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スライムの化学

洗濯のりとホウ砂でスライム作りをやったことはあるでしょうか。
学校の理科の実験や、大学のオープンキャンパスなどでやっていますね。

それでは、実際に作って見ましょう。

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必要なものは洗濯糊ホウ砂、プラカップ(もしくは紙コップ)と割り箸があればOKです。着色する場合は、食用色素や水彩絵の具を用意してください(今回はインクジェットプリンターの詰め替え用インクを使いました)。
洗濯糊はドラッグストアやAmazonで購入できます。

洗濯糊はポリビニルアルコール(以下、PVA)という水に溶ける高分子の水溶液です。

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ポリビニルアルコールはこのようなシンプルな構造で、この構造式は[ ]内の構造がn個繰り返されているという意味です。洗濯糊に使われているのは、n=1500~2000程度ではないかと推測されます。

そしてホウ砂。これは薬局で購入出来ますが、Amazonでも購入可能です。ホウ砂はホウ酸とは違うので注意して下さい。ホウ砂は四ホウ酸ナトリウムという物質で、ホウ酸とは構造が異なります。

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ホウ砂とホウ酸を混同しているのをたまに見かけますが、毒性や取り扱いなどが異なっているので、間違えないように注意してください(ホウ酸でもスライムをつくる事はできますが、ホウ砂を推奨します)。

四ホウ酸ナトリウムは水に溶かすと、B(OH)4-というホウ酸イオンが生成します。このホウ酸イオンがポリビニルアルコール水溶液(洗濯糊)をゲル化させます。

まず、4%のホウ砂水溶液を作ります。
ホウ砂1gを25mlのお湯(50℃くらい。ぬるま湯だと溶けません)に入れてかき混ぜます。ホウ砂を目や口に入れないように注意してください。
ホウ砂が水に溶ける反応は吸熱反応のため、ぬるま湯がベストです。少し溶け残ることがありますが、そのまま使っても問題ありません。

次に、洗濯糊を20ml水を30mlプラカップに取り、均一になるまで混ぜて下さい(洗濯糊 : 水=2 : 3)。
色を付けるときはこのタイミングで入れます。
今回はライトシアンのインクを一滴入れました。

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洗濯糊にホウ砂水溶液を少しずつ入れながら、よく練り混ぜます。
一気に粘性が上がってゲル化します。

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作ったホウ砂水溶液を半分くらい加えると、やや固めのゲルになります。ホウ砂水溶液の添加量は好みで調整してください。もっと大量に作りたいときは、洗濯糊や水の量を2倍、10倍にするだけでOKです。手で混ぜるときは必ずビニル手袋やゴム手袋を着用して下さい。

出来上がったスライムは素手で触っても問題ありませんが、後で必ず手を洗って下さい。

ところで、今回の処方で作ったスライムは気泡がなかなか抜けません。
そのため、作ったスライムに水を30ml入れて混ぜます。
すると、流動性が増してよく伸びるようになり、気泡も一晩で抜けて綺麗になります。

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洗濯糊とホウ砂を使ったスライムは、下図のように、ホウ酸イオンがポリビニルアルコールの分子鎖を水素結合で繋ぐことで出来ています。

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ポリビニルアルコールの水酸基(OH)とホウ酸イオンの水酸基が橋架けされているんですね。
水素結合はあまり強い結合ではないため、この橋架けは自由に組み変わります。スライムが伸びる理由の一つです。

この架橋構造は、酸を加えることで崩れてしまいます。
試しに、クエン酸を少量(約0.2g)加えてまぜてみましょう(酢でも良いです)。

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段々と粘性が下がり、シャバシャバの液体になりました。
これは、ホウ酸イオンがホウ酸になり、ポリビニルアルコールとホウ酸イオンに架かっていた橋が外れたためです。

ここで、重曹(炭酸水素ナトリウム)を約3g加えて混ぜます。

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酸性水溶液に重曹を加えたため、二酸化炭素が発生して泡だらけになりました。
そのまま混ぜ続けると......

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再びゲル化しました!

重曹(炭酸水素ナトリウム)で酸を中和したので、ホウ酸イオンによる架橋が復活したんですね。


☆オマケ

夜光塗料を入れてスライムを作ると...


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怪しく光るスライムになりました。太陽光に当てるとよく光ってくれます!


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