【小峠さん】
病院の隣にある薬局で、薬を貰うために順番を待っていた。
3月も中旬に入り、今日はもう春のように暖かい。そよ吹く風も心地いいので外で待つことにした。
薬局の前には、コンクリートブロックの低い塀があったので、それに腰掛けて春風に当たっていた。
すると、病院から1人のおじいさんが出てきて薬局のほうにやって来る。
ツルッ禿げのそのおじいさん・・見ればコントユニット〈バイきんぐ〉の小峠にソックリなのだ。
笑いを堪えていたら、こともあろうに僕の方に近付いて来くるではないか・・
〈えぇ~❓️なになに・・僕の方に来るのか❓️・・来るなよ来るなよ・・・〉
訝る僕をよそに、とうとう目の前までやって来た〈小峠じいさん〉は僕に話し掛けてきたのだ。手には煙草を持っている。
〈えっ❗️なになに❓️〉
〈小峠じいさん〉は顔を近づけてきて、マスク越しにこう言った。
「あなた・・煙草、喫うかね❓️」
〈えぇ❓️僕に煙草をすすめる訳❓️もう煙草を止めて何十年にもなるぞ〉
僕は否定した。
「い、いえ喫いませんけど・・」
「あぁそうですか・・風がねぇ」
そう言うと、風向きを調べながら、少しばかり離れた所に移動して〈小峠じいさん〉は煙草に火を点けたのである。
どうやら煙草の煙が風に靡いて僕に掛かったら悪いと思ったのだろう。
近づいて来た時には何事かと思ったが、実は礼儀正しい〈小峠じいさん〉なのであった。
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