足早く実家にたどり着いた。ありがとう、おじさま!!

そんな楽しい北部の旅で、もう一つ面白い出会いがあった。やんばるくいな荘に泊まっていた、バイクで旅をしていたお兄さん。聞くと、このあと南部に行くという。予定と宿泊先を話していると、なんと、数日後、南部の宿で一緒になることが判明!世界は小さいなと思った。「さようなら」ではなく「ではまた後日~」と言って別れたのは面白かった。

北部を満喫し、私も南へ向かう。来た時のようにバスを乗り継ぎ、さらに南下。この日泊まった宿で、私は沖縄に来て初めての一人きりの夕飯を食べた。後にも先にも一人での夕飯は、これ一度。一週間沖縄を旅して、この日以外は毎日誰かと夕飯を食べている。一人で来たのに、一人じゃない。一人旅って、不思議だ…。

南部は、「じぶんらしくのんびり過ごす」ことと、「平和学習をする」がテーマだった。今度はレンタサイクルのお店で原付を借りられたので、自由にあちこち観光。斎場御嶽、海のイスキア、ヨナグニウマの乗馬。存分に自分の時間を楽しんだ。そして、平和学習も。忙しく観光して、夜は〈やんばるくいな荘〉で会ったお兄さんと再会。この日は、宿のオーナーさんがたこ焼きパーティーを開いてくれたので、沖縄でまさかのたこ焼きを食べた。宿のオーナーさんが、大阪の修学旅行生に教えてもらったんだとか。この日も楽しい夕飯だった。

沖縄での初の一人旅。ふと一期一会という言葉を思い出す。

毎晩、たまたま宿で出会った人と談笑する。開店前のドーナツ屋さんは、「バスの乗り換え時間がもうすぐなんだけどドーナツが食べたい…」と伝えると、快くお店を開けてくれた。バス停では、地元のおばあに「一人旅なの?偉いわねぇ…」ととても褒められた。バスの車内で出会った別のおばあとたくさん楽しくおしゃべりして宿に戻ると、私宛にちんすこうと紅芋タルトが届いていた。那覇ではさすがに一人ご飯かな~と思いながら歩いていると結婚式帰りだという若者に「観光客?一緒に飲もうよ」と誘われ、泡盛を飲んだ。大好きなビールを飲もうとビアバーに行くと、偶然隣り合った観光客のお兄さんと盛り上がった。バスを待っていると「那覇に行くの?ついでだから乗せてってあげる」と逆ヒッチハイクされた。

初めての一人旅。

結果。

めちゃめちゃ楽しかった!!

百聞は一見に如かず。そして、百見は一度の体験に如かず。

一人旅派 vs 一人旅ありえない派。たった一度の経験で、180度考え方が変わった私は、一人旅推進派となった。

今度一人旅の話になったら、こう言おう。

「一人旅?寂しい?いやいや。

 楽しいからとにかく一回行ってみな!!!!!」

と。


これがきっかけで、私が一人旅にハマることになるのは、また別のお話。


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