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大事なのはプロセス開示。社外と協力しながら楽しむ組織づくり。ーゆめみ 栄前田勝太郎さん

組織づくりは、人間同士の関係性と向き合う仕事のためタフネスさを求められる印象があります。プロセスが見えない意思決定を結果だけ共有されると、納得できない場合もあるのではないでしょうか。細やかな配慮と精神的なタフネスさを兼ね備えながら、組織の力を向上させる仕事かもしれません。

「合意より納得」

株式会社ゆめみにて組織づくりに関わる栄前田(えいまえだ)勝太郎さんからインタビュー中にお聞きした言葉です。個人がパフォーマンス高くあるため組織に何が必要か?組織づくりや組織開発に求められる心構えなどを伺いました。

選択できる権利のためにも、プロセス開示を大事にしたアプローチ

ー組織づくりや組織開発の視点で取り組んでよかったことは何でしょうか?
ブランディングの取り組みはよかったと思います。2020年に外部の力をお借りして、ゆめみのリブランディングを行いました。その過程で小さめのワークショップを織り込んでいます。手法として非同期のホワイトボードツールを使ったり、YouTube Liveで放送しながらZoomで誰もが入れる設計にして、プロセスを全て公開していました。ワークショップの様子も社内に共有した上で、参加が難しくてもアーカイブ動画で見られるようにしました。

プロセスを全て開示した上で、ロゴの変更などアウトプットが明確だったのは良かったですね。

ープロセスが公開されていると、納得感がありますよね。
プロセスには組織が一つの方向に向くために必要なものが詰まっていると思います。
ゆめみはフラット型組織なので、トップダウンでミッションやロゴを全て決めるとアレルギーが出てしまうかもしれません。「今まで言っていたフラット型って何だったんですか?」と。自分たちが選択できる権利のためにも、参加できる状態やプロセスを開示する必要はあったと思っています。

ー普段のコミュニケーションですと、会議などで工夫されていることはありますか?
会議の最初と最後に今の気持ちを話してもらう「チェックイン」と「チェックアウト」の時間を設けています。

【チェックイン例】
・この会議をどんな気持ちで進めたいですか?
・会議の最後はどんな気持ちになっていたいですか?

他にも、チェックインに会議のアジェンダに即したテーマを作る場合もあります。
例えばテーマが「ブランドブックのデザインを決める」だったら、ブランドブックを手にしたメンバーにどんな顔を思い浮かべていて欲しいですか?だったり。もちろん時間の制限はあるので、書くチェックインに変える時もあります。

ー書くチェックインですか?
ゆめみは議事録にNotion(注:情報共有ツール)を使っています。会議前には全員に共有されている状態なので、ページのトップに今日のチェックインと記載し書いてもらう場合もあります。

また、会議の最後に時間があればチェックアウトの時間も設けています。
「実は言いたかったことを言ってみて下さい」など話を促します。

ーチェックアウトで、誰かが違和感を持ったまま終わらせないのも大事なんですね。
なるべく会議中でも、モヤモヤしていそうな人には話を促すようにしています。「何か言いたそうな感じだけどどうだった?」だったり。雰囲気的に何か言いたそうだけど、言えなさそうな人にも話を振るようには心掛けていますね。
会議中の話だと、リアルタイムで画面を共有して全員で議事録を取ることもあります。みんなで書くことで、全員が会議に参加している状況になります。

ーみんなが参加できる状態いかに作るかが大事なんですね。
他にも定期的に「問い直し」をしています。「チームの存在意義」「なぜこの活動が必要か?」自分達の取り組みを根本から見つめ直す機会を作っています。

合意より納得するためワークショップや対話が必要。

ーゆめみさんの組織における特徴はありますか?
職種ですと社員の7割前後はエンジニアです。ここ2年ぐらいの話ですと、デザイナーの採用を進めておりまして、サービスデザインやUX/UIの領域を強くしています。

ー働くメンバーの方はどんな方が多いでしょうか?
メンバーの特徴は「真面目」ですね。 ゆめみはホラクラシーと呼ばれるフラット型の組織で階層構造がなく、自律型を銘打っています。真面目でポテンシャルを秘めているメンバーが多いですが、その中で主張するタイプの人間は意外と少ない印象です。

ー栄前田さんがゆめみさんの中で、組織づくりに関わるきっかけは何だったのでしょうか?
ゆめみはクライアントワークなので、案件稼働が最重視されます。そうすると、社内の取り組みにコミットするメンバーが少なくなってしまうんですよね。
社内向けの施策を戦略的に行っている人間がほぼいない状況で、それをやってるのが代表の片岡です。片岡は1,000人組織を目指していると言っているんですね。そのためには「組織を作っていく力」を持たせていかないと難しいんじゃないかと思いました。つまりはメンバーのパフォーマンスを最大化しながらも、組織の成長に繋げていく役割です。そこを果たす機能がなかったので私がやろうかなと思いました。

ー組織づくりの手法として、栄前田さんはワークショップを活用されているイメージがあります。学ぶようになったきっかけはありますか?

私は会社も設立していますが、自分の会社では炎上案件の駆け込み寺と言われていました(笑)

有限会社リズムタイプ

「開発会社が逃げ出した」「1年経ってもプロダクトがリリースしない」などの状況に対して、相談を受け建て直す経験を何度もしています。経緯をヒアリングしながら解きほぐしていき、ゴールへ向かうにはプロセスを共有していく必要があります。
中には発注者が参加していないことや、受注側として発注者に向き合っておらずただ言われたことをやっている状態がありました。ワークショップを学んだのは共に作るプロセスを共有しながら、巻き込むためでした。
「合意ではなく納得」が必要だったんですよね。納得していないけど、合意する状態は起こるじゃないですか。納得していない事象があるからこそ、後になってひっくり返ったりパフォーマンスが上がらない状態が発生します。納得するためのプロセスが必要でそこに必要なのが対話やワークショップだと思います。

ー上手くいかないチームの共通点は何でしょうか?
暗黙知が多いチームですかね。「きっとこうだろう」「こうなんじゃないか」「こうなはずだ」で進んでしまう共通点があります。対話がない状況だと、みんなが個々に思っていることがちょっとずつ違ったりしていきます。微妙にズレたまま擦り合わせをしないで進めてしまったり、思っていることを口に出せないとストレスが溜まっていきますよね。そのままプロジェクトが進んでしまうと、後戻りできない状態になってしまう。思ったことはその場で言わないと、負債になります。その場その場で話せる「会議設計」や「プロジェクト設計」が必要なんじゃないかなと思います。

組織づくりは1人で抱え込まず、仲間と楽しむ。

【最終】対談画像

ー組織づくりはタフなお仕事の印象がありますが、求められるスキルや心構えはなんでしょうか?
誤解を招くかもしれませんが、真っ正面から向き合わないことですかね(笑)
正面から何とかしようと思うと、自分が潰れそうになってしまいます。1人で頑張らず、仲間を作っておくといいんじゃないでしょうか。

ー社内での仲間作りが必要ですよね。
社内と同時に社外もですね。外部と協力する視点は必要です。
私自身も外部のパートナーとして組織に関わってきた経験があります。ただ外部なので、一歩引いた部分だったり契約期間が終わったら、そこまででした。だからこそゆめみの中に入って、組織の内側から関わりたいと思ったのが入社理由でもあります。
実際に入ってみて中のメンバーだけでやると大変だと思い、現在では外部パートナーと協力する流れを作っています。

ー中のメンバーだけだと特に何が大変でしょうか?
専任ではない点は大きいですよね。内向きの活動にコミットしてるメンバーが少ないので、稼働時間の意味で兼任でやっていくことに難しさを感じます。何かを変える時は中長期だとしても勢いは必要で、外部のパートナーに力を借りています。
目指すのは社内の自走ではありますが、 外のメンバーから声を出してもらうことで動ける状態を作れます。中のリソースだけで頑張ろうとしないのは大事ですよね。

ー 組織づくりを進める上で、最も重要なポイントを聞ければ嬉しいです。
苦しまないことですかね。組織開発を担当する方は辛そうなケースも多いんじゃないでしょうか(笑)
やっぱり真っ正面から真面目に向き合ってくだけじゃなくて、その時間をいかに楽しめるかも大事だと思っています。自分自身だけじゃなくて一緒に仕事をする人たちも含めて、みんな好き好んで苦しいことはやらないですよね。 会議だったらいかに事前設計を行い、参加したくなる会議にするか。それこそ私が所属するゆめみのブランディングチームのMtgはみんな楽しんでいます。チームには取締役もいますがこの時間が一番楽しみだと言っています。

ファシリテーターの人達の間で、遊び心や楽しさを大事にするプレイフルという言葉が使われます。痛みを伴うペインフルアプローチよりも楽しみながら進める気持ちが大事なんじゃないでしょうか。

【画像】プロフィール掲載

【プロフィール】
栄前田勝太郎さん
株式会社ゆめみ CXO/デザインストラテジスト。企業の新規事業開発や業務改善、プロジェクトやチームの改善・促進、学習環境デザイン、ファシリテーションに携わる。ワークショップデザイナー/ スクラムマスター / 2030SDGs 認定ファシリテーター。
主な著書に『ひらめきとアイデアがあふれ出す ビジネスフレームワーク実践ブック』UIデザイン みんなで考え、カイゼンする。』『Webディレクションの新・標準ルール 現場の効率をアップする最新ワークフローとマネジメント』がある。

株式会社ゆめみ
https://www.yumemi.co.jp/

取材・文・編集/佐藤政也 デザイン/熊谷怜史

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