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【デザートの八朔】

いてぇ~」

家内が1個の〈八朔〉を持ってきた。

「えぇ~っ❗️面倒臭めんどくさいなぁ」

「アタシ手が痛いから剥けないのよぉ~父さん剥いてよぉ」

ところで、〈八朔〉というのは外の皮が分厚くて固くて、剥くのに一苦労する果物である。丸まった〈センザンコウ〉か〈アルマジロ〉みたいに、〈八朔〉の防衛力は凄まじい。

けれども、仕方がないので剥くことにした。

まず、〈八朔〉の北極の位置に親指の爪を立てる。すると〈ヘソ〉が飛んでいった。そして固い皮になんとか指を突っ込んでがしていくのだが、両手の指先を汁だらけにしながらやっとこさで外側の皮を剥くことが出来た。爪の先には皮と実の間にある白いのがいっぱい詰まってしまった。

次に、裸になった〈八朔〉の実の回りに付いている〈白い〉のを剥がさなければならない。悪戦苦闘するのだが、敵もなかなか渋といのだ。しっかりとへばり付いていておいそれとは取れない。

しばしの格闘の後、白いのがなんとか取れて〈実〉だけになった。これを家内と半分こにしなければならない。

〈八朔〉の北極と南極に人差し指を突っ込んで解体を試みようとするのだが、そこには1mmの隙もない。下手をすると突き指をしかねないくらいだ。

それでもなんとか指が通って〈八朔〉を2分割にすることが出来た。

「おい、剥けたぞぉ~食べようかぁ」

「わっ❗️ありがとう」

しかし、この期に及んでも〈八朔〉は小袋に分けられることに抵抗を示すのだ。小袋と小袋の間の接着力は強烈で、なかなか剥がれてはくれない。力を入れ過ぎると中の細胞袋が潰れてしまうし・・・

やっと1つになった小袋の稜線上に、糸切り歯でキズを付けて薄皮を剥がして拡げる。すると端の薄皮が袋状になってしまって、そこだけ身が外に出ないで小袋の中に残ってしまっている。これが食べ難い。

そして更に厄介なことに、拡げた中身の真ん中には〈種〉が数個入っているのだ。それを箸の先で退かしながらやっとのことで実を頬張る訳である。

だから家内も僕も無口になって食べている。〈八朔〉って、丸で果物界の〈蟹〉だ。手はビチャビチャになるし、食べるのが実に面倒臭いのである・・・とは言え、〈八朔〉はとっても美味かった。


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