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ゼラチンの濃度とゲル

ゼラチンは繊維状タンパク質を加熱することで作ります。
人類史上、最も長い歴史を持つ材料の一つです。
ゼラチンを熱湯で溶かして冷やすとゲル化します。
誰もが一度は目にしたことのある現象だと思います。

ゼリーやグミ、煮凝りはゼラチンでできたゲルの代表です。

ゼラチンは熱湯にとても溶けやすいため、10%を超える高濃度でも溶かすことが出来ます。
濃度が違うとゲルの状態はどう変わるのか、やってみます。

まずは5%。

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スプーンで軽く混ぜただけで溶けました。
簡単に溶けますね。
作った水溶液はシリコーンの型に注ぎ、冷蔵庫に入れて冷やします。

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続いて、10%。
このくらいでも、数分間混ぜれば綺麗に溶けます。
火傷に気を付ければ、小さな子でも簡単に溶かすことが可能です。

そして20%。
ゼラチンがいくらお湯に溶けやすいと言っても、
20%にもなるとスプーンで混ぜて溶かすのは大変です。
塊を潰しながら根気よく混ぜます。

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10%よりずっと溶かし難いですが、それでも手攪拌で溶かすことができます。
水に溶ける高分子で、10%を超える高濃度の水溶液を作るのは大変です。
加熱しながらスクリューなどで混ぜる必要があります。
ゼラチンが如何に溶かし易いかが分かりますね。

40%の水溶液を作るのは大変です。
最初は、ゼラチン粉末にお湯を浸透させるような感じに見えます。

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それでも、混ぜていると粘性の高い水溶液になっていきます。
流石に手で混ぜるのは大変なので、ホットスターラーを使いましたw
加熱しながら数十分混ぜることで、なんとか綺麗に溶かすことが出来ました。

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やはり40%は大変ですね...

とはいえ、水に溶ける高分子で10%以上の水溶液を作るのは困難です。
20%でも、特殊な機器を使わずに溶かせるわけですから、いかにゼラチンが水に溶け易いかが分かります。

それぞれのゼラチン水溶液を冷蔵庫に入れて一晩冷やした後、取り出します。

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シリコーンの型に注いで固めれば、簡単に取り外すことが出来ます。
当然ですが、色はゼラチン濃度の高いものの方が濃いですね。

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できたゼラチンゲルの柔らかさを見てみましょう。

5%はとても柔らかいです。
押すと簡単に変形します。
10%も5%とあまり変わりません。
5%より硬いものの、軽く押すだけで変形します。

5%と10%は、市販のゼリーのような食感ですね。
簡単にかみ砕くことが出来ます。

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ナイフで切るのも容易です。
脆いので、手だけで粉々に砕くことも可能ですね。

では、20%はどうでしょうか?
この濃度になると柔軟性が乏しくなります。
軽く押した程度では変形しません。
20%は日本で市販されているグミの硬さですね。
よく噛まないと小さく砕くことが出来ません。

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ナイフで切ることもできますが、5%と10%のようにスムーズに切るのは難しいです。

40%はかなり硬いです。
強く押してもほとんど変形しません。
噛み切るのにかなりの力が必要です。
言われないとゼラチンのゲルだと分からないくらい硬いです。
実は、欧米で販売されているグミはこのくらいの硬さのものが多いです。

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ナイフで切るのも難しく、切れ目を無理やり引っ張ることでようやく割ることが出来ました。

こんなに硬くても、熱を加えると溶けて液状になります。
ナイフで切ることも難しいのに、加熱することで段々溶けだしていき、最後はドロドロの液体になります(いわゆるゾルですね)。

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もちろん、冷やすと再び硬いゲルになります。
これは、ゼラチンのゲルが弱い結合で出来ているためですね。
水素結合や静電気的引力などでネットワークを作っているため、熱を加えることで結合が切れてしまい、ネットワークが崩れるんです。
そのため、加熱すると液状になってしまいます。

実は、20℃程度の水に漬けておくだけでも、ゼラチンのゲルは溶けます。
水が少しずつゲルの中に浸透し、ゲルは膨らみます。
徐々にネットワークが緩くなり、バラバラになるんです。
時間はかかりますが、水に漬けるだけでも溶けます。

溶かし難い上にとても硬いので40%はお勧めしませんが、
20%なら手で混ぜるだけで出来るので、興味があったら挑戦してみて下さい。
*ジュースや果汁、砂糖などを加えて溶かすときは、水だけの場合よりも少し溶かし難くなるので、そのつもりで作ってください。



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