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河童の詫び証文伝説を伝える寺

訪問先からの帰途、持明院と言う寺が目に付き立ち寄ったところ、面白い伝説が伝わっていました。
付近を流れるかつて曼荼羅淵と呼ばれていた柳瀬川に、人を襲って肝を抜く河童が棲んでいましたが、とうとう捕まって持明院という寺に連れて行かれました。そして寺僧に諭され、二度と悪いことをしないと証文を書いて許してもらったのですが、その後も懲りずに悪さを続け、今度は井戸に落としたものは何でも取ってくるという約束をさせられたのだそうです。以来、井戸に釣瓶や柄杓などが落ちると、そばの池に浮かび出るようになったという内容です。
この伝説が伝わる持明院という寺は、元慶2年(878年)創建の古い真言宗の寺院で、永い間この河童が書いたという詫び証文も伝えられていましたが、明治17年の火災で焼失してしまったのだとか…。
同じような伝説は他の真言宗の寺にも伝わっているらしく、真言宗は秘儀や加持祈祷を重んじる宗派です。この地域には弘法大師絡みの伝説が多く残されており、この河童伝説もあるいはその一環なのかも知れません。
伝説には、たとえその内容がそんなに荒唐無稽でも、そうした伝説が語られるようになった背景には何某かの事実が含まれていることが多く、その背景に想いを寄せる事が私は好きです。

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