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【滝】

親父おやじが50年前に建てた実家に戻って来てから、かれこれ10年の歳月が過ぎた。

50年も前の家は流石に傷んだ所が多くて、昨年来よりリフォームというか修繕というか、そんなことを施してきたのだが、つい先日リフォームの工事が終ったのでホッとした。

ところが、工事が終った2・3日後、家で寛いでいた時である。

屋根の上を誰かが歩くような音がするのだ。そんな筈がある訳がない。不審に思って耳を傾けていると、今度は雷のような音が聞こえてきた。

〈んっ❓️なんだ❓️〉

確認の為に庭に出てみると、天気予報に反して結構な雨が降っていた。考えてみれば、リフォーム後、初めての雨だ。しかし、雨は降れども雷の気配なんか一切ないし、況してや屋根の上に人なんている訳がない。

〈じゃあ、さっきのドドンガラン❗️っていう音はなんだったんだ❓️〉

訝しく思っていたら、またドドン❗️と音がした。屋根の方から音がしているのは間違いがない。

雨脚が強くなった。

傘を出すのも面倒なので、僕は雨に打たれるのは覚悟して、そのまま道路の方まで出て遠くから屋根の上を眺めてみた。

するとどうだろう。屋根の端々から、滝のようになった雨水がといを飛び越えて、丸でスキーのジャンプ競技のような勢いで遠くまで飛んでいっているではないか❗️

樋を飛び越えた2階の大屋根の雨水が、1階の屋根を直撃してドタンドタンと大きな音を立てているのだ。

〈うわっ❗️音の原因はこれかぁ❗️〉

うちの屋根は新築当時に流行はやった「亜鉛鉄板葺き」なのだ。その塗料が劣化したので、実は今回塗り直した訳である。

塗り終った時に、以前と違ってヤケにテカテカした塗料だとは思っていたのだ。訊けばシリコンが混ざった塗料で、耐久性と撥水性に優れた塗料なんだということだった。

今回はその撥水性がわざわいをもたらしたのだった。屋根が、ワックスをバンバンに掛けた車のボンネットのようになって、雨水が樋を飛び越えて滑り落ちてしまうのである。離れの建物と繋がっている渡り廊下や、その界隈の壁やサッシもビチョビチョに濡れ捲っている。挙げ句には、お隣の家の庭にまで雨水が飛ぶ始末だ。

ことの顛末を工務店と塗装屋に連絡すると、両者が直ぐに飛んで来てくれたのだが、その時にはもう雨が上がっていたので現状を確認することは、残念ながら出来なかったのである。

2・3週間経ったら塗料が落ち着いてくるかもしれないから様子を見てみて下さい、という実に説得力のない説明を残して業者たちは帰っていったのだが、耐久性がある塗料が2・3週間で変るとはとても思えない。

当然、「滝の屋根」が直らない限りは支払いは出来ないということになる。

最悪、塗り直しになったとしても、当初の見積もり以上の金額を支払うつもりは、勿論ない。


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