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ベンチャー投資の新潮流 ー 海外VCにおけるPlatformチームとは

こんにちは!GCP Xの堀江です。

近年、ほとんどのスタートアップにとっては、ベンチャーキャピタル(VC)との付き合いがあることは当たり前となってきています。資本政策は不可逆だからこそ、起業家は、どのようなVCに同じ船に乗って貰い、伴走してもらうのかは、とても大切なトピックだと思います。

かくいう私自身、昨年までスタートアップで働き、資金調達に奔走したことがあります。その時には、「お金をいくら出してくれるのか」がマインドシェアのほぼ全てで、調達後の事は殆ど考えられていなかったのが本音です。

必死に目の前の調達ラウンドをこなしながら、VCの方々との接点が増えていく中で、とある方から、シリコンバレー界隈では、スタートアップ側のみならず、資金提供者たるVC側のイノベーションも著しいという話を聞いたのです。

その代表例は、今や超有力VCの、a16z(アンドリーゼン・ホロウィッツ)です。彼らは、この業界における後発参入だったのですが、持ち込んだイノベーションは、投資後の企業価値向上に特化したチームの組成でした。

その後、各社がこの流れに追随してゆき、VCのいわば必須機能として、スタンダード化されていき、やがてこれは「Platformチーム」と呼ばれるようになっていきました。

本記事では、シリコンバレーを中心とするVCにおけるPlatformチームがどのようにして生まれ、どのような役割を担っている存在なのかを見ていきたいと思います。(長くなってしまったので、複数回に分けて掲載しようと思います)

Platformチームとは

海外では既に、各社のPlatformチームメンバーに特化した、クローズドなコミュニティが存在しています。

上記コミュニティが主催しているGlobal Venture Capital Platform Summitでの資料では、Platformについてこのように説明されています。

定義
VCファンドにおいて、リスクマネー供給や投資担当者の知見・ネットワーク提供を除く、あらゆる案件発掘・投資先支援に関わるサービスや活動

目的
・案件発掘における競争力の強化(他VCとの差別化、競争優位性の向上)
・投資担当者の投資活動への注力 
(Global Venture Capital Platform Summit 2018 資料より)

単に投資後の支援。というだけなく、新たな案件発掘やVC他社との差別化など、ファンド間での競争戦略上において、重要な機能と位置付けていることがよくわかります。

VCの戦略としてのplatform

なぜVCはplatform化していくのか。その背景にはa16zに代表される新興VC(10年前時点)の台頭等によって、VCの戦略に変化が生じてきた歴史があります。ここで少々前提としてのVCのビジネスや市場について触れたいと思います(HBS Case Collection, Andreessen Horowitzを参考にしています)。

VCビジネスの成功要因
a16zのManaging partnerであるScott Kupor氏は、VCとして成功するためには、以下の3要素を徹底してやること、と説明しています。

① Source the very best deals:high-potential ventures whose founders will allow you to invest
② Pick the right opportunities from that pool
③ Do everything you can to win— to accelerate the development of the start-ups

いい企業を探し出し、そこからいい案件へ投資をし、出来ることをすべて実施し成長を加速させる。眺めてみると当たり前の様にも見えますが、”founders will allow you to invest”、言い換えると起業家から選ばれる投資家であるべし、というのがplatformのトレンドに大きく関与してきたと考えられます。

Winner Takes All に近いVCの市場
VC業界の市場構造として一般的に言われる2つの特徴があります。

1. 歴史的に上位のVCのみが一貫して高いリターンを生み出してきた
「業界のリターンの95%を生み出しているのは3%のVCファームである。そして、その3%の中にいる人々は変わらない」Andy Rachleff from Benchmark

2.ビジネスはホームランドリブン
「適切な15の投資に参加することで、ベンチャーキャピタル業界の年間キャピタルゲインの90%以上が得られた」Andy Rachleff from Benchmark


これらのVCビジネスの成功要因や市場の特徴を踏まえた意味合いとして、以下が考えられます。

・業界での成功にはTop of Topに入らなければならない
・そのためには、圧倒的に良質なディールフロー (投資案件獲得のための流れ/チャネル)が必要 (良質な起業家から選ばれる投資家である必要)
・一方で、「歴史的に上位のVCのみが一貫して高いリターンを生み出してきた」業界構造の通り、勝者は勝者であり続けるため、新興含むその他のVCは何かしらの差別化がないと戦えない

ここで登場した、差別化の方策がplatformだった。というわけです。

当時の新興VCであったa16zが資金調達以外の付加価値提供であるplatformをVC市場への進出戦略として活用し、その特殊性と付加的なサービスをマーケティングすることで、知名度を高め、ひいては良質なディールフローを構築していったのです。

より具体的には、こちらの記事で紹介されている正のサイクルによって分かりやすく描写されています。

VCのポートフォリオ成長戦略の正のサイクル

VCの戦略としてのplatformは2つの効果を狙って正のサイクルを回すことだと考えられます。

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①selection effect
・VCがポートフォリオ支援(platform team)に投資すればするほど、自社の差別化要因を伝達できるようになり、当該VC固有のvalue propositionへの認知が高まる
・その効果として、VCがより有望な投資先を選択する可能性が高まることで、より大きなディールフローの恩恵が享受可能になる
・そして、より有望な投資先は、より良いリターンをファンドに提供する可能性が高い
・最終的には、よりよいリターンはVCとしての資金調達に寄与し、それがポートフォリオ支援への投資に繋がる

②VC value-adding effect
・ポートフォリオ支援(platform team)によって、より高いパフォーマンス/早い成長の可能性が高まる
・高い企業価値でのエグジット、ファンドリターンへの貢献に繋がる


一般的なPlatformチームが提供している機能概要

これまで、Platformチームが発展してきた背景にあった、業界構造を説明してきました。

次に、具体的にはPlatformチームがどのようなサービスを投資先に提供しているか、調べてみました。

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いろいろ書かれていますが、大別すると以下の6つ程に分類できそうです。

Talent
Business Development
Marketing & Communications
Community & Network
Operations
Events
その他、中にはこのようなサービスを提供しているVCもいるようです

・Sourcing
:スカウトプログラム、エンジェルリスト、シード投資家リスト
研究室/教授、ピッチアシストなど
・Office space:オフィススペース提供、オフィス移転支援
・Professional service:Legal/Taxなどの専門家サービス
・Executive-in-Residence(EIR):いわゆるプロCXO達で、投資先にCXOとして常駐し、そのCXOの役割を担うこと (一定期間限定が多い印象)

Platformは、基本的には何か具体的なサービス提供により対価を得るビジネスではなく、先述の正のサイクルに寄与するための機能です。言い換えるとその正のサイクルに寄与する活動であれば何でもあり、という事なのでしょう。

著名VCのPlatformチームの構成

更に、シリコンバレーの著名VCのPlatformチームや、PlatformのリーディングVCであるa16z等を深堀していきたいと思いますが、少々長くなってきたので、ここから先は次回の記事のコンテンツにしたいと思います。

GCP X 堀江

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