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2022年 外国語のアウトプットを考える。

例年、新しい年を迎える際には「今年の語学の目標」を大まかに立てることにしています。ここ数年は「新しい研究プロジェクトでベトナム語の論文や書籍を大量に読む必要があるため、読解力を集中して強化すること」を目標にしてきました。幸い2021年で目標達成にメドがついた感じなので、2022年は新しい目標を立てることにしました。それは「中国語とベトナム語のアウトプット能力を強化すること」です。

語学に関する目標は色々とありますが、「アウトプットを本気で強化しよう」という目標だけは相当の覚悟がないと立てられないのは私だけでしょうか。アウトプット、正確には「話すこと」と「書くこと」のトレーニングはとにかく間違えることから始まります。たくさん間違えた上で「何を間違えたのか」をネイティブに指摘してもらって修正を繰り返すのが王道ですが、真面目に取り組めば取り組むほど「なんで何回も間違えてしまうんだろう」とネガティブな感情がずっと付き纏います。また、インプット(読む・聞く)の練習と比べるとアウトプットの練習は一旦中断するとすぐに元の状態に戻ってしまうので、進歩を実感するためには時間もお金も集中的に投下しないとうまくいきません。

そして、アウトプットを鍛える際には「自分にとっての語学ニーズ」にうまく合っていないと成功がまず見込めません。どういうことかを説明するために、私自身の今までの外国語によるアウトプット経験を振り返ってみようと思います。

これまでの外国語のアウトプットとアンバランス

私は研究活動を始めたばかりの頃から、考察対象が中国語でもベトナム語であっても外国語でアウトプットを出す必要がある場合には常に英語を使っていました。理由は単純で「自分の論文の読者を増やす際に最も効果的なのは英語を使うこと」という言語学(もしくは学問全般)業界の常識に従っていたためです。ただ、研究活動を15年以上も続けていると「英語を使って発表や論文をいくら作っても、本当に内容を理解したり興味を持つのは中国系の研究者だけだ」という事実に気づいてきます。たとえ英語を使って発表したとしても問題意識や興味関心がそもそも異なる人は読者になる見込みが少ないですし、中国語やベトナム語を研究している私と問題意識を最も共有できるのは中国系の研究者ばかりというのも至極当然な話です。普段から中国系の研究者との交流はメールなら英語を使うこともありますが直接会った時は自然と中国語を使います。下手な英語を無理やり使うよりも中国語で交流をした方がお互いにリラックスできますし親近感も増すような気がします。

そういうわけで「論文・発表は英語、会話は中国語」と臨機応変に使い分けるスタイルで長く落ち着いていたのですが、このやり方ですと「英語のスピーキングと会話」に弱点があるため国際学会で英語発表をするたびに質疑応答でビクビクしないといけません。以前は中国語で発表ができる学会の種類と数がそもそも少なかったので、応急的にスピーキング訓練をしてから英語の発表に臨んでいたのですが、英語という言語には大して興味を持っていないこともあってスピーキングのスキルが蓄積することがなく発表が終わると即座にリセットしてしまう状態でした。

しかし、このようなアンバランスな状態がいつまでも続くと「国際学会でも研究発表はできるにはできるのだけど、手間がかかるし心理的にも重いな〜」とずっとプレッシャーを感じ続けないといけません。その一方で、2020年代に入ると中国語で発表ができる学会の数や種類が劇的に増えてきたのと同時に、中国の研究機関に属していないアメリカやシンガポールの中国系研究者も堂々と中国語で発表する機会が増えてきました。もし私も中国語で発表できるのであれば発音を含めたスピーキングもリスニングも英語よりは楽だし、少なくとも「相手の言ってることが分からない...」という原因で質疑応答で冷や汗をかくこともなさそうなので、次の研究あたりから中国語での発表に踏み出そうかなと考えています。

ニーズを見つけて初めてスタートラインに立てる

このように自分の中で「〇〇をしたいから××語のアウトプットを鍛えたい」と具体的なゴールが設定できると、「ひたすら間違いを重ねていくアウトプットの練習」にも心理的に耐えられるようになります。過去にも大学院生の頃に英語のアカデミックライティングのセミナーを非常に苦労して受講したのですが、この時も「自分の研究成果を国際的に発表するためには絶対に避けられない関門だ!」という覚悟とプレッシャーがあったのをよく覚えています。逆に英語のスピーキングが全然うまくならないのは「この人と英語で話してみたい!」という存在が全く思いつかないからです。意見を交換したいと思う人は大抵中国語かベトナム語ができるので、興味が湧かない英語をわざわざ使って話す必要が私にはありません。

ちなみに、ここまでベトナム語については何の説明もなかったのですが、こちらは完全に「趣味」の範囲に入っていますので「とにかくうまくなりたい」の一言で全て片付いてしまいます(笑)ベトナム語の言語としての面白さは以前の記事に書きましたのでご参考ください。来年(2023年)はベトナム語でも研究発表ができればいいなと思っています。