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帝都に咲く花7 〜立志編〜

以下の文章は戦争小説です。基本的に一般的な世界線とは異なり、
著者の趣味、妄想、思想も含まれますので諸々のデータは
史実のものとことなる場合がございます。
その点を理解したうえでお読みくだされば幸いです。








緋月邸から軍用車両で2時間30分。

帝都からは遠く離れたはずだ。
私は五感を満足に使うことが現状できていない。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、これらを使うことは完全にできていない。
味覚は現状物を食していないので使用できない。

軍用車両に積載され、
目隠しをされ、耳栓をされ、鼻に詰め物を
入れられ、手足を縛られた挙げ句なにかの布でくるまれて、、、、
現在に至る。
どうしたものか、、、、、、、。




数時間前。


遠藤に伝えるべきことを伝えてすっきりした気持ちで
将校行李を持って自宅前で待っていた。
緋月邸は森の中に位置し、空気がとても美味だ。
この空気も吸えなくなるかと思うととても寂しかった。
ただ、今朝はまた、洋風甘味喫茶へ遠藤を連れて行った。
今度は遠藤も粘った。ちょこれいとぱふぇ、ちょこれいとぱい、
ちょこれいと珈琲を撃滅した。ちなみに私は三倍の敵野戦軍を
撃滅した。今朝、彼女は言ったのだ。
笑って送り出しましょう、と。
そう誓った。

予定の三時間前に車は到着した。
黒塗りの軍用車両三両が到着したかと思うと
そのうち前後二両から屈強な男が出てきてみさとを拘束。
遠藤はなにがなにやらわからない様子だったが
見知らぬ男が我が子同然の大事な、愛してやまない人間を
なんの挨拶もなく、眼の前から連れ去ろうとしていることに
ひどく怒りを覚え、男たちを必死に止める。
無論みさとも抵抗した。が、みさとは4人の男に拘束されているのだ。
とても動けるような状況ではない。

みさとが叫んだ。
「お母さん!」と。
実の母ではない。遠藤を呼ぶ言葉としてはそれで十分だった。
遠藤はどこから出したのか、いや、おそらくこういう状況も
想定していたのだろう、不運にもそれなりの覚悟を持っていた。

懐からナイフを出し抵抗を試みた。
みさとの名を呼びながら。必死に。
骨ばった皮膚には血管が浮き出ていた。
ナイフを振り回して男を殺そうという遠藤は
涙を流しながら、しかし、鬼のような形相で文字通り鬼婆だった。
しかし、鬼婆には一人の子供がいた。
鬼婆は化け物であったが子供の母であった。

そして子供はそれ以上を望まなかった。
本当は母と仲良く暮らしたかっただけなのだ。

だが正直になれなかった。
それ故に永く公開することになり、結果的には彼女を押した。
強く、押した。

ただ、不運にもその場にいるすべての人間は義務を背負っていた。

遠藤は娘と対話する義務。
みさとは足掻く義務。

そして男達にはみさとを連行する義務があった。

男は、もしくはこの男の上司はこの状況を想定していたのだろう。
想定内にありながらこのようなことを行った。
悪逆非道也。
男は懐から拳大の黒い物体を取り出し、遠藤に向けた。

無音。
遠藤の表情は見えなかった。

そこから先は記憶がない。

私は現在車に乗っているはずだ。





「帝都に咲く花」立志編第一話は以上となります。
今後もこのように趣味全開で定期的に投稿してまいります。
小説以外にも情勢解説や、個人見解なども公開して参りますので
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