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【蒲鉾工の恩返し②】
今までは、働いたら給料を貰っていたのに、今度はそうじゃぁない。
会社に行って、一生懸命に窓ガラスを拭いて、机を掃除して、機械を掃除して油を差して、便所掃除をしても、誰も給料をくれない。
けれども、彼は貯金を下ろし下ろし、それを40日間続けたのである。
・・・・・・・
そんなある日のこと・・・
〈蒲鉾部門〉の事業を拡張したいからと、倒産したその蒲鉾工場を買うために、潰れた会社の社長を訪ねて来た、ある大きな会社の社長がいた。
ところが、買いに来た社長がビックリしてこう言ったのだ。
「私は今まで、随分と潰れた工場を見てきましたが、潰れた工場は、窓ガラスは割れているわ、工場の中は空缶や瓶やガラスの破片で足の踏み場もないのが普通です。事務所の机は埃だらけ、引き出しはみんな壊れてどうしようもないというのが、大体潰れた会社の工場の姿なんです。ところがお宅の工場ときたら、ガラスは綺麗、機械はピカピカ❗️こりゃどういうことなんですか❗️❓️」
すると、潰れた会社の社長が言うのである。
「そうですねぇ・・ウチの会社に変なのが1人おりましてですねぇ。この会社には恩がある。だから新しい就職口が見つかるまで、毎日弁当を持って、掃除に来てくれてたんです」
それを聞いた大手の社長は驚いた。
「今どきそんな人間が日本にいるんですか❗️❓️ 社長❗️その男を付けて譲ってくれるなら、この工場をあなたの言い値で買いましょう❗️」
・・・・・・・
潰れた方の社長は、その晩早速その男のところへ行って事情を説明したそうである。
「・・という訳だ。君、あっちの会社へ行ってくれんかね。君が付いて行ってくれるなら、工場を私の言い値で向こうの社長が買ってくれるんだ」
社長が頼みに来たのである。
「社長さんがそう仰るならやらして頂きます」
・・・・・・・
数日後、その男と面談した新しい会社の社長が言ったそうである。
「私はねぇ、大勢人を使ってきたが、君のような人間を見たことがない。君のように恩を感じて会社を大事にする人間は見たことがない。君のような人間にこの工場を任せたいから、すまんけれどもね、ここの工場の責任者になってくれんか」
晴れて工場長に抜擢され、給料も3倍になったその男は、直ぐに宗教家のところに出向いて行って、涙を流しながらお礼を言ったという。
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現代版〈お伽噺〉のようなこの話は、本当にあった話なのである。
(立川忠義氏講演より引用)
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