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【名案】

小学校の同じクラスに釣りが大好きな友達がいた。子供のくせに釣りに関する技量と経験はたいしたもので、よく大物を釣った自慢話をしていたものだ。

ある日、近くの川でそれはデッカイ鯉が釣れたという噂が立ち、釣り人魂を刺激されたその友達は僕を誘ってきた。

「今度の日曜日に釣りに行こうやぁ、こないだ大きい鯉が釣れたところ。僕らも釣れるかもしれんし」

「うん、行こう行こう❗️」

「鯉は朝まだ暗いうちに行かんと釣れんからな。朝の3時はどう?」

「それまだ夜じゃん」

結局、早朝の4時に僕の家を出発することになったのだが、そんな時間に起きる自信などなかった。

「僕、起きれんかもしれん、どうしょうかぁ、目覚まし時計も持っとらんし・・・そうじゃ、僕、2階に寝とるんで、足の親指にタコ糸を結んで先に重りを付けて窓からぶら下げとくから、朝、引っ張って起こしてくれん?」

「うんわかった!まかしとけ!」

・・・・・・・・

さて、約束の日曜日の朝がやってきた。眠いのを我慢してなんとか起きたのだが窓の外はもうすでに明るいではないか。

《あっ❗️釣りに行く朝だった!》

時計を見たらもう7時を回っている。慌てて起き上がって窓を開けると階下で友達が座りこんでいた。

「ゴメン❗️起きれんかったぁ」

するとタコ糸の片われを手に持った友達が言った。

「タコ糸引っ張ったら切れたでぇ」

見ると足の親指から伸びたタコ糸は屋根瓦の角で切れている。

出遅れてそれでも釣りに行ったのだが、もう釣れるわけがなかった。





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