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【ボクのお爺ちゃん】

ボクには明治29年生まれのお爺ちゃんがいた・・

あれは、ボクがまだ小さい時だった。

当時、玄関先を仕事場にしていたお爺ちゃんはその日も玄関で仕事をしていた。お爺ちゃんは大工さんなのだ。

そこへ、隣に住んでいるお兄さんがやって来た。

このお兄さんは、近所でも評判の良くないチンピラのような人だった。

そして横柄な態度でこう言った。

「おじさん、ペンチを貸して貰えんかいのぉ❗️」

するとお爺ちゃんは間髪を入れずにこう切り返したのだ。

「ほぅ❗️あんたんとこのペンチがワシんとこへ来とったかいのぉ❓️」

「・・・・」

一瞬、絶句した後にお兄さんが言った。

「・・・すいませんが貸して下さい」

そのやり取りを側で聞いていたボクは、胸がスカ~ッ❗️としたのだ。

〈あの怖いお兄さんがすいませんって言ったぞ❗️お爺ちゃんスゴい❗️〉

ボクのお爺ちゃんは頭が良くて機転の利く人だったのだ。相手の神経を逆撫でするような言い方はしなかった。

〈それが人にものを頼む時の言い方か❗️自分が貸しているペンチを取りに来るんならまだしも、お前は人にモノを借りに来たんだろ❗️なんじゃその口の利き方は❗️〉

と、そう言いたかったに違いないのに、角を立てずに一言でそれを表現したのだ。

〈ほぅ❗️あんたんとこのペンチがワシんとこへ来とったかいのぉ❓️〉

いま思い出しても凄いお爺ちゃんだなぁと思う。

ところで、お爺ちゃんと隣のお兄さんの会話を、敢えて当時のままの広島弁で再現したのだが、広島弁独特の微妙なニュアンスが皆様に伝わっていればいいのだが・・

・・・・・・・

さて、全くの余談になるが、過日、そのお兄さんは仲間と結託して銀行強盗を働き、捕まってしまったのだった。盗んだ金は100万円だったらしい。

強盗なんかせずに、ダメ元でもいいから、それこそ「100万円貸して貰えんかいのぉ❗️」って言えば良かったのに・・・


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