【眼科に行った男】
免許証の更新が近付いてきた。
また厄介な視力検査を受けなければならないのだが、なまじ〈大型免許〉を持っている僕は、黒丸の切れた位置を見極める通常の視力検査に加えて、2本の黒棒の間を前後に動く黒棒が真ん中に来たことが確認出来るかどうかの〈深視力検査〉という検査を、更新の度に受けなければならないのだ。
普通の視力検査では裸眼で合格する自信があるのだが、この〈深視力検査〉はなかなかに厄介なのだ。まぁ要するに〈深視力検査〉で合格するかどうかが心配なのである。
ところで、実はここ10年来のことなのだが、左目が微かに霞んで視えるように感じていて、軽い〈白内障〉にでも罹っているんじゃなかろうかと、チョッと心配をしている。
免許の更新のこともあるし、ここはひとつ眼科で検診を受けてみようかと思い立った訳なのである。
・・・・・・・
という訳で眼科を訪れたのだが、人生で2度目の眼科ということになる。
さて診察である・・
視力検査に続いて左右の眼の写真撮影と眼圧を計ったら、特に異常は見当たらないという結果が出た。視力は右が1.5で左が1.0だった。濁りも無くて〈白内障〉ではないという。
先生が仰るには・・
「おかしいなぁ左右とも異常はありませんけどねぇ・・綺麗ですよ」
「はぁ、そうなんですか・・」
「じゃあ、眼の奥の方を診てみましょうか。眼底写真を撮りますので準備が出来るまで待合室で待ってて下さい。また声を掛けますから」
「はい、よろしくお願いします」
暫く待った後〈眼底検査〉が始まった。
・・・・・・・
〈眼底検査〉は眼の奥を撮影するために、強烈なストロボを照射されるというもので、撮影後、暫くは白い残像が残った。
眼底撮影後の診察が始まる。テーブルのモニターには、左右の眼底写真が写し出されている。
先生が結果を伝えた。
「緑内障ですね」
「えっ❗️白じゃなくて緑内障なんですか❓️」
「そうです。緑内障です」
緑内障と聞いて僕は驚いた。
問題の箇所を指しながら先生の説明が続く・・・
「ほら、眼の奥に黄色い点があるでしょ❓️」
「はい」
「そこから沢山の細い血管が出ているでしょ。これが視神経・・」
「はい」
「で、この真ん中の黄色いところが凹んでるんですが、左側の方が少し大きくて窪みが深いんです。それが原因で神経が圧迫されて視力が落ちるんですよ」
「はぁ、そうなんですか・・」
「右側は正常なんですが、左の神経が少し細くなってるでしょ❓️」
「はい」
「だから少し暗く視えるんです。次回、視野の検査をしましょう」
視野の検査をすることになった。
・・・・・・・
次の予約日に〈視野検査〉をした。
結果は、やはり右側の左下の視力がチヨッとだけ弱いということが分かったのである。
「分かりますか❓️ここら辺が少し視え方が弱いですね」
「先生、手術をするんですか❗️❓️」
「いやいや、手術は最後の手段。薬を出しますからそれで様子を見てみましょう。眼圧を下げる薬です」
「眼圧を下げるとどうなるんですか❓️」
「圧迫されている神経が楽になるんですよ。今の眼圧が14ですから、10を目標に2週間点眼してからまた診察に来て下さい」
「はい、免許更新に差し支えが無さそうで安心しました。ありがとうございました」
・・・・・・・
そんな訳で、今、処方された点眼薬を毎日差しているのである。視力が回復することは無いようだが、進行を止めることが出来るらしい。現在の視力が維持出来るのなら全く問題がないので一安心をしている次第である。
「大腸癌も初期だったし、緑内障も初期で見付かってよかったよ。薄毛も初期だし・・」
家内にそう言うと・・・
「薄毛は初期じゃないよ」
というツレない言葉が返ってきた。
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