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忘年会で1000本のワインのクイズに答えられます?


この記事はaisaac Advent Calendar 2023の17日目の記事です。

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はじめに


昨日(2023/12/20)、弊社の忘年会が盛大に開かれていました。
同僚たちとの軽妙なトーク、舌鼓を打つような料理、心地よいリズムの音楽。
そんな中、会のハイライトであるクイズ大会が始まりました。

最後の質問はCEOの田中さんが出題しました。

「想像してみてください。1000本のワインがあり、そのうちの1本だけに睡眠薬が混入されています。この睡眠薬は飲んだら10~20時間後に効果が現れます。では、24時間以内にどのワインに睡眠薬が入っているかを特定するためには、最低何人が必要でしょうか?」

この謎解きの答えを見つけるためのカギは、実はコンピュータ科学に隠されていました。
具体的には、コンピュータサイエンスの根幹を成す「2進数」という概念に関連しています。
2進数は、コンピュータが情報を処理する際に使用する言語で、私たちが日常使用する10進数と異なり、0と1の2つの数字だけを使用して複雑な計算やデータの表現を可能にします。
この直感的かつ強力な数学的概念を理解することは、この謎解きの答えを見つけるためだけでなく、テクノロジーの世界への理解を深めるきっかけとなります。

この記事では、2進数の基本からスタートし、このユニークなクイズの答えを探ります。

10進数から2進数へ

我々の日常生活において、数字はほとんどが10進数で表現されます。
この10進数システムは、0から9までの10個の異なる数字を使用して数を表します。
しかし、コンピュータの世界では、事情が異なります。コンピュータは2進数、つまり「バイナリ」システムを使用して、すべての情報を処理します。
このシステムは、たった2つの数字、0と1だけで構成されています。

10進数と2進数の基本

10進数の各桁は、右から左へと10のべき乗で増加します。
例えば、数値123は
1×10^2 + 2×10^1 +3×10^0として表されます。

これに対し、2進数では各桁が2のべき乗で増加します。
例えば、2進数の101は
1×2^2 + 0×2^1 + 1×2^0、つまり10進数で5と等価です。

10進数から2進数への変換

10進数から2進数への変換は、割り算と余りを利用することで行います。
例として、10進数の「9」を2進数に変換してみましょう。
9を2で割ると、商は4、余りは1です。
次に、商の4を再び2で割ると、商は2、余りは0です。
このプロセスを繰り返し、
最終的に商が0になるまで続けます。
最後に、得られた余りを逆順に並べると、9の2進数は「1001」となります。

コンピュータと2進数

コンピュータの基本原理

コンピュータは基本的に、電子的な信号を処理する装置です。
これらの信号はオン(1)かオフ(0)の状態を持ち、これがまさに2進数の基本です。
コンピュータ内部では、これらの信号が膨大な数でやり取りされ、情報処理が行われます。

なぜ2進数が選ばれるのか

コンピューターがなぜ二進法を使用するのかについてですが、
オン(1)かオフ(0)の状態のスイッチを実現するには簡単。
また、オフとオンの二つの状態しかないため、システムがある程度の干渉を受けたとしても、数字が「0」か「1」かを確実に区別することができます。
したがって、具体的なシステムの実装において、二進法のデータ表現は干渉に強く、信頼性が高いという利点があります。
これに対して、10進法を使用して10種類の状態を持つ回路を設計すると、状態を判断する際に間違える確率が大幅に高くなります。

2進数と情報処理の例

コンピュータ内での情報処理は、基本的には2進数に基づく命令の実行です。
すべての文字、画像、音声などは、内部的には0と1の組み合わせで表されています。
例えば、テキストはASCIIコードという特定の2進数のパターンに変換され、コンピュータによって処理されます。

2進数の効率性

2進数は、データを格納する際の空間効率が高い点で優れています。
これは、2進数が0と1の二つの状態だけを使って情報を表現するため、物理的にはトランジスタで簡単にオン(1)とオフ(0)の状態を表現できるからです。
この単純さが、データストレージデバイス内でデータをコンパクトに保持するのに役立ちます。
また、2進数での計算処理は、複雑な10進数を用いるよりも遥かにシンプルです。
基本的な2進数演算は、加算や減算といった基礎的な算術操作だけでなく、シフトや反転といった高速な操作も含まれます。
これにより、コンピューターは複雑な計算を素早く処理することができ、全体的な処理速度を大幅に向上させます。
さらに、2進数はエラーを検出し訂正するアルゴリズムとも互換性があるため、データの信頼性を確保するのにも有効です。

2進数とビット演算

ビットとは

ビットは情報量を測る最小単位であり、1ビットは1桁の2進数を指します。
1桁の2進数は、0か1のいずれかの値を取ります。
コンピュータはこれらのビットを組み合わせて、文字、数値、色などの複雑なデータや命令を表現します。

ビット演算の基本

以下のビット演算はコンピュータプログラミングで頻繁に使用されます:

  • AND演算

二つのビットが両方とも1であれば、結果も1になります。

  • OR演算

二つのビットのうち少なくとも一方が1であれば、結果は1になります。

  • XOR演算

二つのビットが異なれば、結果は1になります。

  • NOT演算

ビットの値を反転させます(1なら0へ、0なら1へ)。

  • シフト演算

シフト演算には左シフトと右シフトがあり、ビット列を指定されたビット数だけ移動させます:

  • 左シフト(<<):全てのビットを左にシフトすることで、値を2のシフトした回数分だけ乗算します(例: 2 << 1 は 4)。

  • 右シフト(>>):全てのビットを右にシフトすることで、値を2のシフトした回数分だけ除算します(例: 4 >> 1 は 2)。

*左シフトに関してオーバーフローという概念があります。また、右シフトには論理シフトと算術シフトがあります。本記事は割愛します。

2進数はクイズへの応用

ここまで2進数及び情報ビットの基本を理解しました。
2進数の基礎とビットに関する知識を活用して、
初めに提示された忘年会のクイズに挑戦してみましょう。

クイズ:
「想像してみてください。1000本のワインがあり、そのうちの1本だけに睡眠薬が混入されています。この睡眠薬は飲んだら10~20時間後に効果が現れます。では、24時間以内にどのワインに睡眠薬が入っているかを特定するためには、最低何人が必要でしょうか?」

解決策を導き出すには、
情報のビットとして1000本のワインを考慮する必要があります。

2の冪乗で1000以上の最も近い数は 2^10 = 1024です。
すなわち、1000本のワインを個別に識別するためには10桁の2進数(10ビット)が必要です。
各ワインボトルを2進数で表現し、各桁がテスター(10桁なので10人)に対応することで睡眠薬が混入された1本を特定できます。

例えば、
0の場合は飲まない、1の場合は飲むの前提で、
テスター1は2の0乗(2^0)の桁が1のボトルを全部飲む、
テスター2は2の1乗( 2^1 )の桁が1のボトルを全部飲む、
これをテスター10( 2^9 )まで続けます。
24時間後、睡眠薬に反応するテスターの組み合わせに基づいて、どのワインに睡眠薬が含まれているかを特定することができます。
下記のようです:

  • ワイン1: 0000000001

  • ワイン2: 0000000010

  • ワイン3: 0000000011

この場合、
テスター1(最右端のビットに対応)はワイン1とワイン3とその他2の0乗(2^0)の桁が1のボトルを全部飲みます。
テスター2(右から2番目のビットに対応)はワイン2とワイン3とその他2の1乗(2^1)の桁が1のボトルを全部飲みます。
そして、これを10人のテスター全員に適用します。

たとえば、20時間以降テスター1とテスター3だけが反応した場合、それはワインボトル5(バイナリで0000000101)に睡眠薬が含まれていることを意味します。
これは、各テスターが睡眠薬に反応するかどうかを確認することによって、特定のワインボトルを正確に識別できるためです。

よって、答えは10人です!

まとめ

この記事では、2進数の基本から始め、ビット演算の概念までを説明してきました。
コンピュータ科学において不可欠なこれらの概念は、日常生活や職場で遭遇する技術的な問題にも応用できることを示しました。
忘年会で出されたクイズを解析することで、2進数が単なる理論的な概念にとどまらず、実際の問題解決にどのように利用されるかを理解することができました。
2進数とビット演算の知識は、情報技術の世界だけでなく、日常的なパズルや問題解決にも有効ですw
今後、忘年会や他のイベントで類似のクイズに遭遇した際には、この記事で共有した2進数の概念を思い出して、チャレンジしてみてください。
2進数の理解が、思わぬ場面で役立つかもしれません。

忘年会での注意喚起

忘年会では、楽しい雰囲気の中で技術的なクイズに挑戦することが、知識の拡張や新しい視点の獲得につながる素晴らしい機会です。
しかし、この楽しみに夢中になり過ぎず、適度に楽しむことの重要性も忘れてはいけません。
飲み過ぎには特に注意し、安全に帰宅することを心がけましょう。

最後に


本記事で取り上げたクイズは、もともと「毒薬が混入されたワイン」を題材にしていましたが、より穏やかな「睡眠薬」へと変更されました。
この変更を加わった田中さんの優しさと配慮に感謝します。
テクノロジーの話題を扱う際にも、そのような人間味あふれる配慮が大切です。
これからも、技術的な話題を身近で楽しめるような内容を共有していきたいと思います。

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