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戦後日本政治史 占領期から「ネオ55年体制」まで

 永田町では解散風が吹き荒れている。自民党と公明党の対立が激化しているため、解散は先送りされるとの観測もある。しかし、いつ選挙があろうが、現在の野党の体たらくを見れば、与党の勝利は揺るがないだろう。自民党が万年与党化し、立憲民主党が万年野党化している昨今の状況は、55年体制を思い起こさせる。

 本書はイデオロギー対決という観点に基づき、戦後政治史をたどっている。戦後、自民党と社会党は憲法や防衛政策をめぐって激しく対立したが、これが著者の言うイデオロギー対決だ。その上で、著者は日本の政治が「再イデオロギー化」していると捉える(本書217頁)。

 冷戦終結によってイデオロギー対決は時代遅れになったと言われてきた。しかし実際問題として、いま政界では憲法や防衛政策などが再び争点となっている。

 たとえば、第二次安倍内閣が取り組んだ憲法改正や集団的自衛権の解禁は激しい対決を呼び起こしたし、小池百合子東京都知事は希望の党を結成する際、安保政策や憲法観の一致しない議員を排除した。そこで生まれた立憲民主党もまた、共産党との共闘をめぐって大きく揺れている。消滅したと思われていたイデオロギーは、その後もしぶとく生き残っていたということになるのだろう。

 こうした状況を踏まえ、著者は今日の政治体制を「ネオ55年体制」と呼ぶ。55年体制時代は、圧倒的に強い右派政党の自民党が政権を取り続け、それと対峙する社会党が平均的な有権者から見て極端な左派路線に傾斜していた。いまも社会党が立憲民主党に変わっただけで、その状況は変わらない(282頁)。

 では、どうすれば55年体制的状況から脱せられるのか。主に憲法をめぐるイデオロギー問題が争点である以上、憲法問題を解決しない限りそれは不可能だというのが本書の結論である(292頁)。

 「台湾有事」が叫ばれるいま、55年体制を終わらせることが良いかどうかも含め、本書から学べることは多いと思う。(編集長 中村友哉)

『月刊日本』2023年7月号より)

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書 籍:戦後日本政治史 占領期から「ネオ55年体制」まで
著 者:境家史郎
出版社:中央公論新社


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