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他劇団公演観劇記 劇団あげ玉朗読劇「千羽鶴幻想」@立場地区センター

前書き

私(折笠)は、過去何回かご一緒した劇団あげ玉。その代表のしずき香那さんが、原爆の悲惨さを伝承していかなくてはならないとの思いから、過去何回か上演している「千羽鶴幻想」。
元々は、テレビドラマの作品らしいのですが、それを朗読劇向けに書き直したのがこの作品です。
過去に横浜だけでなく、今回出演されている方のお住まいである岩手県でも上演したことがあり、そこでも好評を得たそうです。
しずきさんは、これを8月6日にやりたいと前々からおっしゃっていましたので、やっと念願がかないました。
私(折笠)も観たことがあり、今回が2回目かと思います。

今回のキャスト4人は、実力者揃いですからうまくいかないわけがありません。

公演概要

・題目:千羽鶴幻想
・作:千葉多喜子
・脚色:しずき香那
・公演日:24年8月6日(火)13:00
・会場:横浜市泉区立場地区センター 中会議室

フライヤー

感想

「恋する幽霊」の観劇記で、朗読劇についてちょっと語ったのですが、今回も朗読劇が続きました。
「恋する幽霊」も幽霊が登場する話でしたが、「千羽鶴幻想」も原爆で亡くなったひろしがこの世に彷徨い、別れた母親を探すという話で、今回も幽霊話です。やはり夏だからでしょうか?というちょっとふざけた話は今回は無しにしたいと思います。

戦時下ではあっても、平和な日常を送っていたのに、一発の原爆で多くの人々の人生を無にされてしまう。
それは悲しいのですが、この話ではそれよりももっと悲しさを誘うのは、何十年も探していた母親秀と息子のひろしが再会できる場面です。本来であれば、喜ばしい場面であるはずが、悲しい。とてつもなく悲しい。ひろしと再会した秀は、そこで亡くなり、千羽鶴に乗ってふたりで天国に向かう。これすらも悲しいんです。
こんな形で再会して、ふたりで天国に向かうなんてあまりにも切ない。本来であれば、ひろしにも子どもができて、母もその孫を抱いていたかもしれない。
そんなささやかで幸せな日常を奪ってしまった戦争や原爆、そしてそれらを作って使ってしまった人間の愚かさや悲しさ。
その後、長崎以降は原爆自体は使われていませんが、戦争は相変わらず続いている。起こした人はなに不自由なく暮らしながら。
こんな不条理を感じる作品でした。

横浜の地区センター(一般的な公民館)会議室という会場なので、照明は普通の蛍光灯(LEDかも)、舞台装置は飾りとしての千羽鶴、ぼろぼろに加工した服など最小限にしつつも、トマト(実物のようです)が印象的な小道具として使われています。色が失われがちな戦争や原爆の中で真っ赤なトマトの色彩が希望だとか、血を象徴しているようでとても良かったです。

ねこのバロンでもシンプルな装置で舞台を作りたいと思っていますが、そのなかで小道具というのは、その使い方によって非常に効果的な印象を与えます。私たちももっとよく考えて小道具を使いたいという思いを強くしました。

良い舞台をありがとうございました。いつの日か広島でできるといいですね。

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