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MADMAX 伝説のドーナツバイク!

公開40周年を迎えた歴史的映画マッドマックス。2019年5月19日、今も多くの人の記憶に残る ”マックス・ターン” の名シーンを演じたオリジナルの名車が、当時の姿に復元されて伝説の聖地へと帰ってきた。映画の中でマックス・ターンを演じたスタントライダーのデイル・ベンチ氏とともに、伝説のバイク復元の歴史をリポートする。日本ではマックス・ターンとして知られている例のスタントは、現地ではドーナツ・ターン、演じたバイクはドーナツバイクと呼ばれている。今回の記事の中では、現地の呼び方に倣ってドーナツバイクで統一している。

クルーンズへ

狂気のドライブイン集会の翌日。朝早くから迎えに来てくださったデイル氏に連れられて、私はクルーンズへと向かっていた。
メルボルン市街からは車で約1時間半。
かつてゴールドラッシュで栄えた大きな街バララットを過ぎ、のどかな地平を20分走ると現れる小さな町がクルーンズ。今は静かな所だが、ここもゴールドラッシュ時代の面影を今に残している。

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映画の中でトーカッターギャングたちが集まったあの街並みが今も。

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こうしたオーストラリアの田舎町には、異様にオシャレなカフェがあったりする。早くから集まったメンバーは一息、暇さえあればコーヒーをテイクアウトするのがオーストラリア人のスタイルだ。

2台のドーナツバイク

さて今回のイベントは、マッドマックス撮影当時に実際に使われた伝説のドーナツバイクが発見され、レストアが完了しめでたく当時の状態に戻ったということで、最初のオーナーであるデイル氏とともに聖地クルーンズを走らせようという催しだった。
デイル氏の話によるとイベントとして大々的に開催するわけではなく、20人ぐらいの仲間や取材陣を招いてのささやかな集まりになるとのことだ。

クルーンズに到着して程なくすると、2台のドーナツバイクがやってきた。ん、2台?

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バァーン!同じバイクが2台!

写真手前は正真正銘マッドマックスに登場したオリジナル、そして写真奥に写っている2台目はある人物が所有するレプリカなのだ。

帰ってきたオリジナルバイク

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左からジェイソン、デイル、ジョー。ジェイソンとジョーが、このバイクの現在のオーナーだ。

41年前、スタントライダーのデイル氏は新車でこのZ900を購入し、多くの改造を施しマッドマックスの撮影に使った。例のドーナツターンの案は、デイル氏自身がジョージミラーとバイロンケネディに写真を見せて提案したのだという。撮影当時部屋があったのは出演者のみで、デイル氏はバーの床で寝ていたそうだ。なんともマッドマックスなエピソードである。

デイル氏が再びこのバイクの存在に気付いたのは今から約10年前の2010年。当時からマッドマックスで使われたドーナツバイクである可能性が高いと考えられていたが、外観も変わっており、この10年間は証拠がないままだった。
現在の所有者であるジョーとジェイソンは5年ほど前にこのバイクを発見し購入、最初のデイル氏から数えて5番目のオーナーとなった。この新しいオーナーがデイル氏に連絡を取り始めてからもしばらく大きな進展はなかったが、今年になってデイル氏の友人らの協力により車体の登録記録を調べることに。調査の結果、今年の3月、このバイクが正真正銘41年前にマッドマックスの撮影で使われたものであるということが確認された。報告を受けたジョーとジェイソンはこれまた多くの協力を得てたった9週間でバイクを修理し、撮影当時の状態にまで復元してしまった。

とはいえ40年も前の映画。撮影当時はスマートフォンもデジカメもなく、現在に残された資料は非常に限られており、バイクの再現にあたっては多くの謎があった。

その謎を解くヒントのひとつが、今回やってきたレプリカバイクにある。

Yoshi登場

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レプリカバイクの持ち主はなんと日本人の男性。物凄いマッドマックスファンにして、デイル氏の友人。日本とメルボルンにそれぞれ同じレプリカを所有しているナイスガイだ。

彼はまず日本において1台目のレプリカバイクを制作。制作にあたってデイル氏から多くの資料提供を受けたが、如何せん外観に関する資料が心許なく、自力で映画のブルーレイをコマ送りで研究。タンクのペイントや細かいデザインを完成させた。この研究は後に、オリジナルバイクの復元にあたって大いに参考にされたという。

今回登場したのはメルボルンに置いてある2台目のレプリカ。40周年記念イベントに合わせてガムツリー(オーストラリアのクラシファイド掲示板)で購入したZ900を改造。ダチの家のガレージに保管し、メルボルンに来てこいつでツーリングするのだそう。最高の人生としか言いようがない。早くこうなりたい。

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取材を受けるYoshi氏。

取材陣

今回のイベントには複数の取材が入っていた。上の写真でYoshiにインタビューしているのが地元のテレビシリーズ Classic Restos の "Fletch" (Mark Fletcher氏) この番組はオンラインでも見ることができる。第41回はドーナツバイクの特集。実際にクルーンズを訪れ、イベントに密着したFletchによるアツいインタビューは必見。

リンク:The Mad Max Donut Bike & Crankshafts: Classic Restos - Series 41


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Eddieは現在制作中のドキュメンタリー「Beneath Outback Of The Sun」の監督だ。彼のクルーは昨日のドライブイン上映会にも、3月のアニバーサリーイベントにも、そして日本のマッドマックスイベントにも取材にやってきた。大きな情熱をもって世界各地のマッドマックスファンたちの歩みをドキュメンタリーとして纏めるべく取材しているナイスガイ。彼も若くしてマッドマックスに魅入られた男である。

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ささやかな集まりだと言っていたが、やってるうちに噂を聞きつけて周辺の街バララットなどからおそらくいつものマッドマックスファンが集まってきた。映画の公開から40年、時代は流れ、ファンたちはインターネットで繋がっている。

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ちなみに、ヘルメットもオリジナル。歴史が刻まれている。

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この歴史的な小さな町は、何回来ても変わらず魅力的で、何回来てもマッドマックスだ。マッドマックス2のロケ地はメルボルン市街から車で最低10時間も離れた砂漠のど真ん中のとんでもない僻地にあり、容易にアクセスできないのだが、初代マッドマックスのロケ地はこのように、比較的訪問者に優しい。ビジターセンターもあってお土産なんかも買えるので、観光客として堂々と訪れよう。

のんびりと時間は過ぎ、イベントは4時ごろに解散となった。帰りの車でデイル氏に、撮影当時のメルギブソンの様子について聞いてみた。これは前回ナイトライダーと遊んだ時に一緒だったモナーロおじさんからの疑問のパクリである。ファンはみんな気になるのかもしれない。メルはとてもまじめで、非常に役に入り込んでおり、まるでマックスみたいに物静かだったと語ってくれた。こういうところから時には聞いたこともない情報が飛び出してくるので、関係者との会話は全く油断ができない。

このようなイベントに参加できた感謝の気持ちの表明として、せめて日本語のリポートとしてまとめてみた。インターネットの片隅で、誰かに楽しんでいただければ幸いである。




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