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鹿児島スタジアム妄想

最近鹿児島のサッカー等スタジアムに関する話もちょいちょい新聞などで目にするようになり、よその県でもスタジアム計画が動いていたりするので、鹿児島のサッカースタジアムについて妄想を書き散らしてみることにしました。
ヘッダ写真は同じ九州の素晴らしいフットボールスタジアム、ミクニワールドスタジアム北九州です。

導入

鹿児島市も新型コロナ対策に追われ、スタジアムどころではない日々が続くこと2年、来年度ようやくスタジアム調査に係る予算が確保されるようです。依然としてコロナ禍は続いており「スタジアムよりコロナ対策」という意見もまた、もっともな話なのですが…
そうこうしているうちに県の新体育館構想が浮上してあれよあれよと候補地が絞り込まれ、DP跡地に建てることが望ましいという委員会の提言も出来上がってしまいました。

そもそもサッカー等スタジアム(以下サッカースタジアム)がどこまで話が進んでいて体育館との兼ね合いはどうなるのか、一体どういうものが出来上がるのか市民・県民には全く見えてこないので議論すらしようがない、しても正しい方向に進まない状況だと思います。

多額の税金が投入される事業かもしれませんし、慎重に考えねばならないことですが、一方で体育館もサッカースタジアムもこれから先しばらく、鹿児島のスポーツのアイコンになり得るものですから、もっと夢とか希望とかを持って議論したいですよね。という趣旨の妄想を書いたものです。

ここでは主にスタジアムの機能と立地面などに注目しているので、資金調達方法とか整備方法は特に言及していません。どうぞ、あしからず。

候補地を整理

平成31年1月に「サッカー等スタジアム整備検討協議会」1)が取りまとめた立地に関する報告書によれば、これまでの報道等の通りですが

浜町バス車庫
ドルフィンポート跡地
住吉町15番街区

の3箇所とされています。当初の6案のうち最終的に候補から外れた他3案は

・浜町ゴルフ練習場
・かんまちあ
・鹿児島中央駅西口

の3箇所。まあいずれも落選の理由はなんとなくわかるような場所です。まずはそれぞれの候補地をざっくりと見てみましょう。

①浜町バス車庫

鹿児島交通のバス車庫や森林管理署が現在立地しており、地権者の絡みもありあまり候補地にはならなさそう。
JR鹿児島駅と市電鹿児島駅前電停から徒歩10分くらいのところで、さしてアクセスには問題もありませんが、いかんせん街と離れてる感がありますし市長もあまり乗り気ではないらしい(伝聞)ので、可能性は低いのかなと

②ドルフィンポート(以下DP)跡地

今鹿児島で一番アツい?空き地。スタジアムに求められる「鹿児島らしさ」はすでに目前の桜島と錦江湾で端的に表現され、天文館とその先電車・バスを介して鹿児島中央駅までの導線も一番理想的。

③住吉町15番街区

今のところ「DP跡地がダメだったときの第2希望だよね」的な立ち位置の同地。県が体育館用地として一体開発を計画しているだけあってほぼ隣接地といっていい場所。ですが、個人的には実際に歩くとちょっと距離を感じる。いづろ通りまでも、ちょっと長いかな(贅沢)と。
あと実際に見て感じるのは意外と狭い。この面積でもスタジアムが建つ見込みがあるんだなということと、ここに決まった場合埋め立ての必要性が示唆されていますがもそれより向かいの魚類市場との距離感的に大丈夫なのか?というのを個人的には感じるところ。船溜まりもありますしね。

画像中心付近の空地が住吉町15番街区。東側(海側)が魚類市場などがあるエリア。
北の隣地は高速船ターミナル、さらにDP跡地が連なる
(画像:地理院撮影空中写真(撮影:2015年4月))

議論の現状

鹿児島市のサッカー等スタジアム整備検討協議会は平成29年3月に第1回の協議会を招集し、平成31年1月までに前述の3候補地のリストアップを行っているところです。一方で、鹿児島県の総合体育館基本構想検討委員会は令和2年11月に第1回の検討委員会を開催。令和4年1月の第8回委員会にて、立地や機能・施設イメージなどを含めた基本構想案を公表しました。

という風に書くと、体育館のほうは羨ましいくらいのスピード感で基本構想までたどり着いたわけですが、コロナの影響は否定できず、それは市長も認めているところですがスタジアムの方は候補地を3箇所に絞って以降、これといった進捗がないというのも事実です。
実際に、昨年末にKYTで放映された塩田知事と内田アナウンサーによる対談では「スタジアムがどんなものかよく分からない」という趣旨のことを繰り返していた知事の発言が印象的でした。確かに、議論の俎上に載せるだけのものを市が出せていないことは明らかです。

下鶴市長は一貫してウォーターフロントエリア、特にDP跡地での体育館との一体開発を訴えている一方、県側(塩田知事)はそれについて上記の通りあまり具体的な言及はしていません。
22年5月21日付の南日本新聞「県都のあした」連載にて、本港区エリアでの街づくり協議会への参加は「サッカースタジアムをパーツの一つとして考えるのであれば、(協議は)市が計画を明らかにした後になる」といった見解を示したことが報じられています。今のところ県側はあえてスタジアムのことについての言及は避けている一方で、この発言からは「検討の余地が無いわけではない」ことも若干伝わってくるところでもあります(希望的観測)。

市長はここ2年コロナ対策などでスタジアムの方が遅れたことを認めつつ、今年度はスタジアムに係る調査等の予算を確保したことで早く見通しを立てたいという趣旨のことをを先日のホームゲームにて語っていました。
昨季終了後のクラブ公式YouTube配信「ユナイテッドのんかた」にて西原商会の西原社長(県FA会長)もスタジアム整備について各方面に働きかけをしている(意訳)というような話もしていましたし、まあ水面下では色々と動きもあるのかも知れませんが、まだスタジアム整備に向けた具体的な何かがあるという現状ではなさそうです。

アクセスの面から

街なか・駅チカスタジアムに行ってみて

私は以前noteでも書いたとおり、去年京都サンガF.C.のホームスタジアム「サンガスタジアム by KYOCERA」やギラヴァンツ北九州の「ミクニワールドスタジアム北九州」、サガン鳥栖の「駅前不動産スタジアム」などに行って来ました。
これらは極めて交通至便な場所に立地しており、スタジアムに試合当日に一般来場客が利用できる駐車場は基本的に用意されていません。

サンガスタジアム by KYOCERA
サンガスタジアム by KYOCERAでは、開業当初から公共交通機関での来場を呼びかけています。というのも、この写真を見ればその呼びかけはごく自然なことであることがよくわかります。電車に乗って来ることのできる客にとって、もはや車で来る理由のない立地です。

JR亀岡駅駅舎から至近に望むサンガスタジアム by KYOCERA(筆者撮影、以下特記なき場合同じ)

京都駅から電車に乗ると、市内の街並みを抜け保津峡の景観を眺めながら、平野に出るとほどなくして美しいスタジアムが目の前に迫ってくる…という素晴らしい体験ができました。スタジアム自体も木を使用した柔らかなイメージや紫を基調としたスタンドが美しいものでした。
スタジアムには駐車場はないものの、駐輪場が数が十分かは不明でしたが用意されておりました。
電車で約20~30分といえば鹿児島では鹿児島中央から北方面は姶良、南へは坂之上あたりまで行ける距離感なので、京都市中心部の京都駅から離れた場所にある点はやや鹿児島の計画とは違った部分ですが、最寄り駅に近づけることで公共交通機関を躊躇なく利用しやすくすることは実感できました。

ミクニワールドスタジアム北九州
ミクニワールドスタジアム北九州は、小倉駅から徒歩6,7分の好立地がウリのスタジアム。駅からペデストリアンデッキや商業施設を通れば雨が降っても雨に曝されるのはほんの2,3分程度で素晴らしいなと思うところでした。
メイン・両ゴール裏は2層式の屋根付きで充実していますが、バックスタンドは増築を見据えた1層式の屋根無しになっているのは気になる点。一方で副産物としてメインスタンドからは向こう側の景色を見ることができます。過去にはこれを生かして花火イベントも開催されたようで、こういった構造も活かし方次第だなと感じるところでもありました。
鹿児島の夏といえばサマーナイト大花火大会。なんとなく同じ絵を描けそうなところです。

メインやゴール裏とくらべて質素なバックスタンド。しかし背後には風光明媚な景色が

駅前不動産スタジアム
駅前不動産スタジアムは元祖好立地スタジアム。鳥栖駅から選手・監督の幟に彩られた跨線橋「虹の橋」を渡って向かえばすぐにスタジアム。スタンドの急峻な傾斜も手伝って見やすさは抜群です(急すぎて一部席からはピッチ全体が見えないこともありますが)。
一方で導線の少なさは課題で、試合後は両チームサポーターが入り乱れて虹の橋は大混雑。駅自体、あまり規模が大きくないこともあって滞留エリアの重要性がわかりました。

JR鳥栖駅(手前)と駅前不動産スタジアム。周辺含めのどかですが素敵な光景です

都心ほど駐車場の確保は困難

スタジアム周辺での交通渋滞は利用者はもとより近隣住民や周辺交通に大きな(悪い)影響をきたし、イベントや施設自体が白い目で見られるものです。また、サポーターにも「こんなに混雑するのなら家でDAZNで見たほうが良い」という人も出てくるかもしれません。
そういった現象を少しでも抑える方法には「できるだけ公共交通機関や自転車、徒歩での来場をしてもらう」あるいは「スタジアムの周辺に自家用車を集めない」ことが挙げられるでしょう。

前者については、ウォーターフロントエリアでの整備が実現すれば全国でも屈指の好立地スタジアムになると思います。中心駅である鹿児島中央駅からは市電・バスともに十分な便数があり、人によっては徒歩も視野に入る距離でしょう。シェアサイクルの「かごりん」といった選択肢もあります。
人口減や財政問題から地方の公共交通事業はますます厳しい運営を迫られることが予想されますが、鹿児島中央駅⇔ウォーターフロントエリアという県都の中心街ではそう簡単に減便・路線廃止の問題は起こらないでしょう。そういった点からも、まずは公共交通機関および徒歩での来場を第一に考えてもらうことは不可能ではないのではないでしょうか。

できるだけ公共交通機関を利用してもらうには、公共交通で来場することへのインセンティブを与えることが考えられます。公共交通事業者と連携して運賃などの割引を行う、スタジアムで何かしらの特典を付与する、周辺飲食店と連携しての割引サービスなどが挙げられます。
徒歩や自転車についても同様に取り組みがあっても良いでしょう。
一方で、自分含め遠方からホームゲームに来る方も少なくありません。どうしても自家用車である程度近づきたい人に向けてはパークアンドライド駐車場を計画するなどの対策があるでしょう。
ただ例えば週末の鹿児島中央駅横の立体駐車場はアミュプラザの利用客などで大変混雑している様子をよく見かけます。ここに停めて…というのは中々難しそうな感じも受けますね。周辺の駅などを利用する方策なども考慮していくべきですね。

我々のユニフォームの胸に入っているのはそう、「さつま島美人」ですよね。コロナ禍以前は振舞い酒、今は水より安い水割りシマビ。あるいは、せんべろ。公共交通機関で、徒歩で来場して帰りのことを気にせず飲もうではありませんか。なんなら試合後は天文館にくり出しましょうよ。という感じです。

ただし、フットボールスタジアムとりわけプロスポーツの興業に限って言えばそれでもいいのですが、総合体育館のことを考えれば「部活の県大会で大きな荷物がある」などのシーンも考えられるため全く駐車場無しで良いとは言えないところもあります。県の総合体育館計画では住吉町15番街区が駐車場として想定され、ここがスタジアム建設地となった場合は周辺の県営駐車場の立体化なども想定されているようです。
これに関しては、現在でもエリア周辺に点在している市営・県営駐車場のスペースもうまく活用できれば良いかもしれません。立体化などによって景観を損ねることがないよう配慮しつつ、ある程度の台数を確保できればいいですね。

街なか立地、公共交通機関で来場できる施設に

昨今のスタジアム整備の動きを見ていると、上に示した北九州や京都の例をはじめ、不便な立地や老朽化から長らく新設の訴えがあったサッカー王国・清水のエスパルス新ホームスタジアムがJR清水駅の目の前に出来るとかいう報道2)も出ていました。
「スタジアムは公共交通機関で容易にたどり着ける場所に」という風潮があるのではないかと感じます。

南(2020) 3) による北九州の試合観戦者の調査によれば、2016年まで使用した旧ホームの本城陸上競技場では「利用した主な交通手段」について「公共交通機関」と答えた人の割合がわずか10%あまりだったのに対し、17年のスタジアム新設をきっかけに大幅に割合を増し、2019年には過半数となっています(一方で車も4割近くですが)。駅に近づいたことで公共交通機関を利用するようになった人が大きく増えたことは明らかでしょう。

立地の面では「広大な駐車場を備えたスタジアムを郊外に作る」のと「駐車場をなくして(減らして)公共交通機関などに来場を依存したスタジアムを中心地に作る」という考え方に分類できると思います。
これまで日本に建ってきたスタジアムは特にJリーグを開催するようなスタジアムは後者が少なくなかったのかと思います。陸上競技場や野球場など、総合運動公園として体育施設を集約する整備方法などです。もちろん、クルマ社会の実情や土地代が中心部に比べて安くなること、都市計画との兼ね合い、市民感情…など、色々ありますがこれからは中心地への整備が求められるのかな。と思います。
というのも、これまではスタジアム=体育施設で単機能的な施設であり、複合利用という想定はあまりないものでした。しかしそれでは採算が取れない、昨今の厳しい自治体の財政状況から公共施設の経営に対する世間の目も厳しく、近年は「いかにしてプロスポーツの試合日に利益を最大化し、試合日以外のイベントや市民の利用で稼働を増やせるか」が特に注目されているところです。これはまた次に述べます。

話を戻すと、浜町バス車庫はともかくDP跡地・住吉町15番街区とも非常に恵まれた立地が実現できるといえます。まあ、浜町の方も鹿駅からは遠くないのでそこまで交通的に不便な場所ではなさそうです。
主な公共交通機関やエリアとの位置関係を示すべく、パワポでオブジェクトを貼りたくってみました。(以下図)

地理院地図(15年4月撮影)をもとに筆者編集

緑線はJR、橙線は鹿児島市電を示しています。橙色の①~③は冒頭で出したスタジアムの各候補地、DP跡地の海側の青色は県有の緑地です。
ご覧の通り、鹿児島中央駅から天文館は市電で結ばれています。各社バス路線も概ね橙線の通りを中心に走っています。
霧島の鹿児島空港から空港バスで、陸路は新幹線で、鹿児島中央駅に着いたサポーターが市電やバスに乗っていづろ通に。そこから歩いて5,6分のスタジアムに到着。試合後には歩いて天文館へくり出す…そんなサポーターの姿が目に浮かびます。
図にもある通り、ウォーターフロントエリアは鹿児島市と大隅半島、離島の重要な玄関口でもあります。Twitterでよく試合前日や試合日の午前中に桜島観光へ出かけるアウェーサポーターの様子を目にしますが、フェリーを降りて徒歩数分でスタジアム…なんて、考えるとワクワクしますね。大隅サポ勢や離島サポ勢にとってもこれは福音でしょう。

中心駅から路面電車・バス・徒歩・自転車で繁華街を通りスタジアムにたどり着ける。この立地にはやはり特大のポテンシャルがあると実感します。

スタジアムの機能の面から

多機能複合化、など

下鶴市長も県議時代から言っている「稼げるスタジアム」。公共施設の赤字経営は無駄と批判されることも少なくなく、「ハコモノ」と揶揄され反対に遭うのが世の常。いかに整備費用から運営費を抑え、完成後は収益を挙げて税金による支出を少なく(むしろプラスに)できるかというところが注目されています。日頃から人々が行き交う空間になれば、周辺にもたらす経済波及効果の増大も期待できるでしょう。

そうすると、住民が日頃から利用できる・したい施設であることはもちろん、気軽に足を運べるような場所になければ利用されないというわけですので、やはり街なか立地ということが重要になってきます。郊外に大量の駐車場があったとて、すぐに行ける場所でなければ「行きたい」という場所ではなくなるかもしれませんね。
また、試合日は使用禁止でも日常的な住民の利用には利用可能な駐車場が多少あればより利用を喚起できそうです。

複合化の例としてよく出されるのが
・ショッピングモール
・映画館
・レストラン、飲食店街
・フィットネス関連施設
・貸オフィス、貸会議室
・ホテル

こういったところでしょう。例えば桜島や錦江湾の景観を生かしたレストランなどがあれば行ってみたいですよね。ビジネスラウンジなど、試合日はホスピタリティ施設として利用される区画を利用する方法もありそうです。

国内の例で言うと、サンガスタジアム by KYOCERAは屋内クライミング施設やe-sports施設の併設のほかビジネスラウンジや会議室を試合日以外に貸し出す貸会議室事業も行っています。会議室の貸出は北九州でも行われています。試合日以外の活用の最もベーシックなやり方かもしれませんね。
J1鹿島アントラーズのホームスタジアムである県立カシマサッカースタジアムは、クラブがスタジアムの指定管理者となりフィットネス事業や医療サービスを提供しているそうです。

欧州のスタジアムでは、スタジアムのスカイボックスなどを企業に貸し出す事業を行っている例もあります。バイエルン・ミュンヘンのスタジアムであるアリアンツ・アレーナ(Allianz Arena)では確か広さなどによって価格にはいくらか幅がありましたが、数千万円/年で契約すれば内装を企業が自由にカスタムすることもでき、オフィス、会議、接待などで試合日以外でも利用できるんだそうです。
このnoteを書いている途中で長崎で整備予定の新スタジアムにオフィス機能が設置されることが報じられていました。

ジャパネット、サッカー場に賃貸オフィス 長崎最大規模: 日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC183NM0Y2A510C2000000/

これはスタジアム内にあるわけではないのでまた厳密には違うものですが、ホテルや商業施設など複合施設を整備する中で賃貸オフィスの区画を設け、テラスからはサッカー場も見下ろしつつスタジアムコンコースでランニングなどリフレッシュもできるようになる計画が伝えられています。いずれにしても「スタジアムシティ」構想ができるのは長崎ならではであり非常に羨ましい限りです。
サッカー好きならたまらないでしょうし、そうでない人も開放的なオフィスでQOL高められそうですね・・・。

鹿児島らしさ?

桜島という最高の景観を望む場所に作るのであれば、やはりそれを生かさない手はないでしょう。バックスタンドを敢えて低く抑え、メインから向こう側を望めるような構造もない話ではないかもしれません。
広島にあるカープの本拠地マツダスタジアムは、コンコースに接続する特徴的な長いスロープ(?)があって試合のない日はコンコースの手前まで行けますよね。例えば、バックスタンドのコンコースの延長上にせり出すように広いデッキスペースのようなものを作り、バックスタンド入口手前まで試合日以外でも通行することができ、桜島を眺めるスペースを確保する…なんていう妄想が捗ります。試合日はそこにスタグルが出店してもいいかもしれません。
また、(中央駅前バスターミナル地下に新たにできるようですが)屋台村のような地元食材をアピールした飲食店街がスタジアムの一角にあっても面白そう。

現在のウォーターフロントパークからみた桜島。遮るものはなく、港の風景と含めて素晴らしい景観です

広島市街地に建設中のサンフレッチェ広島新スタジアムでは自動車交通と歩行者の交わりが低減されるようペデストリアンデッキが整備されるようです。また、以下リンクにあるパースを見ていただけると上に述べたような工夫がこのスタジアムでは施されていることがおわかりいただけると思います。
スタジアムコンコースの外周側にテラスがあって、そこから試合が無い日にも桜島を眺められれば素晴らしい体験になるはず…です。
ペデストリアンデッキから連続的にスタジアムに続く導線が個人的にはなにより魅力的に映りました。また、同時に隣地でカフェなどを備えた芝生公園を整備しているのが良いですよね。試合日であるかどうかを問わず、人々の憩いの場となる可能性が高いでしょう。

HIROSHIMAスタジアムパーク|サンフレッチェ広島

広島の新スタジアム整備地には昨年行ったのですが(もちろん当時は何もありませんが)、立地的にも非常に行きやすいスタジアムになると感じました。広島駅からは少々歩きますが、アストラムラインや路面電車などを使ってより近づくこともできます。
周辺を見渡しても真横には広島城、少し歩けば原爆ドームなど被爆関連施設があり広島市の「らしさ」を存分に感じられる場所でしょう。

広島グリーンアリーナ側から整備予定地を見る(右下に指が写っていることに気づいた)

「スタジアム+体育館併設」は実際可能なのか

スタジアムマニヤは「サッカースタジアムと体育館(アリーナ)が一緒になればなあ」という妄想をしがちですが、それを下鶴市長は県にも訴え続けているようです。県(知事)はなんとなく懐疑的な見方をしているように思えるのですが、実際のところ本当に併設するスペースがあるんでしょうか。
ちなみに、DP跡地の海側にあるウォーターフロントパークは残す方向で県は考えているようです。確かにここの緑地は普段から市民の憩いの場として機能していて、のんびり桜島を見ながら時間を過ごせる空間でもあり個人的にも好きな場所です。また、鹿児島ラーメン王決定戦や花火大会などイベント広場としての重要な機能も担っています。
ただ知事としてもここを潰さないと体育館との併置だけでなく、スタジアム単体でも面積的に無理なんじゃないかという認識を語っていて、以下の図を見ても確かにその通りな感じもします。

Google Mapsにて筆者合成

なるべく同縮尺になるようにして、鹿児島に整備されるスタジアムとして規模感が似てくるであろう北九州のミクスタをDP跡地に合成してみました。
…思ったより場所取るんだなと思いました。

体育館の配置案を見ると、DP跡地および駐車場の空間の画像下半分が体育館スペースで、NHK側の上半分が多目的広場、そして海側の芝生エリアは現在の形で残るようになっているようです。
それを考えた際、どのように配置すれば共存できるか?は中々難しい課題にも見えました。

屋外の競技施設は太陽光がプレーの妨げにならない、などの理由から基本的に長辺が南北軸に近づくように設置されるのが理想的です。そういったことも踏まえるといくら敷地内だからといって好き勝手向きを変えるわけにはいかなさそうです。一方、体育館などの施設は光を取り込むべく東西軸が長辺になるのが望ましく…素人には難しいのでこの辺は建築分野などに明るい方におまかせします。

既存施設などを無視して押し込んでみた

上の図の黄色いエリアは、県総合体育館の基本構想にあるイメージから体育館(アリーナ)にあたる部分を適当にトレースした部分です。
こういう2施設の併置を実現させるとなると、やはり県と市による計画段階からの連携が不可欠というのがわかりますね…
もっとも、上はド素人の私が考えたこと+適当パワポ図ですので、何の参考にもならないことはご承知おきください。
配置を考えさえすれば入らない面積でもないような感じはありますが、あくまで緑地部分まで使うことと計画段階での緊密な連携を要する計画になりそうでした。

今季のユナイテッドの開幕戦は終了後、近くの県体育館でレブナイズの試合もあるということでハシゴ観戦をされた方も結構おられたようです。こういった機会があって、なおかつスタジアムと体育館が隣接していたらどんなに素敵なことだろうと思いますが、県の資料ではプロスポーツ(=レブナイズの試合?)は利用日数が年間9日、3%の利用にあたるんだそうです。
ここでユナイテッドのホームゲームと日程が重複する試合…となるとあまり多くはないかもしれませんね。あったときは猛プッシュで連携した取り組みがあればいいと思います。ただし、今のところではその機会がそこまで多くなさそうというのも現状です。

日本では札幌ドーム、欧州ではシャルケ04のホームスタジアム・フェルティンス・アレーナ(Veltins Arena)などで可動式ピッチが導入され、特に後者ではアリーナモードでコンサートなどの開催実績もあるようです。そういった設備を持つスタジアムではコンサートやコンベンションなどの開催も可能でしょうが、天然芝ピッチでは中々そういったイベントはやりづらいのが実情。日産スタジアムなど大規模スタジアムでは芝生保護材(テラプラス)を使用しコンサートも行っていますが、鹿児島でそこまでするのに費用対効果がどれだけあるかは分かりませんし、やはり芝への影響もゼロではありません。
総合体育館(アリーナ)が横にあればそういった機能は体育館に任せることもできますし、そういった意味では併設でエリア全体の活用性が高まるように思います。

収容人数

概ね、J2/J3所属クラブでフットボールスタジアムの新設を考えているところでは「1万5000人収容」というところが目安に考えられることが多いかと思います。
これは「Jリーグスタジアム基準」にある通り、J1クラブライセンスを取得するためには芝生席以外で1万5000人以上を収容する能力が必要とされているからでしょう。
J1あるいはJ2に上がれば確かに1万人くらい集められるクラブもあるかも知れませんが、クラブやその集客力によってはかなり過大だったりする人数でもあります。1.5万人収容のスタジアムに2,000人しか入らないのでは逆にがらんとした感じが出てしまいます。
そういった中で、10,000席以下の収容人数で整備を開始する例もあります。J2ツエーゲン金沢が主に使用することとなるであろう、金沢市民サッカー場の再整備事業ではJ2ライセンス基準を満たす1万席での着工となっています。また、FC今治のホームゲームで夢スタの向こう側に見えている「里山スタジアム」は当初計画ではJ1規格でとなっていた気がしますが、確かコロナの影響もありJ3規格を満たす6,000席で着工。いずれも、クラブの昇格などに合わせJ1基準を満たす、1万5000人以上の収容を可能とする増築が可能なように設計されているようです。
金沢の1万人のケースでは、既存サッカー場の改修ということで多少特殊ケースですが事業費は約80億円とのこと。最初に1.5万人などで作るのが安いのか、クラブのステージに合わせて増築していくのが安いのかは検討が必要でしょうね。

鹿児島はJ3では比較的大きな集客力を持つクラブとして認識されています。松本山雅FCなどがいる今季は中々難しいかもですが、昨季はリーグでトップの動員力を見せました。また、2018年のJ2昇格を決めた沼津戦には1万人あまりを集め、そのくらいの集客力があることのポテンシャルもみせました。
そういう状況やクラブの成績・ビジョンなども踏まえて計画していくことになるでしょう。

おわり

ここに書いたのはほんの素人が考えついたような妄想に他なりませんが、せっかく作るとなればこのくらい夢を語っても良いですよね。
冒頭にも書きましたが、この先数十年にわたって鹿児島のスポーツのアイコンになる施設になるはずです。せっかくなら、理想が詰まった素晴らしい施設を作ってほしいです。
今回書いたところはかなりざっくりとしたイメージのような部分だったので、本文中で訪れた京都や北九州などのフットボールスタジアムで感じた優れたポイントなどはスタジアム旅のnoteをご覧いただきたいと思います(宣伝)。

鹿児島でJ3以上の試合を開催できるのは白波だけ。また鹿児島で唯一の第1種公認の陸上競技場であり、同時に唯一の「観る」機能を持った競技場でもあるため、あらゆるスポーツの大会がここに集中することになります。
また、サッカーを観るにあたっては陸上競技場というのはそれだけで臨場感が感じづらい・遠いという、観客の体験価値を下げる要素を持ち合わせています(白波は比較的見やすい部類ではあると思うのですが)。
フットボールスタジアムの新設は利用の集中を緩和し、サッカーを観る上での体験価値を大きく向上させる可能性を持っていると思います。主な利用者になるはずの鹿児島ユナイテッドFCも計画段階から関与して、本当の意味で選手・サポーターにとって誇りと思えるスタジアムを実現させて欲しいです。

参考文献・サイトなど

1)「サッカー等スタジアム立地に関する報告書」サッカー等スタジアム整備検討協議会<https://www.city.kagoshima.lg.jp/sports/documents/houkokusyo.pdf>(22.3.18閲覧)

2)清水エスパルスに新スタジアム 駅に隣接、26年めど完成(日本経済新聞,22年3月4日付)<https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC037OK0T00C22A3000000/>

3)南 博 (2020) 「北九州における集客イベントの効果と展望(6)ミクニワールドスタジアム北九州におけるギラヴァンツ北九州 2019 年スタジアム観戦者調査の集計データ 」北九州市立大学 地域戦略研究所 2019 年度 地域課題研究 p.8
<https://www.kitakyu-u.ac.jp/iurps/pdf/2019chiikikadai_minami.pdf>

HIROSHIMAスタジアムパーク|サンフレッチェ広島 <https://www.sanfrecce.co.jp/stadiumpark/>

ジャパネット、サッカー場に賃貸オフィス 長崎最大規模: 日本経済新聞 <https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC183NM0Y2A510C2000000>


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