現地に行くことの価値と意味
2023年3月上旬に3泊5日の日程でベトナムのハノイまで調査出張に行ってきました。コロナ禍第一波の2020年3月に予定していたベトナム渡航を断念してからちょうど3年。ようやく戻ってくることができました。
3年間も現地に行くことなく自習やオンラインでベトナム語学習を続けていると、さすがに「何のために勉強しているのか」が曖昧になってきます。目的が見えなくなってくると、今度はいくら勉強しても語学レベルが停滞してしまう「化石化」という現象に片足を突っ込むようになります。それでも3年間をなんとか耐えて「今のベトナム語力」を試す機会がようやく来たのですが、既に日々の学習に食傷気味でしたので出発時はそんなに気分は高まっていませんでした。
そんな寝ぼけた頭が目覚めたのは、ハノイのホテルに到着して窓を見た瞬間。大気汚染にまみれた都市の風景が広がっています。
ああそうだった、本当の語学力が問われるのは「日本とは全く違う過酷な環境の中で、時間と体力の限界を常に気にしながら、自分の目標を達成しないといけない時」だった。このことに気付いてから帰国便が日本に着くまでの間、体調を崩し続けながらも最大の目的であった研究文献を収集し、合間に街中のベトナム語を集めたり現地の食事を楽しむという超タイト&タフな活動を駆け足で進めました。
本当に短い期間しか滞在していないのに実に様々な疾患が出てきたため、帰国後の今は治療のために病院周りをする羽目になっています。それでも、ホテルの窓の景色を見た瞬間に覚悟を決めて、やるべきことは全てやり切りましたので今回の出張調査は大変満足しています。特に、文献収集のために訪れた国家図書館で司書の方々とベトナム語でうまく交渉できたことは、これまでの地道なベトナム語学習が全て報われるような経験でした。
私自身、語学は「使ってこそナンボ」だと思っています。ベトナムの人たち一人一人と話をしていくと、みなさん親切に色々なことを考えてくれている一方で、こちらの意図が読みきれずに困惑していることも珍しくありません。そのような日常的なすれ違いを空気を読んだフリで曖昧にやり過ごしたり適当に推測して解釈(誤解)するのではなく、しっかり語学力を鍛えて相手の意図を問い自分の意見を正しく伝えることで乗り切ることこそが語学の醍醐味だと信じています。
今回の出張は全ての交渉が基本的にうまくいったという点で、これまでの学習の成功を確認し、今後はより高度なことができるようになりたいという新たな刺激を与えてくれました。語学はやはり自宅では完結しないものですね。
この記事の残りは、写真をメインにしながら2023年春のハノイを紹介していきます。ハノイは何度行っても大変魅力的な街です(大気汚染さえ無ければいいのに…)。
写真で見る2023年春のハノイ
最初に泊まったホテルはHồ Tây(西湖)の近くで、川エビのフリッターBánh tômが有名です。Phủ Tây Hồ(西湖府)という大きな祠の前の参道はBánh tômのお店がたくさんあります。
大気汚染がひどいため風光明美とはなかなか言えない西湖ですが、釣りをしている人がいたり船が浮かんでいたりとそれなりの風情はあります。でも、私は中心部にあるHồ Hoàn Kiếm (還剣湖)の方が好きですね。
街中を移動する時はタクシーで大まかな拠点に降りてからは、基本的に徒歩で回っています。バイクタクシーもあるにはあるのですが、目的地もなく散策したり偶然通り過ぎた美味しそうな屋台に立ち寄りたい時にはあまり向いていません。
ハノイで好きな通りといえば、旧市街の西端にあるHàng Da通り。いつも海外からの観光客で溢れている旧市街の中では比較的落ち着いていますし、ランドマークのChợ Hàng Da (ハンザ市場)も趣があって毎回写真を撮っています。すぐ近くを平行しているPhủ Doãn通りも美味しいお店が多くてポイントが高いです。
帰国後のベトナム語学習のためにも、気になった看板は欠かさず撮影するようにしています。日本にいては考えつかないような物でもベトナム語になっていますので、写真を撮っているだけで勉強になります。
ハノイも海外からの観光客が増えてオシャレなカフェやグッズが買えるようになりました。流行りのCộng Cà Phê(コン・カフェ)もそうですがスタバにもベトナムオリジナルのグッズがありお土産には困りません。
今回は国家図書館での図書収集と複写申請が主目的でしたので、本屋さんにはあまり行きませんでした。「本屋で自分に合った本を探す」というのは体力と時間をとにかく使う作業なので、時間が限られている時には十分にできません。
語学を勉強していて行き詰まっている方は、そろそろ現地に行ってみるのがいいと思います。私も机の上での地道な勉強は大事だと思いますが、現地に行って「学習の成果を実感する」「努力が報われたと感じる」機会を作ることはそれ以上に大切なことだと思っています。そういう経験を積んでいくと、語学が生きがいになりますよ。