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御社の「業務プロセス改善」はなぜ頓挫したのか?~第7回 組織文化はどう変える?~

第5回、第6回で触れてきた組織文化の重要性。業務プロセス改革を進めるためには組織文化の変革も求められる場合がありますが、具体的にどのような文化をどのように変えていったら良いのか、改めて考えてみたいと思います。

改めるべき組織文化の例

どんな組織文化が業務プロセス改革を妨げるのか、事例をいくつか紹介します。

同じ組織文化でも、良い面と悪い面の両面が表裏一体であることは紹介してきました。
ここでは、「新しいことに拒否反応を示す」や「やる前から否定的な意見を言う」などのすぐに分かることではなく、表面的には良い面として見えている組織文化の裏に潜むリスクを紹介したいと思います。

まず挙げられるのが、「みんな明るく元気で行動力がある」です。

こういう職場は、明るく活気があって、みんなが活発に意見を言い合いながら行動に移すなどの良い文化に見えますが、その裏に潜んでいるのは「然るべき権力を持つ人の決定に素直に従わない」というリスクです。
あくまでも現場の感覚として正しい意見を主張し、経営的な全体最適が理解できず、現場のやりやすいように解釈を捻じ曲げて現場独自の施策を進めようとしてしまったりします。
こうなると、本来トップダウンで行うはずの業務プロセス改善が思うように進まない事態に陥ってしまうのです。

もう一つは、「みんな素直で真面目」です。
先ほどの逆になりますが、上位の指示には従うものの、不平不満などの意見が出ることがなく何を考えているか分からない状態とも言えます。

余談ですが、とある会社のSWOT分析の強みの欄に「従業員が真面目」と書かれた事業計画書を目にしたことがあります。
その会社では、従業員が生産に関わる指示に対する作業はこなすものの、その他の改善活動などには全く興味を示さない会社でした。
創業者の会長から見れば、従順でちゃんと仕事をしてくれる従業員だったのでしょう。
ところが、代替わりして状況が一変しました。
引き継いだ女性社長は先代ほどのカリスマ性や指示の的確性はなく、従業員に対する指示が具体的でなかったため業務体制は崩壊してしまいました。
そして結果的に経営支援を受けることになったのです。 

「組織文化を変えたい」と思ったときに社長がやること

まず2つの前提を挙げておきます。
1つは、組織文化の悪い面と良い面は表裏一体であるため、悪い面を変えようと思ったら良い面が失われる可能性があること。
2つ目は、組織文化はそう簡単には変わらないということです。

組織文化が変わった例として代表的なのが、トップが交代したときですが、だからといって社長が簡単に変わるわけにはいかないでしょう。

それでは、組織文化を変えたい、少しでも矯正したい、と思ったときに社長はどうすれば良いのか。

一言で言えば、社長自らが率先して変わることです。
例えば、「みんな活発に意見を言う組織になってほしい」とします。
その場合には、社長は率先してみんなに笑われるような発言すると良いかもしれません。
ちなみに、これはソフトバンクグループの孫正義会長の手法です。
性格的に“ボケ”が苦手なのであれば、従業員の発言を笑いに変える“ツッコミ”を覚えると良いでしょう。

また、例えば「もっとみんなに挑戦してほしい」とします。
その場合、社長自らが何かに挑戦して失敗すれば良いです。
製造業においては、新しいオーダーメイド製品の受注を開始してみたものの全く注文がこない、自社商品を開発してみようと作ったが問題点だらけ、という失敗は、現場の負荷も少なくちょうど良いのではないでしょうか。
また今の時代であれば、TwitterやInstagramを社長がやってみてフォロワーが増えない、など、お金をかけずに簡単に新しいことに挑戦して失敗できることがあります。

変化をしようとするなら、失敗できる安心感(心理的安全性)も必要です。

心理的安全性の波及効果

自らが率先することが難しい場合、信頼できる右腕人材に権限を預けることも良い方法です。
自分が苦手なボケ役、ツッコミ役、現場のリーダー役など、変わりたい文化の要素を備えている人材にポジションを与え権限を与えます。

例えば、受発注システムを新たに刷新して業務不可を軽減したい場合、プロジェクトマネジメントを信頼できる人材に行わせる方法があります。
そして、社長が相談を受けることは良いが、判断については一切口出ししないことも大切です。

預けた権限の範囲内については何も口出しをしてはいけないし、本人がポジションを負担に感じて潰れてしまう可能性も考慮しなければいけません。
また、社長が望む業務改革が必ずしも実現できるとは限らない点には注意が必要です。

従業員に伝えること

「この会社のこういう組織文化はいいところだが、こういうところがあるから変えていきたい!」

トップがこのような宣言をすることはもちろん必要です。
変えたい文化とともに現在の強みの具体例を示すことで、従業員の行動を変えることを促します。

例えば、「休憩時間の終わりが13:00なのに、13:00まで休憩室にいて行動を始めるような文化は良くないから、13:00には仕事場にいるようにする」など具体的に示すと良いでしょう。

そして、社長自身もこの行動を実践しなくてはいけません。
従業員のモチベーションを大きく下げる原因の一つに「トップの言行不一致」があります。
口だけではなく行動で示すことも必要不可欠なのです。 

コンサルタントに依頼することは適切か

業務プロセス改革において、コンサルタントに依頼することは間違っていないと思います。
第三者の目線から意見を求めることも大切です。

しかしながら、コンサルタントへのプロジェクトの丸投げ、特に組織文化の改革に関する丸投げは絶対にNGです。

「現場の文化をこう変えてほしい」という依頼を受けることがありますが、基本的には弊社の努力だけではできないとお断りしています。
従業員が毎日意識する社長の言動が変わらないのに、月に数度しか来ないコンサルタントが何を言ったところで組織文化という染み付いたものはどうにもならないのです。

社長自身が変わらないのに、組織文化が良い方向に変わった事例はなく、むしろどんどん崩壊に向かっていく例が後を絶ちません。

コンサルタントはあくまでも相談役や助言を求めるための活用であって、決定権の行使や実行をする覚悟を行動で示すのは社長でなければならないのです。

組織改革がうまくいかない体制

組織文化の形成および業務プロセス改善の重要な要素に「情報格差」があることも事実です。

次回は、その情報格差とともにコミュニケーションの重要性について紹介していきます!

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