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【白子】

小倉に住む弟が、釣った〈鮎〉を、わざわざ広島まで持って来てくれた。弟は〈鮎の友釣り〉が大の趣味なのだ。

熊本を流れている球磨くま川の支流:川辺かわべ川で釣ってきたという〈鮎〉は、〈秋刀魚サンマ〉と見間違える程の立派な物だった。

その夜、早速〈塩焼〉にして食べた。

丸々と太った〈鮎〉は、最高に美味うまい。〈鮎〉は基本的に川の石に付着している〈苔〉を食べるので、普通の魚と違って生臭さのない魚である。〈胡瓜〉〈西瓜〉のような薫りがするので〈香魚〉と呼ばれたりもする。臭みがないから内臓も食べるのが〈鮎〉の食べ方であり、内臓を食べなければ〈鮎〉を食べる意味が半減すると言ってもいいくらいである。只、内臓には砂粒が混じっていることがあるので、それだけは注意が必要だ。

家内は先程から「美味しいね❗️」を連発しながら食べ続けている。

「父さん〈鮎〉なんて贅沢だよね。●●さんがいるから食べられるのよね」

「そうだよな・・こんな立派なヤツを料亭で食べたりしたら、とてもじゃないけど1尾¥1.000―でも喰えんど」

「そうだよねぇ・・・ホラホラ父さん、これ見て❗️アタシの卵がいっぱい入ってるよ」

家内はそう言って箸で摘まんだ大きな白い塊を見せた。

「えぇ❓️・・あっ、それは白子しらこじゃ」

「卵じゃないの❓️じゃぁ白子ってのはなんなの❓️」

「白子を知らんのか❓️」

「白子は知ってるわよ❗️」

「白子は精子じゃ」

「セェシ❓️」

「そぉ、精子、雄の精巣じゃ。その〈鮎〉は雄じゃ」

「白子って精子のことだったん❓️」

3人も子供を産んでいるクセに、家内は長年、〈白子〉のことを〈卵〉だと思っていたようである。

〈えぇ~~っ❗️❓️〉


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