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Jリーグクラブとエンブレムの話
最近思うことがあり、初めて筆を執ります。
Jリーグとエンブレムの話になります。
ご興味あれば最後までお付き合いください。
はじめに
はじめまして。「がすこいん」といいます。
サッカー少年だった頃はスパーズなどで活躍したポール・ガスコインに憧れていました。
昔はグランパスサポーターでしたが、Jリーグに加盟した2008年からはFC岐阜を応援しています。
現在はデザイン業界に身を置いています。
昨今、Jリーグではエンブレム変更の話題が挙がっています。
直近だとリリースされている通り、FC東京や湘南ベルマーレが変更へ向けて動いているようです。
2021年にはガンバ大阪も変更しました。
海外だと2017年に変更したユヴェントスは記憶に新しいと思います。
初めにお伝えしておくと、私はエンブレム変更に肯定的ですが、
するもしないもクラブやサポーターの自由だし、好きにしたらええやん!
という意見です。
SNSを見る限りエンブレム変更については反対意見が多いように思えます。
反対の理由はだいたい下記の通りです。
伝統を簡単に変えるべきではない
そのリソースを他(直接的に勝利に繋がる事)に使うべき
意思決定のプロセスが不透明(サポーターの意見を聞け!)
変える理由がよく分からない
このような意見は大変共感できますし、とくに古くからクラブをサポートされている方は愛情があるからこそのご意見だと思います。
「伝統を簡単に変えるべきではない」と「リソースを他で使うべき」という点は、価値観や判断基準の違いにより意見が分かれるので、正解も不正解も無いと思います。(後述しますがステークホルダーで判断基準を統一させることは理想です)
「意思決定のプロセスが不透明」はクラブによってそれぞれの事情があると思うのでここでは取り上げません。
私が問題だと感じている事は「変える理由が良く分からない」と思われていることです。
「変える理由が良くわからないという」意見があるということは、クラブとサポーター間でコミュニケーションロスが生じているのではないかと推測します。もっとクラブはリリースを丁寧に行うべきです。
SNSでは往々にして反対意見の声が大きくなりがちです。
エンブレム変更肯定派の自分として、モヤモヤとした思いがあります。
この記事では「なぜ変更するの?」「変更することによるメリット」という点を整理します。
変更する理由やメリットを知ることで、初めてデメリットと天秤にかけることができ、是非の議論を行うことができると思います。
重ねてお伝えすると最終的にエンブレムを変更するもしないも各々のクラブやサポーターの自由だと思います。
また、各クラブがエンブレムを変更する理由に関して、私自身が把握していない為、ここでは一般論としての「エンブレムを変更する理由とメリット」を記載します。
エンブレム変更の話をするには、まずデザインの話をしなくてはいけません。
デザインの役割
私たち人間は誰かに何かを伝える際、主に「言葉」を使います。
また、対面によるリアルタイムなコミュニケーションが難しい場合はメールなど「文字」を使います。
つまり「言葉」や「文字」はコミュニケーションを行う手段です。
1対1など少数の場合や、相手が特定できている場合は「言葉」やメールなどの「文字」が手段として機能します。
これが不特定多数が相手になると話が変わります。
伝えたい相手が不明。
人数も不明。
どこでどうやって伝えればいいかも不明。
これでは「言葉」やメールなどの「文字」は手段として機能しません。
そこでデザインです。
不特定多数の相手に対してコミュニケーションを行う場合、デザインされたWEBサイト、チラシ、またはCMやWEBムービーといった動画コンテンツが活用されます。ロゴやエンブレムもデザインのひとつです。
デザインは言葉や文字と同様、コミュニケーションの手段です。
伝えたい思い・メッセージといった無形物を、記号や図といった有形物にし可視化されます。
可視化されたものを目にした人は、そのタイミングで発信側の思いやメッセージを受け取るのです。
普段私たちが目にするデザインは何かしらの目的・意図・メッセージを持って世の中に存在しているのです。
機能としてのデザインを考えた場合、まず大切なことは「伝わる」ことであり、「伝わらない」デザインは機能していないと言えます。
また、不特定多数に向けて発信する場合、思いやメッセージが誤認されず正しく伝わるかどうかも重要なポイントです。
なぜシンプルなデザインが好まれるのか
クラブのエンブレムもそうですが、近年ロゴ変更を行う企業は増えています。
変更する理由は様々ですが、企業成長に伴い伝えたいメッセージの内容が変化したとか、伝える相手(例えばグローバル化したとか)が変化したなどといった企業側の都合による理由と外部環境の変化による理由が挙げられます。近年ではデジタル化の進行によってロゴを変更するといったケースが増えてきています。これが外部環境の変化による理由のひとつです。
2020年に日産自動車のロゴが変わりましたが、これもデジタル化が理由だと言われています。
デジタル媒体は紙媒体と比較して精細な表現、例えば極端に細い線や複雑なグラデーションといった表現が得意ではありません。
一般的にデジタル上で表現を行う場合、紙媒体と比較するとよりシンプルな表現が望ましいとされます。
また、スマホなど手のひらで閲覧するケースが多くなっているため、小さな画面でも視認性・可読性が高いデザイン好まれます。
デジタル社会の今、こういった理由でシンプルなデザインが好まれるようになっています。
エンブレムの話
エンブレムはクラブの象徴であり、そこには歴史や哲学、想いが詰まっています。ただし、受け手側にそうした想いが正しく伝わっているかといえばそうではない現状があると思います。
例えば私が応援しているFC岐阜のエンブレムには蓮華草をモチーフにしたあしらいがあります。
「岐阜県全土に自然発生的に根付いていければ」という思いから県花である蓮華草を配し、木曽三川の流れにそれぞれ情熱の赤・知性の青・調和の緑の彩を添えて、選手・フロント・サポーターが一丸となって闘おうという想いでデザインされています。
また、岐阜を取り囲む山々や岐阜城の要素も取り入れ、岐阜らしさを表現しています。
この蓮華草はパソコンの画面だと問題なく認識できますが、スマホだと花のモチーフなのかどうかも怪しいです。
エンブレム上部にある「2002」という組織創設の年号も視認性が低い状態。
前述したデザインの機能として重要な「伝わる事」が全く達成されていません。
古くからの関係者やサポーターにとっては、たとえエンブレムにモザイクが掛かっていようがそれと認識できると思います。
しかし、これから関わるであろう方に対してはそうはいきません。
デザインであれば「伝わる」機能を備える必要があります。
具体的な例は挙げませんが、こういった視認性の低いエンブレムは多数あります。
クラブとサポーターとの接点を考えた場合、デジタル媒体は非常に重要です。
こういった背景も鑑みてエンブレム変更の是非を考えることで、より議論が深まると思います。
クラブ運営の皆さんに求めること
普段自分も仕事で気をつけている事は判断基準の共有です。
クライアントにデザインを提案した際「そのデザインが好きか嫌いか」で判断されちゃうと収拾がつきません。
そうでない基準を共有することを大切にしています。
あくまで目的を達成するためのデザインであるべきです。
デザイン変更の理由、目的をしっかりとお互いで認識し、その目的が達成されるているかどうかを判断基準とします。
クラブにおいては、どういった理由でエンブレムを変更したいにせよ、まずは丁寧に目的の共有を行うことが大切だと思います。
クラブのエンブレムは「象徴」であるため、変更に否定的な意見があることは当たり前だと思います。
関わる皆さんがメリットとデメリットを認識し、良い議論と良い判断が行われることを望みます。
長文になりましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。
皆さんそれぞれがサポートしているクラブの成長と繁栄を願っています。
おわり。
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