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【一億総中流時代から世帯間格差拡大時代へと】

1.貧困層が増加し続けています

昭和から平成を経て令和に至り、世の中の常識や当たり前だったことがそうではなくなったり、全く逆になったりしています。昭和の後期から平成の初期までは高度経済成長期でしたから、中間層の収入が膨れ上がり「一億総中流」と言われた時代でした。バブルが崩壊して「氷河期世代」という多数の犠牲者を生み出してその時代は終わりを告げました。そして富が一握りの富裕層に集中し始めて、いつの間にか貧困層が増え続けています。富裕層の所得が増えて非正規労働者が増えたので、世帯当たり年収の平均値の下落は少しだったのですが、年収の中央値は大きく下落しました。

2.生涯収入も減っています

『上級国民/下級国民』という本の著者の橘玲氏によると、社会が平和で安定していると貧富の格差が拡大するそうです。資産は複利で増えるので富裕層の資産は増え続けますが、貧困層は将来に不安を感じないと、豊かに生活を維持するために収入の全てを使ってしまうので、資産は何も残りません。これが2世代3世代と続いていけば、格差は益々拡大します。高度経済成長期には上場企業に入社して定年まで働いて退職金を貰ったら生涯収入は3億円~3億5千万円でした。今は2億5千万円程度でしょうか。しかも年功序列・終身雇用という雇用慣習がほとんど崩壊しかかっていますから、今後は同じ企業で新卒時から定年までずっと働ける人は大幅に減っていくでしょう。65歳まで働き続けても生涯収入が平均2億円程度という厳しい社会になるかもしれないと覚悟しなくてはなりません。

3.生活のために女性が働かざるを得なくなりました

「厚生労働白書」によれば専業主婦世帯の割合は1980年には約65%で、1995年に割合が逆転し、2018年の白書では約33%でした。この割合は今後さらに低下すると予測されています。ソニー生命保険株式会社の調査によると、「本当は専業主婦になりたい」という共働きの女性の割合は20代が53.2%、30代が35.2%、40代が35.4%となっています。生活水準を維持するために女性が働かざるを得ない世帯の数がかなり多数あることが推測できます。

4.貧困層は子世代も同じ道を辿ります

富裕層の子弟は学習塾に通えるので、有名大学に進学することも、エスカレータ式の私立小中学校から内部進学することもできますが、貧困層の子弟が有名大学に進学できる比率は低く、大学進学をあきらめざるを得ない場合もあり、卒業できても奨学金の返済という重い負担が残ります。彼らの子世代もまた親と同じ道程を辿ることになるでしょう。子世代が大学に進学できなくなると、転職を繰り返すことが多くなって、中流の中または下層の世帯からは、すぐに貧困層の世帯へとシフトしてしまいます。

5.平和な時代には格差が拡大します

アメリカの歴史学者ウォルター・シャイデルは『暴力と不平等の人類史』において、人類史に平等をもたらしたのは『戦争』『革命』『(統治の)崩壊』『疫病』であって、平和な時代にはどこでも格差が拡大していると述べています。日本国内では金融資産一億円以上を所有する世帯が富裕層とされており、野村総合研究所の調査によれば2017年には全世帯の2.4%でした。その割合は2013年から増加し続けています。日本は敗戦によって失われた300万人の命と引き換えに一度は『一億総中流』になったのかもしれませんが、今はまた格差が拡大し続けています。

6.平和で治安の良い社会を維持するにはセーフティネットが必要です

貧困が原因で犯罪へと向かう人が増え、治安が悪化する懸念も否めません。平和で治安の良い社会を維持するのには貧困層を救済することこそが喫緊の政治的課題です。雇用の安定や賃金の上昇によって収入を増やすことに目を奪われがちですが、教育、医療、育児などの負担を減らして支出を抑制することこそが、世帯間格差の解消には有効です。そして貧困が原因で命を失いそうな人を救うには、実効性のあるセーフティネットが必要です。個人の尊厳を放棄することを代償に現金が給付される生活保護制度では足りません。限界点の困窮者が救済を求めた時に最低限の衣食住と医療だけは即座に提供できるような、直接給付の仕組み・制度が用意されなければなりません。

7.世帯年収が2,000万円でも富裕層にはなれません

年収によって富裕層に分類される給与所得者は2,000万円以上とされており2020年 国税庁「民間給与実態統計調査」によると全体の約0.51%です。1,000万円以上1,500万円未満が3.29%、1,500万円以上2,000万円未満が0.68%なので、この区分の給与所得者も共働きの世帯であれば世帯年収は2,000万円以上になる可能性があります。仮にその世帯の33%(共働き女性の割合)が該当したとしても1.31%です。この数字を加算しても年収による富裕層の割合は1.82%です。しかし高額の給与所得は長期間持続しませんし、たとえ額面年収が2,000万円だったとしても、税金や社会保険料が控除されるので手取り年収は1,300万円程度にしかなりません。これだけの手取り年収があれば都心の高級マンションに居住して高級外車を所有して、子供をアメリカンスクールに通わせるというような富裕層の生活をすることはできますが、そんな生活を続けていると預金や投資はできません。1億円の金融資産を形成するのには2,000万円以上の年収を20年以上持続させ、毎年500万円の貯蓄をすることになり、その間は年額800万円の中流の生活を維持しなければなりません。給与所得者が富裕層に成り上がるのは簡単なことではありません。サービスや情報を取り扱う業種などで、少額の資本からの起業に成功すれば富裕層になれるかもしれません。そのルートからなら富裕層へと至る間口は広いのかもしれませんが、長期間持続的に利益が得られるようなビジネスモデルを構築するのはそう簡単ではありません。

8.老後に貧困層にならないために

国税庁の令和1年「民間給与実態統計調査」によると平均年収は436万円(男性540万円、女性296万円)で、年収の中央値は273~360万円(男性312万円、女性234万円)です。男女の年収を合計すれば平均値が約836万円、中央値が約546万円なので、共働き世帯なら中流の生活が維持できますが、預金や投資をするには足りません。人生100年ならば定年後の人生は30年~40年です。貯えが少しも無かったら定年後にも働き続けなければなりません。さもないとすぐに貧困層になってしまいます。国の対策が期待できないのであれば、定年後にも働くことができる準備をするか、定年までに資産を形成するか、そのいずれかが出来なかったら老後には貧困層の生活が待っています。そうならないように今からすぐに準備をしましょう。高齢者でも仕事が見つけやすい場所、都心の住まいを手に入れておくことが、安心して老後を迎えるための最良の対策ではないでしょうか。

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