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盆踊りの音ほど耳に残るものはないって

やぐらの中心から響き渡る夏の音。ひとたび聞けば、甲高い笛の音が耳の奥に絡みつき、太鼓のリズムが胸を打つ。音が止んでも、身体の中で永遠に音楽が流れている錯覚さえ感じた、あの夏の音。

私は盆踊りが大好きだ。

やぐらを取り囲むおっちゃんたちに促され、最初は恥ずかしがりながら加わって、一年ぶりのはずなのに、手足は勝手に動き出す。普段静かな同級生も、あこがれの先輩も、厳しくて苦手な先生も、隣の家のおばちゃんも、話したことのない大人たちも、みんなみんな、決してかっこいいとも可愛いとも言えない動きで回り出す。大きな円が何重にも重ったころには、一番やぐらに近い円で踊る自分を何だか誇らしく思う。

そんな愉快で温かな盆踊りの思い出を胸に抱いたまま、大学4年間と社会人1・2年目は、残念なほどに盆踊りと縁遠い生活をしてきた。

ちょうど3年前の夏、「恵比寿駅前盆踊り大会」に出会うまでは。

当時働いていた会社のオフィスが恵比寿に移動した年、街のいたるところに張られたポスターを見て、私は出会ってしまった。

一度でも参加したことのある人はお気づきかと思いますが、「恵比寿駅前盆踊り大会」での盆踊り、めちゃくちゃに難しいです。種類もたくさんあって、すごく現代的で楽しい振りながら、盆踊りらしさはしっかり残っていて、その難しささえも癖になるような、大変魅力的な振り付けです。

それもそのはず、舞踊家の西川瑞泉先生が、現代的なアレンジを加えて付けてくれた振りなんだそう。

その魅力的な盆踊りに魅せられて、リベンジを誓った3年前。なんだかんだと理由をつけて、2年が過ぎてしまい、そのことを今は悔やむばかり。

悔やんでいても仕方ないと思い、次回に備えてYouTubeを見ながら闇練を重ね、なんと3種類踊れるようになりました!わーい!!

でも結局、どんなに完ぺきに踊れていても、全然踊れないのに円に加わって「よーお、ッポン」と手を合わせるあの一体感には敵わない。

立場も出身も年齢も忘れて、みんなで回って手を合わせる、盆踊りの夜を思い描いて、今はただただ頭の奥で鳴り響く音に耳をすませる。

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