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【救急救命士の日々】

長男は消防士をしている。現在は消防の部署に戻っているが、以前は救急の部署に配属されたこともあった。

最近では、救急レスキューの内情を、YouTubeチャンネルでブチまけている現役の救急隊員がいて、如何なものかと疑問を感じたりもしているのだが、ここでは、息子から聞いた話を、許される範囲で書いてみようと思うのである。以前にも似たようなことを書いたようにも思うのだが、改めて書いてみることにする。

消防士ともなれば、火災現場で黒焦げになった〈焼死体〉に遭遇するのは当然としても、片や救急隊員が現場で見る〈交通事故での怪我人や遺体〉〈水難事故の水死体〉〈孤独死の腐乱遺体〉などは、火災現場以上に凄惨な場合が多いのだという。

息子が救急車に勤務し始めて間も無い頃である。初めて腐乱死体の現場を体験した時には、気持ち悪さもさることながら、強烈な匂いに耐え切れずに嘔吐したそうだ。新人は誰でも吐くそうだが、それでも色々な現場を経験していくうちに慣れてくるんだという。確かに毎回吐いていたんでは仕事になるまい。

さて、その日も救急出動の指令を受けて現場に駆けつけた息子たちであった。様子が変な家があるという通報なのだった。

その日、息子は大先輩と一緒だったのだが、まだ新人の息子を気使ったのか、その大先輩が先頭を切って家の中に入っていったんだそうである。

先輩はどんどん奥に進んで行って、ある部屋のドアを開けた瞬間であった。大先輩がヘナヘナと床にへたり込んでしまったのだ。

大先輩の目の前には〈首吊り死体〉がぶら下がっていたのである。ドアを開けた瞬間、顔と顔とが鉢合わせになり、百戦錬磨の大先輩と言えども、流石に耐え切れなかったという訳なのである。

因みに、救急救命士YouTuberと息子が共通して悲惨だというのが、線路に飛び込んでバラバラに飛び散った、死体というか肉塊というか肉片なのだという。

救急隊員は日夜そんな仕事をしているのであるが、救急車にはもうひとつ怖いことがあるのだという。それは赤信号の交差点を突っ切る時なのだ。

息子が言う。

「いくらサイレンを鳴らしてマイクで知らせても止まってくれない車があるんだよ、実際に事故があったし・・」

息子の話を聞くにつけ、救急隊員には、改めて感謝をしなければならないなぁと思うのである。

そう言えばつい先日である。腸閉塞で救急搬送して貰った僕なのだから、尚更、感謝しなければならない。


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