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【おじいちゃんの掛け軸】

子供の頃、僕が寝ていた部屋には小さな床の間があって、そこには掛け軸が掛けてあった。どうせ安物の掛軸だろうが、おじいちゃんが数幅すうふくの掛軸を持っていて、それらを適当にローテーションしては床の間に飾っていた。

その中の一幅いっぷくに、滝の下で泳ぐ〈2匹の鯉〉が描かれた掛軸があった。

ところが僕は、その〈鯉〉の掛軸が怖くて仕方がなかったのである。

何故か・・・

夜寝る時、僕の布団はその掛け軸のそばに敷かれていて、寝つくまでの間、ついついその〈鯉の掛け軸〉の方に目がいってしまうのだった。

そうして見詰めていると・・・ゆらゆらゆらゆらと、鯉の尾ヒレが動き出すのだ。

怖くて怖くて、僕はトイレに行くのも我慢して、布団を被って寝ていたのである。


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