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ライムスターがライブしにやってきた話

ライムスター結成が89年、1stアルバム『俺に言わせりゃ』をリリースしたのが93年。2年後の95年に2ndアルバム『エゴトピア』をリリースして
その頃京都にライムスターがやってきた時の話。

皆がクラブイベントや日本語ラップのライブ初体験がどんな感じだったのか、地方都市京都のクラブで、当時のオレがライムスターから受けた
『日本語ラップの洗礼』はこんな感じだった。

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1995年10月27日の金曜
場所は京都の祇園にあったクラブ『COCONUT GROOVE』
オレが日本語ラップを聴き出して1年経ったぐらい。
で、クラブへ遊びに行き出してまだ間もない頃の話。

その頃よく行ってた河原町にあるリバーサイドレコードで、たまたま目に付いたフライヤー。
イベント名は『MAKE A MUSIC』でスペシャルゲストにライムスター、DJはMASAYUKIとGOSSY

その年の6月に2ndアルバム『エゴトピア』をリリースしてのツアーで、各地方を回っていたライムスターが今度京都にライブに来るらしい。
場所も知ってるクラブやし日本語ラップのライブに初めて行ってみようと思った。

この時のオレは日本語ラップ聞き始めて一年ぐらいで、京都のタワレコ(今はマンションなってるけど当時あった蛸薬師ビブレの上に店はあってCD売り場面積は京都で一番だった)で日本語ラップコーナーを片っ端から買って聴いてた。
今と違って日本語ラップのコーナーは店の売り場の
ほんの極々一角に2~30枚ほどしかCDが並んでなかった。
要はマイナージャンルで需要も少ないから扱いも小さかった。

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当時のオレは正直ライムスターはそれほど好きなグループじゃなかった。
1stの『俺に言わせりゃ』のナンパな内容がどうも違うなーと思って2ndは買っていなかった。どちらかといえば1stアルバムを聞いただけだった当時のオレはライムスターのやってる音楽はダサいと思っていた。
(この後見に行くライブでそれが全部覆ることになり、オレはライブの次の日に2ndアルバムが聞きたくてタワレコへ買いに走ることになる。)

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この頃買ったCDで一番聞いてたのは確かキミドリの1STやったと思う。
友達はA.K.I Productionを一番聞いていた。
もちろん普通に?前後にリリースされたペイジャー、ギドラ、四街道、ナオヒロックとかも好きでよく聴いてた。

オレにとってラッパーが出るクラブイベント自体に行くのがこの日が初めてで、日本語ラップのライブを生で観るのもこの日が生まれて初めてやった。

音楽のライブに行った経験といえば中学の頃に
父親に連れて行ってもらった大阪城ホールの長渕のライブ以来。
日本語ラップのライブにはどんな客が来るんやろなーとかみんなどんなノリで盛り上がるんやろなーとか不安もありつつドキドキしながら当日を迎えた。

フライヤーのイベント時間が21:00~オールナイトになってるし、友達と21時に待ち合わせてクラブへ。

中に入るとフロアには客が3人ぐらいしかいなかった。まぁライブ開始までにはもっと来るだろうと思っていた。
ライブは22時ぐらいから始まんのかな、
と思たんやけど22時になってもその気配なし。

クラブイベントに行き慣れてる人からすれば知ってて当たり前の話だが、クラブのライブって0時前後とか0時回った深夜にスタートする事が多いけど、この時のオレはクラブイベント初心者でそんな事知らんから21時とっくに過ぎてんのに遅っそいなーとか思いながらカシスソーダー飲みつつソファーに座ってひたすら待ってた。

んで日にちまたいで0時過ぎ。
その時間になっても客は俺ら入れて6人ぐらい。
フロアはキャパからすると6人だけだとガラガラだった。

DJのクラブプレイから20世紀のイントロが流れてきた。

『準備出来てんのか!京都のB-BOY!』

マミーDの掛け声で待ち続けたライムスターのライブが始まった。

今でこそお馴染みでお約束のあのコール
『ライムスターがライブしにやって来た!どこに来た?○○!』
のコールアンドレスポンスからスタート。

なんやけど、この時ライブに来てた客は誰もその流れを知らんから、棒立ちでシーンとするフロアの客とオレ。

今でこそEXILEのライブでもセイホーォゆうたら客はホーオって返すやろけどこの当時、95年のまだ日本語ラップが一般に浸透して無い時代、ましてやヒップホップ未開拓地の地方都市京都でコールアンドレスポンスの概念が無かったオレ(と他の客)は、
ライムスターのコールに何をしていいのか全く判らなかった。

MCシロー(現在の宇多丸)が
『お前等全然解ってねーな!ヒップホップのライブは突っ立って聴くもんじゃなくて一緒に参加すんだよ!』

『いいか?ラッパーがステージから投げかけたら客は応えるんだよ!』
とコールアンドレスポンスが何たるかを1から10まで手とり足とり教えてくれた。

今から思えばちょっと恥ずかしくておかしい話やけど、冷静に考えて日本っていう島国の京都に生まれてごく普通の家庭で普通に生活してきたオレにはヒップホップもクラブもラップのライブも、ましてコールアンドレスポンスなんか知らん訳で。

教科書にも雑誌にもテレビにもCDにもそんな事出てきた事ないし、今みたいにネットも普及してる時代じゃないから知らなくて当然だった。

一通りシローとマミーDからやり方を教えてもらってから
『もう一回登場からやり直すから、次は教えた通りやるんだ解かったな!』
と一回はけるMCシローとマミーD。

また20世紀のイントロが流れてライムスターが再登場。声をだしてコールアンドレスポンスに応える客とオレ。けどまだ緊張で声が小さくてぎこちない。

シローが『声が小せぇ!お前等キンタマついてんのか?』
と痛烈にダメ出ししてもう一回。
『この瞬間京都でここが一番盛り上がってる場所に出来るかは、
お前等次第なんだぜ!!』

みたいな事をいって客をあおったり。

ココナッツグルーブに行った事ある人は知ってるやろけど、このクラブはそんなに広くないうえにこの日のライブは客が少ない事もあって、ライムスターがステージから降りてフロアの客と同じ高さでマイクを握ってライブをしてた。

段差なしの距離1メートル無いぐらいの
ライムスター3人から客(全員で6人)への熱いレクチャー。

こんなやり取り(ダメ出し)とやり直しが何回かあって5回目ぐらいの20世紀。人間5回もやれば流れも掴めて声も出るようになりコールアンドレスポンスも成功してやっと盛り上がるライブ。

やっとヒップホップのライブっぽく盛り上がった後、
『やれば出来んじゃん』とマミーD。
ただ歌を突っ立って聴くんじゃなくて掛け合いによって生まれる一体感。ラッパーと客が一緒にライブを作り上げていく感じ。

何もかもが新鮮で、経験した事のない面白さと楽しさをライムスターのライブで味わった。

曲の間のMCでシローが
『オレらが今ライブで地方を回るのはライムスターを知ってもらう為もあるけど、もっと色んな奴にヒップホップを広く知ってもらいたいからライブして回ってるんだ。ヒップホップは面白いし、お前らももっと周りの奴を巻き込んで広げていってくれよ。今は小さいかもしんないけど、もっともっとデカくなる音楽だと俺らは思ってるからさ。』
みたいな話をしてた。

それぞれの地方でヒップホップが盛り上がるように種をまきに来たとか、これからラップを始める奴らは頑張って欲しいし、周りの奴らはそういう奴をサポートしてそれぞれの地方で盛り上げて欲しい。みたいな事を話してた。
オレらもいいと思ったらフックアップするからデモを渡してくれとも。

実際ナイトフライトのデモトピアってライムスターが担当してたコーナーで、地方回りして見つけたラッパーのデモ音源とか流して紹介してたもんな。

今ではワンマンで武道館うめるぐらいのアーティストになったライムスター。あの時いってた通りヒップホップも広がっていって今ではメジャーな音楽になった。

オレの日本語ラップのライブ初体験はこんな感じだった。CDやレコードを家で聴いてただけから、日本語ラップのライブの面白さを知った日。今から思えば初めてのライブがライムスターで良かったなぁと思う。
先にも書いたけど、このライブに完全にやられたオレは次の日にタワレコへライムスターの2nd『エゴトピア』を買いに走ったし、京都にライムスターがライブしにやってくる時は全部見に行った。
あの一体感を味わうために。

そのあと色々な日本語ラップのライブを数多く観てきたけど、ライムスターのライブはやっぱり一番楽しめるし、正にキングオブステージやと思う。

その後は初めて日本語ラップに興味持って、一度ライブが観たいゆうた人にはまずはライムスターのライブに連れていくねんけど、一回もハズレ無いもんな。連れて行った奴みんなが満足して楽しかったからまた行きたいってゆう。

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そういえばR-RATEDの首謀者、マグマのRYUZOが1stアルバム『DOCUMENT』リリースした時Amebreakのインタビューで、ライムスターが京都に来た時の事を話してんねんけど

『その頃RHYMESTERが京都に来たのかな? 客が5〜6人しかいない中で抜群のライヴをして、そこで日本語ラップの洗礼を受けましたね。その頃にMAGUMA MC'Sを始めたんだと思います。』

って同じく客がガラガラやったライブの事ゆうてたけど、もしかしてこの日RYUZOもこのライブ観に来てたんかもな。

RYUZOみたいにライムスターの洗礼が引き金になって、ラップを始めたヤツは全国他にもいただろうし、この体験がオレが日本語ラップにのめり込む引き金になったのは言うまでも無い。

という訳でヒップホップに興味持ったり日本語ラップ生で観てみたいって人は、一番最初に行くならライムスターのライブがお勧めとかいっとく。

この何週か後にもココナッツグルーヴには、キングギドラやマイクロフォンペイジャーがライブにきてたんやけど、オレはどっちも仕事で行けんかった。
今から思えばギドラとペイジャーのライブは貴重やし、マジで仕事休みとってでも行っとけば良かったなとちょっと後悔してる。

YOUTUBEやフリースタイルダンジョンでライブやバトルを見るのもいいけど、クラブやイベントで体験する生の日本語ラップのライブやバトルはまた違う感動や面白さがあると思うんで、これ読んで面白そうやなと思った人は是非現場にも行ってみて下さい。

↑ここまでが5年前にブログに書いていた内容なんやけど(一部加筆と修正)
DJ GOSSYのnoteでこのイベントを企画してライムスターを京都に呼んだのがDJ GOSSY本人で、この時のことやマグマ結成秘話についての真相がかかれていて、やっぱりこの日を切っ掛けにあの京都のマグマが結成したのは事実だった。
ここからマグマがこの後京都だけでなく
関西のヒップホップに火をつけていくことになる。(続く)

#ヒップホップ #日本語ラップ #ライムスター #音楽 #music #日記

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