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元家族が家を出て行きました

今日引っ越し業者が来て、元家族のみんながこの家から出て行きました。
今年の1月から今日まで約4か月間、一緒に住んでいた元家族と、本日完全に袂を別つことになりました。

覚悟はしていたけど、喪失感がすごい。

大きな大きな何か。
とっても大切な何か。

おれはそれを今日、失ってしまった。

3年前の夏に離婚したけど、
おれは自分の持ち家を元家族に貸していた。
おれは警備会社に就職し、そこの寮で2年2ヵ月暮らしていた。

その2年2ヵ月の間も、
おれは元家族に支えられていた。

元家族は、おれになにもしてくれない。
なにもしてくれないんだよ。

でも、おれは自分が元家族に家を貸してあげているということを、ひそかに誇りに思っていた。

みんなの役に立っていること。
みんなを助けていること。
おれが会社の寮に出て行ったから、みんなの暮らしが守られた。

おれはそのことがとても誇らしかった。
その誇りが、おれのことをずっと支えてくれていた。

今日、みんなを完全に家から追い出すまでは。

みんなとつながっていること。
みんなの役に立っていること。
それがおれのことを支え続けてきた。

たとえ元妻が、子供たちが、
おれになんのご褒美もくれないとしても。

彼らに無視され続けていたとしても、
「それでもおれはみんなの役に立ってる」
そう思うことでおれの心はなぐさめられてきた。

その誇りや慰めが、
いま、さっき、
すべてなくなってしまった。

おれはもう、元家族のことを支えていない。
おれはもう、元家族の役に立っていない。
おれは今、誰のことも喜ばせていない。

元家族の存在が、おれにとってとてもとても大きかったことを、今感じている。うしなったものは、とてつもなく大きい。

絶望を感じている。
あんな大きなものの代わりになるようなものを、おれはこの先の短い生涯で見つけられるだろうか。おれはとんでもない間違いを犯してしまったのではないだろうか。


でもなゲンドウ、落ち着いて考えてみよう。


この世界にあるものは全部借り物だ。
借りている。
命も、時間も、家も、お金も、家族も、仕事も、
みんなそう。

おれの持ち物なんてないんだよ。
死ぬ時には、すべて耳をそろえて返さなきゃいけない。

でもそれはおれだけじゃなくて、
すべての人間がそうだろ?

あの世には思い出しか持っていけないんだ。

家も、財産も、時計も、車も、家族も、友達も、恋人も、仕事も、地位も、名誉も、あの世には持っていけない。

いつか必ず、別れのときがくる。
借りていたものを返さなきゃいけないときがくる。


今日がその日だった。


おれは今日、そんなかけがえのない大切なものを、神様に返した。

元妻も子供たちも、おれのことが好きじゃないかもしれない。
みんな「あんな気難しいヤツと離れられてよかった、せいせいした」
そんなふうに思っているかもしれない。

でもおれはそうじゃなかった。

なんの見返りがなかったとしても、
おれはやっぱりみんなのことが大好きだった。

いま、おれの胸に空いているこの、大きな大きな穴。

それが証拠だ。
好きじゃなかったら、
大切じゃなかったら、
こんな気持ちにはならない。

ぜんぜんおれの言うこと聞いてくれなかった元妻だけど、
でもそんなマイペースなところも実はいいなと思っていた。

のんびりと動物のナマケモノのように生きている彼女のことを、すごくかわいいと思っていた。

でも今日、おれはそんな元妻と子供たちを神様に返した。

いままでこんな素敵なものをおれに貸してくれていて、
本当にありがとうございます。

すごくすごくしあわせでした。


また何か、おれに貸してくださいね。


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