見出し画像

石膏像を作っています6月2日

忙しい日々が続いています。といっても毎年7月後半になるとすっかり静かになってしまいますから、もうひと頑張りというところでしょうか。

今日は「サモトラケのニケ」の製作風景を貼ってみます。
首、両腕を欠いているものの、大きく広げた羽根、後方へたなびく布ひだなど颯爽とした姿で人気が高い石膏像です。

(↑サモトラケのニケ像についての詳しい記事はこちら)



私の工房では3つのサイズを取り扱っています。H.38cm、H.53cm、H.105cmの三種。残念ながら、高さ2m44㎝とされる原作サイズのレプリカは作ることができません。これからご紹介するのは、H.53cm の製作風景です。(製作風景といっても、実際にはパーツの成形は完了した状態からの、組み立ての様子です。型に石膏を流し込む作業をしている時は写真を撮るのが難しいので)

かなり大きな羽根を、胴体との小さな接点で支えなければいけないため、金属のパーツを内部に6点仕込みます(写真は2体分です)。

金属パーツは、ステンレス>鉄>真鍮>アルミの順に強度が高いのですが、ステンレスは硬すぎて加工が難しかったり、鉄は石膏に触れるとすぐにサビが発生したりなど、それぞれに長所・短所があります。求められる強度、使用する場所の形状の複雑さなどを考慮して素材を選びます。このニケの場合は、アルミ、鉄、真鍮を使っています。

成形が終わった段階。右の胴体にはすでに後方の布のパーツが接続されています。

右の胴体上部に大きな穴が開いていますが、ここに羽根を接続します。胴体を成形する時は、この穴の部分に羽根から出ている金属パーツの部分を差し込むことができるだけの空間を確保できるように注意します。


二体目も後方の布が付き…


石膏のパーツ同士を接着するときは、まったく同じ石膏素材を接着剤として使用します。ボンドなどは使いません。といっても単純にペタペタ塗り付けただけでは綺麗な接続面にはなりません。最終的な製品として完成した時に、継ぎ目が目立たないように接着するためにはかなりの熟練が必要です。


左羽根が付きました。


両方の羽根の接着が完了したら、接着部分の強度が高まるのを1時間くらい待って、台座側から内部に石膏を流し入れます。この内側に流し込んだ石膏で、最初に胴体に空いていた穴の部分、内部の空間が満たされて、よりしっかりと羽根が固定されます。

こういった複雑な製品の場合は、どれくらいの強度が必要なのか?というのは難しい問題です。どんどん金属線を入れれば丈夫にはなりますが、作業はより複雑になってしまいます。製造者・販売者の我々としては、移動・輸送時の衝撃に耐えられることが必要最低条件と考えています。


ということで、このサモトラケのニケの場合は、出荷時の梱包にもひと工夫しています。

(これはH.38cmの製品の梱包の様子です)

基本的に彫像の周囲は空間を保つように梱包します。三本のヒモで本体を固定し、強度が強い場所を頼りに像を固定していきます。

内部の石膏像が衝撃を受けても動かないこと。箱全体が外部からの圧力で歪まないようにします。最終的に、この箱をさらにひと回り大きな箱の中に浮かせるような状態にして梱包します。マトリョーシカ人形のような状態になります。一見、過剰梱包のようにも見えるかもしれませんが、この梱包方法を採用するまでは、ニケは頻繁に破損事故がありました。なんとか確実にお届けできるようにと工夫した結果が現在の荷姿になっています。

高額な石膏像ですが、お部屋のインテリアとして展示したときには素晴らしい存在感です。ご興味ある方、ぜひネットショップもご覧になってみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?