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たぶん彼氏がいる彼との2年

ゲイの世界では、「家族のような」関係を築きつつも、身体の関係だけを求めるオープンリレーションシップが珍しくない。そんな中、僕は人生で一番居心地が良かった、好きだった人と出会った。彼の名前はカケル(仮名)。夜の仕事を通じて知り合った。

当時、僕は社会人をしながら月に1〜2回、ゲイバーで手伝いをしていた。ある朝、店が終わり、紫と青の間のような空の色の時間にゴミ出しをしていると、あるゲイバーのママに挨拶をした。そこで働くカケルの姿があった。彼のルックスは良く、スタイルも抜群だったが、一癖も二癖もある性格で、正直苦手だった。

僕はルックスが整っていて、人前に出るタイプのゲイが苦手だ。例えば、GOGO BOYや店子、DJなど、モテを全面にセルフプロデュースがうまいタイプ。僕は裏方が好きで、そういう人とは価値観が合わなかった。

生きる意味なんて莫迦

そのゲイバーのママに誘われて、三人でとあるゲイバーの周年パーティーに行くことになった。ママの飲み要因としての参加だったが、僕は淡々と飲んでいた。酔っていたせいもあり、正直に自分の考えを話した。苦手な部分や考え方について。僕の悪い癖だが、酔っ払うと頭にあることが流れ出て話が長くなる。

ママが先に帰ると言い、三人で店を出てママをタクシーに乗せて見送った。するとカケルが「もう一軒飲みに行こう」と言い、他の店に飲みに行った。その店のママは顔見知りだったので、「え〜!?意外な組み合わせ〜」と言われた。

散々飲んだ後、僕の家が近いこともあり、タクシーで一緒に帰った。なぜかカケルも付いてくると言い、まあいいかと思い部屋に入れた。酔っ払いながらも色々な話をした。彼は「こんななら生まれたくなかった」と嘆いた。

ルックスが整っていて、人にも恵まれているのに、彼は自分の生まれた環境が裕福じゃないと嘆いていた。僕はそんな彼の話を聞きながら、贅沢な悩みだなと思った。それでも自棄になるくらいなら、一緒に楽しい時間を過ごせばいいのにと考えていた。

奥深く、それが身体か心か

その後、カケルは頻繁に僕の家に来るようになり、ついには僕の合鍵まで手に入れた。それくらい信頼していた。大人になってから勉強を始めた彼は勉強熱心で、お互いに勉強が好きだったのでいろんな話を楽しんだ。

付き合おうという話にはならなかったが、僕はもうこの頃、誰かと付き合うということに飽きていた。ゲイ同士の恋愛に興味をなくしていたのだ。カケルの家や彼氏の有無については曖昧なままだったが、それでも関係は続いていた。

都合の良い身体

普通、三ヶ月も六ヶ月も経てばセックスには飽きるものだが、僕たちは飽きることがなかった。毎回の肉体関係も相性が良すぎて驚くほどだった。世の中には何年もセックスレスじゃないカップルがいると聞いたことがあったが、これがそうなのかと思った。

カケルは「◯◯の好きな人であり続けるから」と言った。僕の理想の人で居続けてくれるというのだ。離れたり、くっついたりを繰り返す自由な関係だったからこそ、心地よい関係だったのかもしれない。

神が下すその答え

僕が上京することになり、彼は留学することになった。それが決まると、彼は初めて家に招いてくれた。明らかに誰かの存在を感じる部屋で、彼は得意な料理を作ってくれ、一緒に過ごした。

僕はもうそれがどうでもよくなっていたが、現実的には僕が泥棒猫という悪役なのかもしれない。ゴールがなく、生きる意味さえなくなってたのはもしかしたら僕のほうかもしれない。

それでも、あの街にはもう僕たちの姿はなかった。

蜃気楼の中

久しぶりに大阪に帰ると、あの頃のことを思い出し、淋しい気持ちになることもあった。しかし、それは寂しさではなく、温かい思い出であり、感謝の気持ちかもしれない。悪役だった頃の僕は生き心地がよかった。思い出のまま散り散りになった僕たちが、まだ大阪に帰るとぬるく存在しているように感じることがあった。

堂山町に入ると、あの頃の二人がタクシーに乗る後ろ姿がほのかに見えた気がした。


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