叔母との小旅行
先日、高齢の叔母といっしょに、伊豆に行ってきました。
目的は、独り身の叔母が入る、施設の見学だったのですが。
日帰りだと疲れるとのことで、前日から、施設の近所のホテルに泊まることになりました。
いやぁ、そのホテルがたまたま旅行支援の対象宿泊施設だったせいでたいへん人が多く、感染予防対策なるものも徹底していて、普段どこに行くにもマスクなしの私には馴染めない場面もたくさんあったのですが。
今日は、そのことについてではなく、少し叔母について書いてみようと思います。
叔母は私が高校生(?)くらいのときに離婚して、その後ずっと一人暮らしをしているのですが。
離婚して間もなく千葉に家を買い、さらに七十代でその家を売って東京にマンションを買い、いまはそこで一人暮らしをしています。
って、サラッと書きましたが七十代で住んでいた家を売り、東京にマンション購入ってすごくないですか?
これ、かなりな一大決心をしないと、できないことですよねぇ。
賃貸であれば簡単ですけど、そうじゃなく不動産売買ですから、七十代で、しかも業者以外は誰の手も借りず売買契約するって生半可なことじゃないと思います。
だから私、特にパートナーを亡くしてからは独り身の先輩として、叔母のことを尊敬すらしていました。
「自分軸」で生きてる人だと、思ってきたんですよねぇ…。
ところが残念なことに、実態はまったく逆でした。
そもそもなぜ東京で生まれ、いまも東京に住んでいる叔母が、伊豆で施設を探しているのか?
その理由が、行きつけの病院なんですよ。
実は東京で叔母が通っている病院が伊豆にもあって、東京の施設は料金が高くていろいろ心配だからと、伊豆周辺で施設を探しているらしいんです。
でもまぁ、老人にとって病院は大事なんでしょうから、分らなくはないし。
自分で決めたことであれば、私が口出しするようなことじゃありませんから、言われたとおりに黙って付いて行ったわけですが。
どうやら話を聞いていると、叔母が求めている施設の形態と、見学するところとがまったくマッチしないというか。
「こういうところはイヤ」って言っている、まさにそのカテゴリーの施設を見ようとしてることが分ってきました。
当然、私は違和感を持ったわけですが「どうして?」と聞いても、まったく要領を得た答えが返ってきません。
それでも、徐々に明らかになってきたのは「病院から一番近いから」という理由。
さらに話を聞いてみると叔母には施設に入るより、東京の家でのんびり暮らしたいという希望があるようなのに、ゆくゆくは施設に入らなければいけないと決めて掛かってるようでした。
「だったら別に急ぐ必要もないわけだから、いろんなタイプの施設を見てみて、どういったところがいいかじっくり考える足掛かりにしてみたら?」と言ってみるも、どうやらしっくり来ないよう。
しばらくして叔母の口から出てきたのは、たいへん意外な言葉でした。
「病院の先生に『施設は決まった?』と聞かれたから、早く施設を決めなくていはいけない」
「は?」と思いました、あまり意見はすまいと思っていたのですが、さすがに「先生のために早く決めなきゃ」といったもの言いを見過ごすわけにはいきません。
結果、叔母にとっていちばん大事なのは「自分」ではなく、病院だということが判明しました。
千葉から東京に移ったのも、病院に通いやすいから。
つまり叔母の日常は、すべて病院ありきで成り立っていたのです。
「塩分制限しろ」と言われれば、「一日に何グラムまで」という決まりを、小数点以下に至るまで守り。
「散歩しろ」と言われれば、体調度外視で「一日に何キロ歩く」という決まりを守る。
一人暮らしができなくなってもそれを続けるため、施設選びも、病院に近いことが第一優先。
そのモティベーションは恐らく、医者にいい印象を持ってもらうため、なんですよ。
何度か叔母の診察に付き添ったことあるんですが、そう言えばアイドルでも眺めるみたいな目で、医者を見てました。
でもねぇ、叔母は戦争経験者ですから、しょうがないところもあるとは感じます。
なにしろ国による配給を経験してますから、自分優先でいたら、生きられない時代を生き抜いてきたわけです。
そんな叔母が離婚して一人になって、ずっと見守り続けてくれる医者に対し、依存してしまってもちっともおかしくないと私は思います。
でもねぇ、言わばこれ、敗戦国の病理なんですよ。
その背後に、世界に比して病院数が異常なまでに多い、日本の真実の姿があるんじゃないでしょうか。
老人が多いからこそ成り立つ構造は医療に限らず、政治も、宗教もみんなそう。
子どもの数が減ったことにより、教育産業の斜陽が叫ばれ始めて久しいですが、果たしてここから先はどうなってゆくのでしょう?
ホームページをつくったので、ぜひ見てみてください。
お気軽にコメントなど書いていただければ、嬉しいです。
ムッチャ長くなってしまって、スイマセンでした。
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