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スライムの化学
洗濯のりとホウ砂でスライム作りをやったことはあるでしょうか。
学校の理科の実験や、大学のオープンキャンパスなどでやっていますね。
それでは、実際に作って見ましょう。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6862705/picture_pc_aedb7cfeea5f7527ce552bae873941a9.jpg)
必要なものは洗濯糊とホウ砂、プラカップ(もしくは紙コップ)と割り箸があればOKです。着色する場合は、食用色素や水彩絵の具を用意してください(今回はインクジェットプリンターの詰め替え用インクを使いました)。
洗濯糊はドラッグストアやAmazonで購入できます。
洗濯糊はポリビニルアルコール(以下、PVA)という水に溶ける高分子の水溶液です。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6862714/picture_pc_df42043426c71363296626a5036fe013.jpg)
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6863492/picture_pc_fc99e85b7c370f927a8c9f68b8635106.jpg)
ポリビニルアルコールはこのようなシンプルな構造で、この構造式は[ ]内の構造がn個繰り返されているという意味です。洗濯糊に使われているのは、n=1500~2000程度ではないかと推測されます。
そしてホウ砂。これは薬局で購入出来ますが、Amazonでも購入可能です。ホウ砂はホウ酸とは違うので注意して下さい。ホウ砂は四ホウ酸ナトリウムという物質で、ホウ酸とは構造が異なります。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6862729/picture_pc_eb7326ba7929fe3039ed63afc4f3f88e.jpg?width=1200)
ホウ砂とホウ酸を混同しているのをたまに見かけますが、毒性や取り扱いなどが異なっているので、間違えないように注意してください(ホウ酸でもスライムをつくる事はできますが、ホウ砂を推奨します)。
四ホウ酸ナトリウムは水に溶かすと、B(OH)4-というホウ酸イオンが生成します。このホウ酸イオンがポリビニルアルコール水溶液(洗濯糊)をゲル化させます。
まず、4%のホウ砂水溶液を作ります。
ホウ砂1gを25mlのお湯(50℃くらい。ぬるま湯だと溶けません)に入れてかき混ぜます。ホウ砂を目や口に入れないように注意してください。
ホウ砂が水に溶ける反応は吸熱反応のため、ぬるま湯がベストです。少し溶け残ることがありますが、そのまま使っても問題ありません。
次に、洗濯糊を20ml、水を30mlプラカップに取り、均一になるまで混ぜて下さい(洗濯糊 : 水=2 : 3)。
色を付けるときはこのタイミングで入れます。
今回はライトシアンのインクを一滴入れました。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6862949/picture_pc_75668ee7fae02e52d3a43447c0ef475a.jpg)
洗濯糊にホウ砂水溶液を少しずつ入れながら、よく練り混ぜます。
一気に粘性が上がってゲル化します。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6862950/picture_pc_c4ba63831ac8492f7c23ede677c59107.jpg)
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6862958/picture_pc_4574f6ae631e79f12bca00560888de76.jpg)
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6862963/picture_pc_36798299d02f7b47c7798cf04865161b.jpg)
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6864844/picture_pc_e35a737e99055035c7878f6a3c2ce2c8.jpg)
作ったホウ砂水溶液を半分くらい加えると、やや固めのゲルになります。ホウ砂水溶液の添加量は好みで調整してください。もっと大量に作りたいときは、洗濯糊や水の量を2倍、10倍にするだけでOKです。手で混ぜるときは必ずビニル手袋やゴム手袋を着用して下さい。
出来上がったスライムは素手で触っても問題ありませんが、後で必ず手を洗って下さい。
ところで、今回の処方で作ったスライムは気泡がなかなか抜けません。
そのため、作ったスライムに水を30ml入れて混ぜます。
すると、流動性が増してよく伸びるようになり、気泡も一晩で抜けて綺麗になります。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6863060/picture_pc_5551ab9524563dd2f01e0afc26d11978.jpg)
洗濯糊とホウ砂を使ったスライムは、下図のように、ホウ酸イオンがポリビニルアルコールの分子鎖を水素結合で繋ぐことで出来ています。
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13380902/picture_pc_86f1629f1681bd6a4b95db6b0c03048a.png?width=1200)
ポリビニルアルコールの水酸基(OH)とホウ酸イオンの水酸基が橋架けされているんですね。
水素結合はあまり強い結合ではないため、この橋架けは自由に組み変わります。スライムが伸びる理由の一つです。
この架橋構造は、酸を加えることで崩れてしまいます。
試しに、クエン酸を少量(約0.2g)加えてまぜてみましょう(酢でも良いです)。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6863560/picture_pc_3036ab3ed4221894a3e79d1e415e8198.jpg)
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6863561/picture_pc_b9f6a32681fe8f5acfb1a52fb4aafe81.jpg)
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6863564/picture_pc_22e9afb104f102324d9d8af431be1757.jpg)
段々と粘性が下がり、シャバシャバの液体になりました。
これは、ホウ酸イオンがホウ酸になり、ポリビニルアルコールとホウ酸イオンに架かっていた橋が外れたためです。
ここで、重曹(炭酸水素ナトリウム)を約3g加えて混ぜます。
![画像15](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6863763/picture_pc_7f68870c2882e8ad36f20f4b7a1e85be.jpg)
酸性水溶液に重曹を加えたため、二酸化炭素が発生して泡だらけになりました。
そのまま混ぜ続けると......
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6863769/picture_pc_e6228f3eeb9ca766d320014b90ad8130.jpg)
再びゲル化しました!
重曹(炭酸水素ナトリウム)で酸を中和したので、ホウ酸イオンによる架橋が復活したんですね。
☆オマケ
夜光塗料を入れてスライムを作ると...
![画像17](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6863864/picture_pc_9c46d944917852d85e5142378a48c4bf.jpg?width=1200)
怪しく光るスライムになりました。太陽光に当てるとよく光ってくれます!
読んでいただけるだけでも嬉しいです。もしご支援頂いた場合は、研究費に使わせて頂きます。